安全運転支援装置を推進する背景と近未来
運転ミスによる交通事故が相次ぐなかで、経済産業省と国土交通省のルール化の元、各自動車メーカーの意欲的な取り組みによって安全装備を充実させたクルマが登場しています。安全装備が装着されるクルマの種類も拡大され、中古車や既存のクルマに対応するようにアフターの世界でも後付けの安全装備用品がリリースされているのも知られるところです。
日本では高齢者ドライバーによる交通事故が社会問題へと発展。ペダルの踏み間違いによる交通事故は決して高齢者だけではないですが、残念ながら、全体の中で比率が大きくなってきているのも事実です。
このような事故を防止するため、経済産業省と国土交通省による指導の旗振りの中で、各自動車メーカーは安全運転支援装置に関する開発を促進。「セーフティ・サポートカー」「セーフティ・サポートカーSベーシック」「セーフティ・サポートカーSベーシック+」「セーフティ・サポートカーSワイド」など段階的に安全装備の違いのあるクルマを登場させており、運転テクニックに応じた安全・安心のクルマを選べる環境が整いつつあります。
しかし、安全運転支援装置それぞれの名称は一般的なカテゴリー分けみたいなもので、自動車メーカーごとに装備の名称が違うのも事実。そこで、サポカーに付く安全装置の名称は、各メーカーでどのような違いがあるのでしょう。
国内自動車メーカー各社の安全運転支援システムの呼び名
・トヨタ
◎自動ブレーキ(対車両・対歩行者)=プリクラッシュセーフティシステム
◎ペダル踏み間違い時/加速抑制装置=インテリジェントクリアランスソナー
◎車線逸脱警報/車線維持支援装置=レーンディパーチャーアラート
◎先進ライト=オートマチックハイビーム・スバル
◎自動ブレーキ(対車両・対歩行者)=プリクラッシュブレーキ
◎ペダル踏み間違い時/加速抑制装置=後退時自動ブレーキシステム/AT誤発進抑制制御
◎車線逸脱警報/車線維持支援装置=車線逸脱抑制
◎先進ライト=アダプティブドライビングビーム・日産
◎自動ブレーキ(対車両・対歩行者)=(インテリジェント)エマージェンシーブレーキ
◎ペダル踏み間違い時/加速抑制装置=踏み間違い衝突防止アシスト
◎車線逸脱警報/車線維持支援装置=インテリジェント L I& LDW/インテリジェント クルーズコントロール
◎先進ライト/ハイビームアシスト・ホンダ
◎自動ブレーキ(対車両・対歩行者)=衝突軽減ブレーキ(CMBS)
◎ペダル踏み間違い時/加速抑制装置=誤発進抑制機能後方誤発進抑制機能
◎車線逸脱警報/車線維持支援装置=路外逸脱抑制機能LKAS(車線維持支援システム)
◎先進ライト=オートハイビーム・三菱
◎自動ブレーキ(対車両・対歩行者)=衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM)
◎ペダル踏み間違い時/加速抑制装置=誤発進抑制機能
◎車線逸脱警報/車線維持支援装置=車線逸脱警報機能
◎先進ライト=オートマチックハイビーム・マツダ
◎自動ブレーキ(対車両・対歩行者)=アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート(アドバンストSCBS)
◎ペダル踏み間違い時/加速抑制装置=AT誤発進抑制制御
◎車線逸脱警報/車線維持支援装置=車線逸脱警報システム(LDWS)
◎先進ライト=ALH(アダプティブ・LED・ヘッドライト)、HBC(ハイビーム・コントロール・システム)・スズキ
◎自動ブレーキ(対車両・対歩行者)=デュアルセンサーブレーキサポート/デュアルカメラブレーキサポート/レーダーブレーキサポート(II)
◎ペダル踏み間違い時/加速抑制装置=誤発進抑制機能
◎車線逸脱警報/車線維持支援装置=車線逸脱抑制機能
◎先進ライト=ハイビームアシスト機能」・ダイハツ
◎自動ブレーキ(対車両・対歩行者)=衝突回避支援ブレーキ機能
◎ペダル踏み間違い時/加速抑制装置=誤発進抑制制御機能
◎車線逸脱警報/車線維持支援装置=車線逸脱警報機能
◎先進ライト=オートハイビーム
そして「サポカー」はテクノロジーの進化に伴っていくつかの種類が存在します。
基本として「セーフティ・サポートカー」は衝突被害軽減ブレーキを搭載したクルマでシンプルなモノ。「セーフティ・サポートカーSベーシック」は低速衝突被害軽減ブレーキ(対車両)とペダル踏み間違い時加速抑制を搭載したクルマ。「セーフティ・サポートカーSベーシック+」は衝突被害軽減ブレーキ(対車両)とペダル踏み間違い時加速抑制装置を搭載したクルマ。そして、最も充実した安全装備を搭載した「セーフティ・サポートカーSワイド」は、衝突被害軽減ブレーキ(対歩行者)、ペダル踏み間違い時加速抑制装置、車線逸脱警報、先進ライトなどの内容を持ったクルマとなります。
やはり注目は「セーフティ・サポートカーSワイド」の該当車種。国土交通省が2019年の夏に各メーカーに対して後付けも含めた安全装置などの開発計画を求めたこともあって、高齢運転者の交通事故防止対策の一環として国内乗用車大手8社のメーカーが、新車について、このカテゴリーのクルマの新車割合を2021年度には全体の90%にすることを明らかにしています。
また、すでに販売済みのクルマに対する後付け安全装置に関しても、ブレーキとアクセルの踏み違いによる急加速を防ぐ「後付け急加速抑制装置」を未発売だった6社の多くが2020年夏以降に実用化してくことも発表。このように各メーカーは、積極的に安全運転支援装置の開発に動いていることがわかります。
ブレーキを踏みそこなったり、ペダルの踏み間違えなどは、ちょっとした不注意や焦りなどによって誰の身にも起き得ること。「セーフティ・サポートカーSワイド」機能を搭載する車両に対して、各保険会社もメリットを打ち出しているので、今後ますます増えていきそうな気配を感じさせます。