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【SUPER GT Rd.4】自動車メーカーの差が如実に現れた? 星野一樹が語ったひとつの理由

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田了

タイ・ブリーラムに現れてきたシリーズの流れ

 SUPER GTで年に一度の海外戦、シリーズ第4戦「Chan SUPER GT Race」は、タイのチャン・インターナショナル・サーキットで開催。レースウィークを通じてドライコンディションに恵まれ、戦いが繰り広げられた。公式サイトやモータースポーツ専門サイトで報じられているように、GT500は「No.6 WAKO’S 4CR LC500(大嶋和也/山下健太)」がチームとして6年ぶりの優勝。GT300では「No.10 GAINER TANAX triple a GT-R(星野一樹/石川京侍)」が今季初優勝を飾った。

GT500クラスではトヨタLEXUS勢が蹂躙

 もう少し詳しく結果を見てみると、GT500は6号車に続いて「No.37 KeePer TOM’S LC500(平川亮/ニック・キャシディ)」が2位、「No.19 WedsSport ADVAN LC500(国本雄資/坪井翔)」が3位とLEXUS LC500勢が表彰台を独占。

 このようにLC500が表彰台を独占するのは前戦の鈴鹿に続いての快挙で、第2戦の富士から3連勝。直前のトラブルで、開幕戦ではパワーを絞って戦わざるを得ず、不本意なシーズンスタートを切ったが、いまやSUPER GTのGT500クラスを“蹂躙”していると言っても過言ではないだろう。

 それは4.5ポイント差で6号車と37号車、そして38号車(No.38 ZENT CERUMO LC500の立川祐路/石浦宏明組)がトップ3を占めるランキングでも明らかだ。NISSAN GT-R NISMO GT500勢ではNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rの松田次生/ロニー・クインタレッリ組がランキング4位につけるが、ウェイトが影響を及ぼしたのか精彩を欠き、一方のHonda NSX-GT勢も開幕戦でNo.8 ARTA NSX-GTの野尻智紀/伊沢拓也組が優勝を飾り、第2戦ではNo.1 RAYBRIG NSX-GTの山本尚貴/ジェンソン・バトン組が3位表彰台をゲットしたものの、今回はNo.16 MOTUL MUGEN NSX-GTの武藤英紀/中嶋大祐組も含めた3台が絡んで脱落という不運な一幕もあった。

 もちろん、ライバルの不振が優勝を始めとする好結果の価値を下げるものではないが、それでもGT500クラスに関してはLEXUS LC500が強かったというよりもライバルが競争力を欠いていた、という印象の方が強かった。

GT300はヨコハマとGT-Rが最強コンビと化す

 一方のGT300でも10号車に続いて「No.56 リアライズ 日産自動車大学校 GT-R(平峰一貴/サッシャ・フェネストラズ)」が2位。最終的に3位になった「No.65 LEON PYRAMID AMG(黒澤治樹/蒲生尚弥)」とのバトルに敗れ後退したものの、ファイナルラップまでは「No.11 GAINER TANAX GT-R(平中克幸/安田裕信)」が3位につけており、こちらもNISSAN GT-R NISMO GT3が表彰台を独占する勢いとなった。

 NISSAN GT-R NISMO GT3勢は、まさに速さと強さを併せ持っていた。ファイナルラップで仕掛けて逆転し、そのままトップチェッカー受けた石川の見事なパッシングはもちろんのこと、レースの大半をリードした56号車や、最後の最後で力尽きた格好となったがそれまでの11号車の速さも印象的だった。

 さらに、今シーズンから参戦した「No.33 エヴァRT初号機 X Works GT-R(ショウン・トン/マーチー・リー)」が随所で速さを見せていたことも見逃せない。そう、GT-R GT3は明らかに、タイで速さを見せつけていたのだ。その理由を、優勝会見で星野一樹が語ってくれた。

「このサーキットはGT-Rと相性がいい。レイアウト的に90度以上回り込むコーナーがなく、低速コーナーよりも中・高速コーナーを得意とするGT-Rにあっています。特にエンジンの位置を下げ、後方に移した今のGT-R(2018年モデル)が威力を発揮し易いコースなんです。自分はこれまで2度、このサーキットで勝っていて今回が3勝目。そのいずれもGT-R、そしてヨコハマ・タイヤを履いていました。ヨコハマ・タイヤは一発の速さだけでなくロングランにも強いので大きな武器になっています」とのこと。

 星野選手はヨコハマ・タイヤのサポートを受けているから話半分としても、確かにヨコハマ・タイヤとこのサーキットとの相性は素晴らしい。事前テストがない分、豊富なデータを分析活用しているメーカーとの差が出にくい、とエンジニアは謙遜するが、前回の鈴鹿に続いて今回も、ゴムだけでなく構造も新たに手を加えたニュータイヤを投入。GT300クラスでのワンツーフィニッシュしただけでなく、GT500でもポール争いから2番手グリッドをゲットし、決勝でも3位表彰台に登壇した好結果は、充分評価に値するものだ。

 

ついにアストンマーチンが本領発揮か

 SUPER GTのタイ・ラウンド、GT300クラスでもう1台。目立った速さを見せていたのが「No.7 D’station Vantage GT3(藤井誠暢/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)」。鳴り物入りでシリーズデビューを果たしながらも前戦までは鳴かず飛ばずだった。しかし、今回は公式練習から目をみはるような速さを発揮していた。

 GT3マシンの不成績の言い訳に、BoP(性能調整)が使われるのはよくあること。実際に開幕当初のBoPは厳しく、マクラーレンとともに思わぬ苦戦を強いられていたのは事実だった。

 さらに海外で活躍するクルマに関しては、ワンメイクタイヤのジェントルマンレースと違ってSUPER GTはコンペティションタイヤでプロがやりあうレース、とも言われるが、アストン・マーチンのカスタマーチームとなったD’station Racing AMRの不調を本家のAMRが心配し、SUPER GTで使用しているヨコハマ・タイヤを本拠地のイギリスで解析し理解を深めたのだという。

 もともとアストン・マーチンは、LM-GTEというル・マンの上級カテゴリーからのコンバートで誕生したという経緯がある。つまり、ライバルに比べてオーバークォリティな部分があるのだ。それはボンネット内部のカットでも瞭然で、カーボンファイバーで成形されたダクトが整然とレイアウトされた眺めは、ライバルよりも明らかにハイレベルな仕上がり。そんなポテンシャルの高いマシンが目覚めたとしたら、実力は言うまでもない。

 次回のSUPER GTは、国内に戻って8月の第1週、富士で行なわれる500マイルレースが。シリーズも後半戦に入り、シーズン2基のエンジン使用規制のあるGT500ではエンジンのアップデートに関してパドックが喧しいが、タイ・ラウンドを席巻したGT-Rと、いよいよ目覚めたアストン・マーチンの動向からも目が離せない。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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