テントは就寝する場所として作られている
布だけのテントと豪華な車内をもつミニバン。キャンプで寝るのは、どちらが快適なのでしょうか。夏のキャンプ場での使用を想定して、クルマとテントのどちらが快適に寝られるかを考えてみましょう。
キャンプ経験がない人に、テント泊と車中泊のどちらが快適そうかと質問してみると「テントは寒そうだから」とか「クルマのほうが部屋っぽくて快適そう」と返答される人が多い傾向。どうやら、シーズンによってはクルマのほうが快適に寝られるという印象があるようです。
確かにテントは布1枚で外気と遮られているだけなので、なんだか心細い気がします。反対にクルマは鉄板やガラスで覆われていて、シートをフラットに倒せばフカフカで簡易ベッドも構築できます。
しかし、クルマはテントより快適に寝られるのでしょうか。今回は、クルマといっても「キャンピングカー」は除いてお話しします。そもそもキャンピングカーは、生活するために設計されたクルマなので、当然ながら快適そのもの。ここでは、ミニバンなどの乗用車とテントで比較してみましょう。
じつは外気の影響を受けやすい「車中泊」
クルマの場合、外気と車内を隔てるものは、鉄板とガラス。材質は硬いし、外の音も布1枚のテントに比べると遮ってくれるので、家のように過ごせる気がします。しかし、クルマには断熱材がほとんど入っていないので、じつは外気や太陽光の影響を大きく受けてしまいます。
直射日光が当たるとすぐに車内が暑くなるので、日の出とともに車内温度は上昇。早朝に暑くて目を覚ますなんてこともしばしばです。
ましてや窓を開けて風通しをよくしようと思っても、蚊などの虫も入ってきます。市販の網戸もありますが、突然の雨で車内に吹き込んでしまうこともあるので、開けっ放しにしておくのは不安ですよね。
もちろん、エンジンをかけっぱなしにしてエアコンをかけた状態で寝るのは、騒音や排気ガスで周囲に迷惑をかけるのでマナー違反。また、シートをフルフラットにすれば、ベッドのように快適に寝られる気がしますが、実は“フルフラットシート”といっても、厳密には段差や凹凸ができるのでフラットではありません。薄いマットを敷くだけでは寝にくく、バスタオルなどを使って段差をなくす工夫も必要です。
気温に左右されない「テント泊」
それでは、テントの場合はどうでしょう。一般的なテントはインナーテントとフライシートの二重構造。布とはいえ壁が二重になっていることで空気の層ができているので、外気の影響をダイレクトには受けにくくなってます。
また、出入り口や窓にはメッシュ生地も採用していることがほとんど。メッシュにしておけば風通しがよく、涼しく過ごせます。ほとんどのテントは雨が降っても換気ができるようになっているので、天候に関係なく通気性を保てます。
さらに地面が平らな場所を選んで設営すれば、マット1枚でフラットになるので快適そのもの。クルマのフルフラットシートのように、段差ができることもありません。そのためにはサイト選びも重要。夏場ならば日陰を選んだり、凸凹の少ないフラットな場所に設営しましょう。
このように、クルマとテントを比較すると、寝るために作られた道具であるテントのほうが、快適に寝ることが可能。ですが車中泊も、工夫次第で快適になります。外気の影響をできるだけ受けないように、窓にはサンシェードやカーテンを装着。これにより、車内の温度上昇を多少抑えることができ、プライバシーも確保できます。
また雨の日でも換気ができるように、クルマにサイドオーニングやカーサイドタープなどの雨よけを取り付ければ、窓に雨がかからないようになります(開けられる窓は限られます)。
このように、キャンプで快適に寝ることだけを考えれば、クルマよりもテントのほうに軍配が上がります。ですが「テントの設営・撤収が不要」「サービスエリアや道の駅で仮眠ができる」などの要素を考えると、車中泊にもメリットは増えてきます。
どのようなスタイルで楽しみたいかを考えて、自分にあった方法でキャンプを楽しんでみてください。