消防法適合の携行缶への給油も断るケースも
放火なのか、テロ行為なのか。なんと表現するのが適切なのかわかりませんが、とにかく2019年7月18日に京都アニメーション第1スタジオにて発生した放火殺人事件は35名もの死者と33名の負傷者を出すという史上最悪といえる放火事件になりました。そして、その放火にガソリンが使われたことで、ガソリンが持つ燃料としての恐ろしさがあらためて周知されることになったという面でも社会に与えたインパクトは大きいものでした。
クルマに積載できるガソリンは22リッターまで
その影響なのか、この事件以降ガソリンの販売現場では様々な自主規制が始まっているという話が各地から聞こえてきます。これまでも携行缶(ガソリン専用の金属製容器)にガソリンを給油するのはセルフスタンドでは原則禁止でした。さらに携行缶の容量は最大22リッター、自動車で運搬する際も同じく22リッター以下(実質的に一缶)という決まりもあります。
また、個人が保管できる(火災予防条例の規制を受けない施設で)ガソリンは40リッター未満という消防法の規制もあります。しかし、京アニ事件では、そうした規制をかいくぐるように、40リッターギリギリを購入して、台車に載せてハンドキャリーするという方法が取られたのです。
セルフスタンドでは携行缶に給油できない
このルールの穴をつくような行動から、突発的な行為ではなく、念入りに計画されたと感じられますが、それはともかく、この放火事件をきっかけに携行缶へ給油販売が難しい状況になっています。販売時に身分証明書による確認なども始まっているといいますし、中には消防法に合致した携行缶への給油も断るスタンドが出てきたというのです。
発電機・農耕機・モータースポーツはどうなる?
これにより、様々な職業の人が影響を受けています。農機具や発電機に入れるガソリンの入手に手間がかかるようになってしまったといいます。たとえば個人ユースのレベルであればホンダ「エネポ」のようなカセットボンベを使う発電機もあるので、ガソリンが買いづらくなってもカバーできるかもしれません。ところが、カセットボンベで代替できるのは、ほんの一握りのユーザーなのも事実でしょう。
さらに問題となっているのはモータースポーツです。大きなサーキットであればパドックやピットエリアにガソリンスタンドがあってナンバー付きではない競技車両に給油することも可能ですが、バイクやカートといったナンバーのついていないモータースポーツを楽しむミニサーキットではそうした設備はありません。おのずと携行缶によってガソリンを運ぶ必要がありますが、携行缶に販売してくれないとなったら困ってしまいます。
現時点では、それぞれの販売ネットワークや、個々の販売店による自主規制という段階で、それも混乱に拍車をかけています。これだけの事件があったことから、致し方ないことだとはいえますが、明確なルールができて、どこでも同じように購入できる平和な時代になってほしいものです。