フォードの社長からクライスラーへ転身
アメリカ自動車業界のレジェンド、リー・アイアコッカ氏の訃報が届いた。
享年94、そのキャリアは実に華々しい。もともとフォード社のセールス部門で名を挙げたアイアコッカ氏は、また手頃な価格のスポーツクーペである「マスタング」の生みの親といわれている。さらに、フォードの社長まで務めている。その功績を称え、今回の訃報に際してフォードのエグゼクティブ・チェアマンであるビル・フォード氏は「アイアコッカ氏は、フォードのみならず自動車産業、そしてアメリカの歴史に名を残した」と追悼の意を示すほどだ。
BIG3の一角、クライスラーを再建
しかしアイアコッカ氏はフォードでキャリアを終えたわけではない。フォードのお家騒動もあり、ライバルであるクライスラー社(現在のフィアット・クライスラーオートモービル)のトップに転身したのだ。けっして好調とはいえず、破綻寸前といわれていたクライスラーを、その剛腕によって蘇らせたのだ。アメリカ初のミニバン「ダッジ・キャラバン」へのゴーサインを出したことも伝説のひとつ。
クライスラー会長として1985年には三菱自動車と合弁事業を行なったこと、また日米貿易摩擦におけるアメリカ側の急先鋒として、その存在は日本でも知られるようになった。自叙伝である『アイアコッカ―わが闘魂の経営』は、1980年代にビジネス書として日本でもスマッシュヒットを果たしたことも記憶に残る。まさにアメリカを代表するカリスマ経営者の一人であった。