地方のバス事業者も実用化に期待
SBドライブでは、この車両で2017年から実証実験を行なっており、東京だけでなく北海道や静岡など、今まで全国30ヶ所以上で試乗イベントやデモンストレーションを実施。今年(2019年)7月3日~5日には、ナンバーを取得して東京都港区イタリア街で初の公道実験も行っている。
同社の代表取締役社長 兼CEOの佐治友基氏は、アルマの実証実験についてこう語る。
「試乗して頂いた多くの方々から、『安心して乗れる』といった前向きなご意見を頂いています。また、地方都市などでバス事業を行われている企業様方からは、『自治体からコミュニティバスの運行を依頼されているが、運転手不足などで断っている。早く実用化して欲しい』といった声も頂いています。各方面から多数のご理解を頂戴しているため、実証実験はとてもやりやすいですね」
車内監視システムも開発
SBドライブでは、ほかにも自動運転バスを遠隔監視することで、安全な運行を行うためのシステム「Dispatcher(ディスパッチャー)」も開発、今回のアルマにも搭載されている。
例えば、運転手がいない自動運転バスで、乗客が急病などになった際に、車内設置したカメラで監視しているオペレータがバスを緊急停車。救急車両を呼ぶなどの措置を行うためのソリューションだ。
また、このシステムは、他にも小田急電鉄などの企業や各地方自治体と共同で実施している自動運転バス実証実験にも提供しており、今後の実用化に向けた様々な開発が進んでいる。
なお、今回の実証実験は、自動運転バスの実用化に向けて受容性や安全性などの調査を目的に、東京大学や次世代モビリティ研究センターなどで組織する「自動運転バス調査委員会」が主催(SBドライブも参画)。試乗会は取材翌日の7月19日まで開催された。自動運転バス調査委員会では、試乗した人たちの意見など様々な結果を踏まえ、目標とする2020年の実用化に向けた研究や検証などを続ける予定だ。
将来的にトヨタとソフトバンクのMONETへ
さらにSBドライブは、ソフトバンクとトヨタが2018年に設立したMONET(モネ)と今後密接な連携を取っていく可能性も考えられる。
2018年10月に設立されたモネは、MaaS(マース、Mobility as a Serviceの略)と呼ばれる、次世代モビリティサービスのプラットフォームの構築及び提供を目的とした会社。自動運転技術や次世代通信規格5G、スマートフォンアプリなど様々な先進テクノロジーを駆使し、鉄道やバスなどの交通機関に関わる新しいサービスの提供を目指す。
現在、トヨタとソフトバンクの他に、ホンダ、日野自動車、いすゞ、スズキ、スバル、ダイハツ、マツダも出資することが決まっており、今後国内の交通に関する大きな勢力になることが予想される。
そして、SBドライブが実施しているこのような実証実験や技術は、将来的にモネの事業に継承される可能性が高いだけに、モネの動向も含め今後も注目していきたいところだ。