似て非なるパジェロとパジェロスポーツ
三菱自動車は輸出専用ミッドサイズSUVの「パジェロスポーツ」をタイで世界初披露。8インチカラー液晶メーターやスマホで開閉できるテールゲートなど、高い先進性と利便性を備えている。しかし、日本では国内向けパジェロが8月で生産終了。パジェロスポーツは後継車の可能性はあるのだろうか?
これを「パジェロ」として売ればいいんじゃないの? 新型になった三菱のSUVを見て、そう思ったのはきっと私だけではないはず。その名前は「パジェロスポーツ」。名前は似ているけれど、パジェロとはほぼ血縁関係のないモデルだ。
輸入車の名門SUVブランドでいえば、「ディスカバリー」と「ディスカバリースポーツ」みたいなもの。パジェロ&パジェロスポーツの関係と同じく、名前は似ているけれどプラットフォームは全くの別設計だ。
マイナーチェンジを経て先日タイでデビューした新型は、フロントバンパーのコーナー部にコンビネーションランプを埋め込むなど、ダイナミックシールドが最新バージョンへとアップデート。バンパーのデザインを見れば、従来モデルとの違いが一目瞭然。最近の三菱フェイスの面影を残しつつも、違和感ないのだからデザイナーは巧みな仕事をしたと思う。
新設定された装備で興味深いのは、車両と連携したスマホによって電動テールゲートの開閉やドアロックができること。通信はBluetooth経由だから、クルマの近くで操作することが前提となる。
伝統といえるタフなフレーム構造
そもそもパジェロスポーツってどんなクルマなの。日本でもっともわかりやすい表現をするならば、1996年から2001年にかけて「チャレンジャー」として国内販売されていたモデルの進化版。タイで生産され、今後は世界約90か国に展開する予定のグローバルモデルだ(日本での販売予定なし)。
パジェロとの最大の違いは専用プラットフォームではなく、「トライトン」というピックアップトラックのシャシーを流用。すなわち、ラダーフレームだから頑丈さや悪路走破性は疑う余地なしだ。今どきの軟派なSUVと違って、バリバリ硬派なトラック派生型SUVというわけで、ある意味、パジェロよりもワイルドといえる存在だろう。
エンジンは2.4リッターの「4N15型」ディーゼルで、トランスミッションは8速AT。駆動方式はスーパーセレクト4WDII、つまりパジェロと同じ。もちろん、センターデフロックだって可能だし、副変速機も付いている。もうこれ、パジェロとして日本で売ればいいんじゃないのかな。ボディサイズもだいたい同じだし。
では、日本で売れない理由はどこにあるのか?
実はその理由もしっかりある。単刀直入に言うと「日本で販売することを考えて設計していない」ため。右ハンドルの設定がないという単純な話ではないのだ(そもそも本国タイは右ハンドル)。
最大のネックは、エンジン。搭載する排気量2.4リッターの4N15型ディーゼルエンジンは比較的新しい設計とはいえ、「デリカD:5 」や「エクリプスクロス」に積んでいる2.2リッターの4N14型ディーゼルエンジンと違って日本の排出ガス規制をクリアしていないのである。
これは大きな障害。なぜなら、日本のディーゼル排出ガス規制はとても厳しく、クリアするにはエンジンや補器類に大幅に手を入れなければならないからだ。
逆に考えれば、もし数年後にデビューする次期型のエンジンが日本の排出ガス規制をクリアできるほどのクリーンな性能を持っていたら、その時は……日本で販売する可能性があるかも。3列シートにラダーフレーム。「クロカンモデル」パジェロの復活に期待したい。