高速道のみに適用されていた法定最低速度
高速道路に最高速度120キロ区間が登場するなど、日本も交通の高速化がはじまりました。高速道路には『最低速度』が存在することは、自動車運転免許を取得している方なら知っていなければならない話ですが、ちゃんと理解している人はどのくらいいるでしょう。実は、高速道路の最低速度は『法定最低速度』と呼ばれるものです。
条文にある「高速自動車国道の本線車道」とは、対面通行部分や登坂車線、入出路、速度規制区間などを除いたいわゆる高速道路本線のことで、最低速度の表示がなくても法律によって最低速度50キロが定められています。
これは、高速道路の法定最高速度が80キロまたは100キロと定められているのと同様で、道交法の施行主旨である”円滑で安全な交通のため”に必ず守らなければならないもの。普通車の反則金は、違反点数1点、反則金6,000円です。
一般道にも最低速度の指定が増えている
日本の道路には、見た目は高速道路に見えても高速道路ではないという道があります。高規格幹線道路(一般国道の自動車専用道路)といいますが、こちらは指定がなければ法定最高速度は60キロ。最低速度の規制はありません。
しかし前述のように交通の高速化により道路の設計速度が高められており、80キロや100キロの指定最高速度が与えられている高規格幹線道路も増えてきました。そのため昨年末、警察庁は『最低速度』に関する通達をリリースしています。
この一般道の自動車専用道路における速度は、『指定速度』と呼ばれるもので、最高速度とともに最低速度も指定速度となるもの。指定速度とは、高速道路での荒天時や工事などによる速度規制と同様で、法定速度よりも優先される速度です。
通達に言及されているように、橋や景勝地で観光のためにノロノロ運転が発生し交通に支障を及ぼすのを防止することが主な目的。神戸淡路鳴門自動車道、伊勢湾岸道路、福岡前原有料道路、東水戸道路、三陸自動車道、仙台東部道路などで指定最低速度が規制され、今後も増加していくものと思われます。
最低速度の適用が解除される状況もある
道交法の最低速度には適用が除外される条件があります。それは『速度を減ずる場合及び危険を防止するためやむを得ない場合』というもの。具体的には、”渋滞”、”危険回避のための減速・徐行・停止”、”工事・荒天”など、速度を出せなかったり、警察の指示といった状況による場合です。つまり、最低速度を遵守しようにもできない場合は適用除外となるのです。
もし高速走行時に前方に危険を発見し、あるいは渋滞の最後尾で最低速度域まで減速しなければならないときは、ハザードランプを点灯させるなど後続車に知らせて追突事故を防止したいものです。ハザード点灯は道交法で定められたものではありませんが、高速道路上での点灯は危険を後方に知らせる合図として広く認識されており、NEXCOや警察も積極的な使用を推奨しています。
安全のために流れを乱さない運転を
高速走行における安全リスクは速度差が高まるほど増大します。100キロで走行する高速道路上では、たとえ法の範囲内の最低速度50キロであっても追突の危険がありますから、最低限度のルールだと考えたいもの。高速道路の最高速度引き上げでは大型貨物の速度は80キロで据え置かれていますので、120キロ規制の場合は普通車との速度差は40キロ。このことからも、最低速度以上であっても交通の流れを乱す低速走行はたいへん危険性の高い行為であると認識すべきです。煽り運転で後続車を減速・停車させるなどは他者の生命を奪うリスクの高い、危険極まりないもってのほかの行為です。
高速道路に限らず一般道でも自動車は速度差の少ない一定の速度で流れることが安全で速い円滑な交通を生み出します。最低速度、最高速度、速度規制といった交通ルールは、クルマと道路を利用する私たち全員の安全と利便性を考えて作られたもの。自分だけの身勝手なルール解釈で逸脱してよいものではありません。