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鈴鹿10時間耐久レース、タイヤの使い方の重要性が垣間見えた”名門ピレリ”の対応

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田了、遠藤樹弥

富士24時間レースより多くのタイヤを消費

 2018年から始まった鈴鹿10時間耐久レース、通称“鈴鹿10H”ですが、開催2年目となる今回も、参戦マシンの足下を支えたのはピレリ・タイヤ。同社のレース用タイヤ『ピレリP ZERO』が今年も鈴鹿10Hのコントロールタイヤに指定されたのです。

 ピレリと言えば2カ月前に富士スピードウェイにおいて、スーパー耐久シリーズの第3戦(富士24時間レース)をサポートしたばかり。スーパー耐久ではトップクラスのGT3に加えてポルシェのカップカーから1.5リッターエンジン搭載のフィットまで、大小様々な車両が参加しています。総参加台数も50台近く、レースも24時間と鈴鹿10Hの倍以上になることから、当然、今回の鈴鹿10Hよりも多くのタイヤを用意する必要があったはず。その辺りについて、タイヤのサポートを統括するピレリモータースポーツビジネスデベロップメントの五木田健マネージャーに聞いてみました。

 

ピットイン時間が決められた鈴鹿はタイヤ交換必須

「今回の鈴鹿10Hでは1チーム/1台当たりの使用本数が制限されており、フリー走行から予選、決勝を通じて、ドライタイヤは1台あたり15セット、ウェットは10セットとレギュレーションで決められています。上位20台が出走する最終予選に残ったチームにはさらに1セット追加。それに金曜日午前の特別スポーツ走行には、これとは別に各チーム3セットずつを用意しています。つまり、ドライが15セット+1セット+3セット、ウェットが10セット+3セット。これに参加台数ぶんのタイヤが必要となり、バックアップ用を含めてそれ以上に用意しています」と五木田マネージャー。

 さらに驚いたのは「具体的なセット数はともかく、レース時間が倍以上で参加台数も1.5倍近い富士24時間よりも、鈴鹿10Hに用意したタイヤ本数の方が多いんですよ(笑)」と言う。

 スタッフの陣容も富士が約50人だったのに対して65人。今回の鈴鹿10HはインターコンチネンタルGT選手権の1戦でもあり、イタリアの本社からもスタッフが来日した関係で大所帯となった一面もあるようです。

 

同じコンパウンドの特性をどう勝負に活かすか

 ではなぜ、富士24時間に比べて鈴鹿10H の方が、より多くのタイヤが必要なのでしょう?

 理由は「富士24時間は、GT3だけじゃなく燃費やタイヤ持ちに優れる小さなツーリングカーも参加。彼らはピットインでの燃料、タイヤ交換を2回から3回と状況を見ながら行ないます。夕方から朝まで、気温や路面温度が下がってくると、それ以上のスティント(ピットインまでの間隔)を1セットのタイヤで走りきっていました。それに比べると今回の鈴鹿10Hではピットインの時間も決められていて、ピットインせずにタイヤ無交換でタイムを稼ぐことは不可能。必然的に1スティント走り終えたらタイヤ交換となり、結果的により多くのタイヤが必要になるんです」と五木田さん。

 なお、サイズは「325/680-18と325/705-18の2種類。前後同サイズ(325/705-18)を装着するマシンと、フロントのみ径の小さいタイヤ(325/680-18)を履くマシンがありますが、基本的にサイズは2種類のみ。ただ1台だけ旧い(年式の)ポルシェだけは径が660と小さいサイズを履いたそうだ。

 ただしサイズが違っていてもコンパウンド(トレッド面のゴム)の種類や構造は共通しており、タイヤのサイドウォールに貼られた『DHD2』という識別マークが今年用のスペックとなっているようです。

 昨年も、レース前には『鈴鹿を知っている日本チームと、ピレリ・タイヤを知っている外国チームでは、どちらにより大きなアドバンテージがあるのか?』と話題になっていました。今年は果たしてどんな展開になるのでしょうか?

 これに関して五木田マネージャーは「昨年の結果で言うなら鈴鹿を知っているアドバンテージよりもピレリ・タイヤを履いてデータを持っていることの方が、より大きなアドバンテージとなったようですが今年はどうでしょうか…。

 スーパー耐久では全チームに、うちのタイヤを履いてもらっています。またブランパンなど海外のレースに参戦しているチームも少なくありません。そういう意味では日本チームでもより大きなデータが蓄積されていると思うので、果たしてどちらにより大きなアドバンテージがあるのか、興味深いですね」と五木田さんはにこやかに笑っていました。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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