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タイ・バンコクで見た日本メーカーの戦場 世界一熱いSUV市場の現状を見る

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田了

世界一のSUV激戦区を目の当たりにして

 タイでは、バンコク市内でも、チャン・サーキットに向かう道中でも、そしてサーキットのあるブリーラム市内でも、SUVが圧倒的多数派となっている。タイでは3月に開催されたモーターショーでも評判になった日本の輸出専用車などクルマ事情が熱く、パジェロスポーツが7月25日にタイで世界初披露される。なぜに世界初披露がバンコクなのか、それはタイの巷を見れば明らかだった。

 三菱、いすゞ、トヨタ、日産、……..ピックアップトラックが目白押し、なんとここはSUV世界一の激しさがうごめいている戦場であることがありありであった。

日本ブランドのピックアップトラックも存在感デカイ

 SUVは近年、世界的に販売台数が増えているカテゴリーとして注目を集めているが、厳密に言うならばこれらはSUVと普通の乗用車との間に位置するクロスオーバー・モデル。タイでも最近の世界市場動向の表れであるSUVは見かけることはあったが、今回の主役は、ピックアップトラックの荷台にシェルを装着した“本家本元”のSUVである。

 前席のみのシングルキャブやフル4/5座のダブルキャブもあるが、一番人気、というか最も目にすることが多かったのは2ドア、もしくは観音開き式のサブドアを持った4ドアのキングキャブ。乗用車で言うならスポーツクーペの2+2に近いパッケージだが、これが荷台に装着したシェルとのボリュームの比率がマッチして見事に格好良かった。

 国産車で例に出すならトヨタのハイラックスや日産のナバラ、あるいはマツダのBT-50や三菱のトライトン、いすゞのD-MAXなど。もっとも国産車と言うよりも国産車ブランドでしかなく、いずれも生産はタイなどの海外なのである。日本の国内でよく見かけるのは2017年にタイからの輸入販売が開始されたハイラックスのみで、国産車(ブランド)とは言えなじみが薄いのは仕方ないだろう。

 一方、外国車で言うならシボレーのシルバラードやフォードのFシリーズが人気。シルバラードは先に挙げた日本メーカー車よりひと回り大きなフルサイズで威圧感では抜きんでているものの、存在感では負けていない。タイでは日米のピックアップトラック戦争であっても、米ブランドのいかつさに圧倒されるような日本ブランドではないのだ。

 

生活に欠かせないクルマには情熱が取り巻く

 前回紹介したエネルギッシュなバンコク市内でも、存在感が目立っていたSUVだが、その仕様は荷台に座席を設けた簡易乗合自動車と、荷物を載せるカーゴスペースとするものに大別でき、またシェルを装着しないピックアップトラックのままで荷物と人間を混載スタイルも数多く見かけた。

 高速道路でも、パイプ製の華奢な柵に囲まれてはいるものの基本的にはオープンスペースでしかないリアの荷台に、5~6人が相乗りしている様は、寂しいかな小心者たる日本人の私には見ている方が怖くなるほど。しかし、当人たちは気にしていない様子で、陽気に話し合っているシーンが印象的だった。

 そんな無防備なスペースに、足を荷台の外に半分投げ出して眠っているような猛者もいて、見かけた我々も「まさか重体じゃないよなぁ!?」と呆れたものだったが、タイでは、SUVの荷台は日常的で安心できる乗車スペースとして認知されているのだろうと思われるのだった。また荷台に商品を満載した移動販売仕様のSUVも数多く見かけられた。

 その一方で、ブリーラムのチャン・サーキットでは詰め所に待機する警官の脇に、SUVのパトロールカーが止まっており、トラブル防止に睨みを利かせていた。

 そこから一歩パドックに足を踏み入れたエリアは、ハイラックスのワンメイクレースに参加するクルマのピットガレージに割り当てられていた。そこにはお母さんと幼い娘さんが、ドライバーズミーティングに参加しているお父さんの留守を預かっているシーンも拝見。まさに家族でレースを楽しんでいるそのマシンこそピックアップSUVなのだ。

 これなどは日本国内であれば、例えばトヨタ・ヴィッツのワンメイクレースなど参加型レースのパドックシーンとラップしてしまう。つまりタイにおいては生活の中の様々なシーンで、SUVはなくてはならない存在、欠かすことのできない名脇役となっているのである。

 わたくし個人的にはこれまで『コンパクトは永遠の正義』を信条にスバルR1で移動。デカくて重いクルマには全く興味の湧かない生活をしてきたのだが……、今回タイに来て、家族も家財道具も一切合切詰め込んだSUVシーンなどのタイのクルマ社会を見せられて、それもありかなと思った次第です。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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