ディーラーは9月の中間決算に向け販売強化
10月より消費税が10%に上がる予定だ。クルマの購入は金額が大きいので2%の差は大きい。さらに自動車販売会社の中間決算は9月と、売り上げを作らないとならないタイミング。近年の納車までの時間を要する販売方法を考慮すると、クルマの購入を予定している人にとって、消費税アップ前まで残された時間は少ない。
最近は、自動車メーカーが国内の販売会社に販売奨励金を支給するケースが減った。販売店のセールスマンも「昔は増販フェアの度に支給されたが、今は特別な場合に限られる。だから値引き額も下がった」と口をそろえる。販売奨励金を原資に、値引きを増やすことができないのが実状だ。そうなると値引きのシーズン性が薄れ、クルマの売れ行きが下がったこともあり、いつでも可能な限り値引きして販売するような状態になった。
また販売会社は在庫車を持たず、納期が長くなったことも影響している。今は契約から納車までに1.5か月程度を要する車種が多いから、例えば決算月の3月に登録する場合、2月上旬には契約したい。そうなると1月下旬から商談が活発化する。納期が2か月であれば、1月下旬には契約したいので、1月初旬の「初売りフェア」から積極的に売っていく。つまり年明けから3月まで、増販フェアを続けている状態になる。
3月決算フェアのみならず、9月の中間決算フェアは、文字通り販売会社の決算に影響を与えるため、販売促進に力を入れる。最近は前述のように多額の値引きは控えているが、ディーラーオプションのサービス、下取り車の査定アップ、残価設定ローンの低金利などを実施するから、今でも決算期(中間決算期)に買うメリットは健在だ。
決算期(中間決算期)の場合、先に触れたとおり、販売会社は好条件で売る代わりに販売台数を増やして決算に反映させたい。そうなると3月、あるいは9月中に登録(軽自動車は届け出)を行わねばならない。納期が長いクルマの場合、9月の中間決算に買うなら7月には契約したいところだ。
10月登録になると諸経費も含め消費税は2%増
今年はここに消費増税も絡む。一般的には9月末日までに商品を「買う」と消費税は8%、10月1日以降なら10%だが、クルマの場合は「登録」が9月末日までか、10月1日以降で税率が異なってくる。
このように「登録」が消費税率の分かれ目になると、心配が生じてくる。というのは、7月に契約して9月には登録できると思っていたのに、消費増税前の駆け込み需要が予想外に多く、登録が10月1日以降にズレ込むことも考えられるからだ。クルマは内税だから、10月1日以降に登録すれば、税込み価格が高まってユーザーの負担も増える。過去に消費増税が行われた時は、登録に遅延が発生した場合、消費増税分を販売会社が負担することもあった。
そこで改めてトヨタ、日産、ホンダの販売会社に問い合わせると「消費増税前に間違いなく登録できる車種以外は、登録時期によって消費税が10%に増える可能性があることをお客様に必ずお伝えしています。10月1日以降の登録では、(法定外)諸費用の消費税率も変わるので、すべての計算が違ってきます」という返答が聞かれた。
「現時点(2019年6月中旬)では対応が決まっていない」という返答もあったが、消費増税に対して、予防線を張っている販売会社が多い。
登録が遅れることを見越して早めに商談
消費増税効果で駆け込み需要が高まり、間違いなく売れ行きが伸びるだろう。しかし、販売会社としては9月の中間決算の販売促進(値引きやサービスの強化)は行う。それは消費増税が行われる10月1日以降は、世の中が沈滞ムードになって「今はクルマを買う時ではないでしょ」という空気が蔓延して需要は上がらないからだ。10月以降のマイナス分を先取りするためにも、販売会社は9月までの登録を目標にがんばってくることは容易に考えられる。
とはいえ、2019年9月までの登録は、このような駆け込み需要も加わるから業務も多忙になる。通常より登録の遅延が発生する可能性もあるだろう。つまり、9月までに登録できない可能性も秘めているわけだ。従ってクルマを買うなら、値引きや下取り車の売却額に相応の条件を引き出した上で、早い時期に7月契約したい。とくにオプションをいろいろ選べるクルマは、納期までの時間が掛かるのでなおさら早めの行動が必要となるだろう。
ユーザーの側も予防線を張っておくなら、「万一納期が遅れた時には、消費増税分を負担するから、せめて何かプレゼントを進呈してね」くらいのことは伝えておいて良い。要は気持ちの問題で、たとえ粗品のやり取りでも、互いにスッキリすることがある。ユーザーも不愉快な気分にならないよう工夫したい。