海外のレース現場で肌で感じる体験研修
長年アメリカン・モータースポーツに携わってきた服部茂章氏が立ち上げたNASCAR(ナスカー)唯一の日本人オーナー・チームである「Hattori Racing Enterprises(HRE)」。本Webでたびたびここで紹介している通り、現在アメリカでもっとも人気のある自動車レース「ナスカー」の3大カテゴリーのひとつ、ピックアップトラックを模したマシンで競われる「2019NASCAR Gander Outdoors Truck」シリーズ(トラック・シリーズ)にシーズンエントリー。さらには新型スープラを使用し、「NASCAR XFINITY SERIES(エクスフィニティ・シリーズ)」へスポット参戦も開始している。
そんなHREは、ほかにもナスカーの下位シリーズの地方戦であるNASCAR K&N Pro Series Eastにもトヨタ・カムリでフル参戦。チャンピオンチームとしてゼッケン1をつけるこのマシンのステアリングを握るのは、今シーズンから合流したノースカロライナ州出身のマックス・マクラフリン選手(18歳)である。
このNASCAR K&N Pro Series Eastシリーズは、2月の開幕戦から10月4日の最終戦まで全12戦が予定されている。その第7戦「Casey’s General Store 150」が、7月26日(金)、アイオワ州ニュートンにあるアイオワ・スピードウェイで開催された。アイオワは、1周0.875マイル(1.4km)の高速ショートオーバルコースで、これを150周で争うこととなる。第7戦はイーストとウエストの両シリーズの強豪が集う東西シリーズの混合戦となった。
このレースの現場に、神戸、名古屋、東京のトヨタ自動車大学校3校の学生がHREに合流した。これは、ナスカー・プログラムと題された合同研修で、2週間の海外研修および実際のレース体験を行う。海外でのレースメカニック体験を通じて、コミュニケーション能力の向上や異文化との交流、高度な整備技術の習得などを目指しているのだ。HREとしては2012年から受け入れを開始し、今回で8回目となる。
各校から選抜された6名の学生は、午前中は英語でNTI(NASCAR Technical Institute)の講師やHREのスタッフとコミュニケーションをとりながらナスカーについて学び、午後は研修受け入れ先であるHREのファクトリーでレースに参戦するマシンを製作。さらにタイヤ交換の特訓も受けている。
100周終わりの2回目のブレイクタイムで再びピットイン。ここで6名の学生クルーたちは、特訓の成果を見せ、素早く4本のタイヤを交換。レース終盤も果敢に攻めたマクラフリン選手は10位でチェッカーを受けた。トヨタ自動車大学校の学生クルーチームとしては、5年連続でトップ10フィニッシュを果たすこととなった。
日本には数多くの自動車大学校があり、現在SUPER GTなどの現場にそういった学生が研修としてチームに帯同する姿を頻繁に見かけるようになった。しかし、ナスカーという海外に出てレースの現場を見るという機会は非常に珍しいものといえる。服部チーム代表は「学生達の貴重な経験をサポートして下さった協賛企業の皆様に御礼申し上げます」とコメントしている。矢崎総業、大日本印刷、日野自動車、東郷製作所、東海理化、シロキ工業、キャタラー、セカイズといった企業の協賛によって成り立っているという。