高齢ドライバーの交通死亡事故は激減している
「あなたの不満を買い取ります。」というキャッチフレーズで、不満をデータ化して世の中を改善していこうというインターネット上のサービス『不満買取センター』が、「高齢者の自動車運転」に関する意識調査を実施。その結果を発表している。
結論からいえば、アンケートに回答したうちの59%が高齢ドライバーの運転による危険な体験をした経験があり、同サービスが用いている感情分類AIで分析すると怒りを感じた人は51%、嫌気を覚えた人は19%と多かったという。
またシニア世代になったときの運転免許返納も社会的な話題となっているが、アンケートにおいてはすべての年代において返納を考えている人が多数派だが、実際のシニア世代になると返納しないと考えている人の割合が増える傾向にもあったという。
そのほかの調査項目を見ても、高齢ドライバーへの不満は膨らんでいる。昨今の高齢ドライバーの運転ミスによる交通事故報道を見ていれば、「高齢ドライバーの運転は危ない」、「高齢者の交通事故が急増している」と感じてしまうのも無理はない。しかし、報道のイメージだけで判断するのは適切ではない。
警察庁が発表している最新の交通事故統計データを見ると、事実は異なっているのだ。高齢ドライバーの交通事故が多いことの証拠として、よく挙げられるのは『原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり死亡事故件数』だろう。ちなみに第1当事者というのは事故における過失のもっとも大きい人物を指す専門用語だ。
最新データは2019年の1月~5月までを整理したものだが、たしかに80歳以上の交通死亡事故は3.58ポイントと全年齢の中でもっとも高い。しかし、前年同期比を見るとマイナス25.4%となっている。高齢ドライバーの事故は急増しているどころか、大幅減なのである。他のシニア層の数字を見ても、75歳以上が2.50ポイントでマイナス26.3%、65歳以上が1.61ポイントでマイナス22.4%となっている。高齢ドライバーの事故は明確に減っているのだ。
むしろ、高齢者には分類されない55~59歳が1.31ポイントで前年同期比11.1%増となっているのが目立つくらいだ。ちなみに絶対的な件数でいえば45~49歳のドライバーが起こしている死亡事故が108件でもっとも多い(この世代は免許保有者数も914万人ともっとも多いので絶対数が増えるのは当然といえる)。
高齢ドライバーの事故が増えている、というのは報道による印象であって、少なくとも死亡事故については大きく減少をしているというのが事実だ。だからといって危ない運転をしていないと断定できるわけではない。個人差はあるだろうが、加齢により肉体的に衰えてくることは否めないからだ。しかし、そこで運転免許の返納と短絡的に考えてしまうのはもったいない気もする。
免許を返納してしまうと自動運転に乗れない?
今年中に、日産の先進運転支援システム「プロパイロット2.0」が登場する。この運転支援システムは自動運転でいうとレベル2ではあるが、遠からず次のステップへ文字通りレベルアップすることが予想されている。すなわち、高速道路など限定された条件とはいえ基本的にクルマに任せておける自動運転レベル3の登場は間近に迫っている。
ただし、自動運転テクノロジーが進化したとしても、おそらくレベル4までは運転免許証を持つドライバーが運転席に座っている必要があるだろう。ほぼ運転しなくてもいい自動運転車が登場しても、運転免許を返納してしまったがために、その恩恵にあずかれないということも考えられる。
認知症などで免許返納待ったなしというドライバーは返納すべきだろうが、まだまだ微妙な状態であれば自動運転テクノロジーの進化と自分自身の老化を見つめながら返納のタイミングを図るべきだ。タイミングによっては、免許を保有していたから自動運転車を利用することができる、といったケースも出てくることだろう。
【詳しくはこちら】
■「高齢者の自動車運転」意識調査
http://resource.insight-tech.co.jp/article/123/release.pdf