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博物館で奇っ怪なオートバイと遭遇!多気筒エンジンを搭載した特殊なモデル10選

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田了

星型5気筒エンジンで前輪を駆動

 こちらは明らかに違和感のあるルックスとなっているのがメゴーラの星型5気筒エンジンを搭載したバイクです。これはもうエンジン形式だけでなく、フロントホイールに星型エンジンを内蔵し、フロントホイールを駆動するというもの(一般的なバイクは後輪を駆動)。基本的な概念からして変わり種と言うしかありません。

 去年、ドイツのミュンヘンにある交通博物館として知られるドイツ博物館・分館/Deutsches Museum Verkehrszentrumで出逢った1台ですが、正直言って腰が抜けるほど驚きました。星型エンジンそのものは航空機用として知識があり、幾つかの博物館で見かけたこともありました。が、それをフロントホイールの内部に搭載しフロントホイールを駆動するというアイデアには脱帽です。でも、クランクがフロントホイールのシャフトに直結しているというから、信号待ちする時などはどうなんでしょう????

 

2つのエンジンをV型に合体

 ここから先は“おまけ”と言うことになりますがバーバー・ヴィンテージ・モータースポーツ博物館で見かけた変わり種で、どうしても紹介したいと思ったバイクが2台あります。ともに74年に製作されたHondaのSS100とKawasakiの1600 V8。

 いずれもメーカーの商品ラインナップにあるものではなく、イギリス人のエンジニアでカスタマイズのスペシャリストのアレン・ミルヤード(Allen Millyard)さんが手作りで作り上げたバイクたちです。

 パフォーマンスや存在感で言うなら1594ccV8エンジンで150bhpを捻り出すKawasakiの方に軍配が挙がるのでしょうが、親近感と言う意味では圧倒的にHondaが上です。

 ホンダの50ccには横型と縦型…と言っても、ここまで出てきた縦置き・横置きエンジンとは違い、クランクケースに対してシリンダーが水平に搭載されているのが横型で、直立に搭載されているものが縦型。ここまで出てきた流れで言えば、どちらも横置きとなる…の2種類があって、前者はスーパーカブやモンキー、あるいは60年代に登場した原付一種のスポーツバイク、SS50などに搭載されていたものです。一方の縦型は、SS50の後継モデルで70年代に人気を呼んでいたCB50に搭載されてデビューしています。

 ホンダには、この2種類の50ccエンジンが存在しますが、このSS100は、SS50にもう1基分のシリンダー&ヘッドを追加したものですから、ある種コミカルな趣があります!展示車両を見て思わずニヤリと顔を綻ばせてしまいました。

 

幻のV12とラッキーな出会いが

 そして最後のおまけが並列12気筒エンジン。これは2013年にイタリアの博物館を巡っていた時のこと。日程に余裕があり2輪の博物館であるモルビデッリ博物館/Associazione“Morbidelli Museo”に足を伸ばすことになりました。事前にメールで来意を告げてアポもとっていて、受け付けの電話で呼び出したところ、陽気な年配のイタリアンがやってきました。

 彼はこちらと同じくらいに英語が苦手のようで、それぞれイタリア語と日本語、そして片言の英語と身振り手振りで話していったところ、なんと彼はモルビデッリの創始者であるジャンカルロ・モルビデリ翁本人だったのです。ちなみにF1GPで活躍したジャンニ・モルビデリ選手の実父としても知られています。

 そのジャンカルロ翁は日本から訪ねて行った若者(…まだ小生は50代だったし、実際にジャンカルロ翁とは20歳以上も年齢の開きがあったから、こう言い張っても良いでしょう!…)を気に入ってくれたようで、博物館を一通り案内してくれたあとで「お前に良い物を見せてやろう」というような感じで2階のワークショップに招き入れてくれました。

 すると「こんなの見たこともないだろう」という感じで笑いながら、今回紹介する幻のV12エンジンを見せてくれたのです。残念ながらこの時彼はイタリア語でしゃべっていましたから、正確な翻訳ではありませんが、ニュアンスはこんなものでしょう。

 カメラを示して写真を撮ってもいいか確認したところ、お許しが出た(…これも難しい話ではなく「ふぉとぐら~ふ、お~けい?」と問いかけたらジャンカルロ翁が「OK!」と応えてくれたのです。たしかそんなやり取りだった、と曖昧ながら記憶しています…)から撮影もしたのですが、これがメカ好きにとってはもう感涙モノ。

 排気量など詳しいことは聞けませんでしたが、可愛らしいツインカムヘッドを乗せた前バンクの6気筒があり、それだけでもすごいのに、なんとその後方には後バンクの6気筒が鎮座しているから一目見ただけで充分。ジャンカルロ翁も興が乗り、モデルまで買って出てくれたのですからもうこちらの気分は最高。こんな素晴らしい出会いもあるから博物館詣はやめられません!

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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