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パイクスピークヒルクライム最後の練習走行をキャンセル!日産リーフ・奴田原選手が仕掛けた作戦とは

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TEXT: 青山義明(AOYAMA Yoshiaki)  PHOTO: 青山義明

走行も充電もバッテリー温度が上昇

 アメリカの標高4302mの山、パイクスピークの観光道路を閉鎖して競われる「第97回パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(パイクスピーク)」は、現地時間6月30日(日)に決勝を迎える。レースウィーク5日目となる28日(金)は追加練習走行日。これまで3日間の練習走行が行われてきたが、この日の3時間を最後に決勝までの走行セッションはすべて終了となる。

 パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムは、アメリカ・コロラド州にあるパイクスピークを舞台に1916年から開催されているヒルクライムレース。毎年アメリカの独立記念日前の週末に開催されている。コースは普段は観光道路して使われている有料道路。その道路の標高2862mのスタート地点から頂上の標高4302mのゴール地点まで、156のコーナーがある全長20kmの区間をだれが一番速く駆け上がるかを競う、極めてシンプルなレースである。が、その標高差は約1500mで、ゴール付近では酸素が薄く、内燃機関のエンジンの出力は約30%低下するといわれている。

 もともとダートの登山道だったが、2012年には道路全域が舗装されている。この舗装化をきっかけに年々タイムは短縮。ダート部分が残っていた2011年にようやくモンスター田嶋こと田嶋伸博選手が、誰も破れないといわれていた10分の壁を初めて切った。だが、現在の最速タイムは昨年ロマン・デュマ選手が出した7分57秒148。わずか7年で3分も短縮されてしまっている。

 今年のパイクスピークは、天候不順で、非常に寒い日々が続いている。レースウィークを前に用意された事前のタイヤテスト日には、頂上付近の降雪もあってコースは路面が凍結していて走行ができなかったり、開催も危ぶまれたほどだ。しかし、レースウィークになって天候は回復し、例年に近い状況で無事に練習走行も全4日の日程を終えることができた。

 最後の練習走行に参加した日本人ドライバーは小林昭雄選手(#249 2000年式ポルシェ911GT3)のみ。コースを3分割したセクションの中で、もっとも距離の長いボトムセクションで、予選タイムを上回る走りができたということで決勝への手ごたえを感じているようだった。

 一方、吉原大二郎選手(#86 2013年式トヨタ86)、そして今回日産リーフe+で参戦する奴田原文雄選手(#230 2019年式日産リーフ)は、最後の練習走行には参加はしなかった。

 奴田原選手の今回のアタック(決勝)は、全開で頂上まで走り切るを目標に挑戦。リーフのバッテリー冷却に、リチウムイオンバッテリー温度管理システムを提供しているサンデン・アドバンストテクノロジー社(サンデンAT)のスタッフと協議をした結果、練習走行はせずにバッテリーを休ませる判断を下したのだ。

 サンデンATは、自動車各社に自動車用空調システムなどを供給するサプライヤーであるサンデングループの先行技術開発部門だが、現在独自にEV用の熱マネジメントシステムの開発に着手しているという。パイクスピークに持ち込んだシステムは、バッテリーの温度上昇を40%抑えることができるとしており、奴田原選手のリーフをサポートする。

 リーフe+は、従来モデルよりバッテリー容量が拡大しているため、航続距離という点では全く問題なく走行できるそうだ。しかし、全開走行時の熱上昇によるセーフモードが介入してモーターの出力が絞られてしまえば、タイムを狙うことができない。そのため、いかにバッテリー温度の上昇を抑えるか、が今回の挑戦の肝となっている。

 バッテリーは、充電、放電(EVの場合は走行)で温度が上昇する。そのため、スタートまでにバッテリー自体の温度を下げて決勝レースに臨めるようにするため、27日(木)の走行を終えた後に満充電にし、その後はバッテリーを2日間放置。バッテリー内部の熱を取ることにしている。

 ちなみにサンデンATは今回得られたデータをもとにEVの熱マネジメントシステムの開発につなげていきたいとしている。

 なお、奴田原選手とリーフはもちろん、練習走行最終日を終えた全チームは、マシンをパイクスピークのふもとの町であるコロラドスプリングスのダウンタウンで行われるファン・フェスタへ持ち込み、ファンとの交流を楽しんだ。

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