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性能は先進なのに見た目はクラシカル! 老舗のデザインを守り続ける輸入車7台

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TEXT: 畑澤清志  PHOTO: Auto Messe Web編集部

車名を引き継ぐのも意外とラクじゃない!?

 自動車メーカーは次なる新車を売り込もうと何年かに一度、フルモデルチェンジを行なってきました。「前作を超えて、さらなる進化を行う」という開発手法がメインストリームですが、紆余曲折過ぎるとユーザーをつなぎとめるどころか、ファン離れを起こしてしまいます。

 とくに老舗ブランドについては、先人が築いてくれたレガシーを大事にしようという風潮は近年より強くなった傾向。自動車メーカーにとって“博打”の要素が減るのでリスクを少なくできます。「昔の名前で出ています」的なモデルチェンジは、海外メーカーでは特に多く採択されています。

 ユーザーにとっては、憧れていた旧車のイメージはそのままに、壊れない現代のエンジニアリングで乗れるのですから、夢のあるプロダクトなのです。そんな「性能は先進なのに見た目はクラシカルな輸入車」を見ていきましょう。

 

VWビートル

 ルーツは1930年代。VWのビートルは、ドイツ発の伝説的国民車が北米進出の際に付いた愛称が車名になったクルマ。前人未踏の累計2000万台超というメガヒット作でしたが、先進国における安全基準や規制に合わなくなったことなどもあり、一時は途上国でひっそりと作られていたのですが、1990年代半ばに突如スポットライトが当たったのです。

 オマージュして誕生したのが1998年にデビューしたVWニュービートル。円弧を組み合わせたスタイリングや室内の1輪差しなどエッセンスをわかりやすく取り込みながら、プラットフォームはゴルフ用を上手く流用しました。

 駆動方式が違うので初代原理主義者の一部には、バッヂだけを引き継いだことへのアレルギーは出るには出ました。しかし、継続は力なり。そうした声も次第と少なくなっていったのでした。

 初代モデルはメキシコ工場で2003年まで生産されていたので、新旧モデルが被っていた時期もありました。2011年にはフルモデルチェンジを行ない、車名も「ザ・ビートル」となりましたが、残念ながらこの代をもって終了。累計2000万台超という「世界でもっとも作られた」ビッグブランドであっても命は永遠ではないのですから、自動車販売はつくづく冷徹な面を併せ持っているといえます。

 

MINI

 経営難のローバーから「MINI」というブランドを切り離し、手に入れたのはBMW。あれから20余年、BMWにとって立派な”孝行息子”として成長しました。2回のモデルチェンジを経て現在は3代目となり、サイズもまた成長し続けています。

 ターニングポイントになったのは2代目の「NEW MINI」。ワゴンタイプやクーペ、チョップトップのロードスターやバンなど一気にラインアップを増やして攻勢に出ました。討ち死にしてしまった車型も累々でしたが、現行型では車型を絞り込み5ドア投入で確実にヒットを狙いにいくなどしています。

 路線変更も身軽なのがBMW。ブランドはもちろん大事にしますが過去に固執し過ぎないのも継続の秘訣かもしれません。

 NEW MINIのように吸引力あるブランドを核にしながら巧みにバリエーションを広げる手法は、のちにフィアット500のバリエーション拡大など各社の商品企画の立て方に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

 

アルピーヌA110

 2018年に彗星のように出現した「アルピーヌA110」。1960~1970年代に活躍したレジェンドマシンを、現代のエンジニアリングで車名を含めて復刻したクルマです。

 ミッドシップというディメンションを含めてポルシェ718ケイマンがライバル。ケイマンが直4になったことでさらなる”ガチ相手”になりました。事実、価格についても量産効果の見えないなかでかなり努力してケイマンの700万円台に寄せています。

 ちなみに復活まで休眠中だった「アルピーヌ」ブランドの復活のトリガーとなったのは、元会長のカルロス・ゴーン氏。A110の発表から半年後に塀の向こうに行ってしまったのですから、思い通りにいかなすぎる運命です。 

 スポーツカー大好きなゴーンさんでしたから、きっと試作車に乗って相当な手応えを感じていたはず。またいつか、公道で堂々と乗れる日を願っています。

 

フィアット500

 数ある「復刻車」のなかでも、最長といえるインターバルで登場したのがフィアット500。先代が誕生したのが1957年ですから、ちょうど50年後の記念すべき復活でした。

 VWニュービートルと同様に生産効率を考えFF化されましたが、コミカルな印象はしっかりとコピーされて受け継がれました。

 以降、現在まで12年間作られ続けています。エンジン展開は牧歌的な2気筒エンジンから600万円級のカリカリのアバルトチューンまでよりどりみどり。ボディバリエーションでは、ミニバンの500L、クロスオーバーの500Xという派生モデルは出たものの、基準車については好調すぎるゆえなかなかモデルチェンジに踏み切れないでいます。

 パイクカー的な一過性の成功とは違い、継続的に出し続けていくことも難しいですが、次世代へのバトンタッチもそれ以上に難しい。ヒット作ゆえのジレンマですね。

 

フォード・マスタング

 1960年代からアメリカンスポーツカーを代表するロングセラーであるマスタング。現行車は7代目になりますが、じつは過去には紆余曲折ありの振り幅の大きいモデルチェンジを繰り返していました。

 路線が固まったのは2000年代前半。その頃フォードはヘリテイジを強化するエンジニアリングの転換期でした。2005年に登場した6代目は初代マスタングをかなりリスペクトしたデザインを採用。「古くて新しい」直球スタイルは、マスタング復権を大いにアピールしました。

 2015年登場の7代目もその路線をしっかり継承。4気筒エンジンも搭載するなど、スポーツカーとはいえ時代は無視できないことを物語っています。

 

シボレー・カマロ

 マスタングと並び、アメリカンマッスルカーの代表であるカマロ。常にライバルを横目で見てきましたが、マスタングの原点回帰路線が好調と見るや、2009年登場の5代目からは、初代カマロをフューチャーナイズしたスタイルにリデザインされました。

 2015年には6代目にバトンタッチされましたが、初代のエッセンスの残し具合はほんのわずかとなり、スタイリングはサイバー調に変化。伝統に縛られすぎるとデザインの手数が減ってしまうので、こうしたブレイクの仕方は大いにアリでしょう。

 ちなみに兄貴分のコルベットは、これまでの保守の路線から大ジャンプ。ミッドシップ化されて欧州のスーパーカーたちとの闘いも見据えています。

 

ポルシェ935

 ルーフ社やシンガー社など、民生ビルダーによるポルシェ911をリスペクトしたキットカーは数多く存在するようですが、ポルシェオフィシャルが手がけた復刻版は、想像のナナメ上を行ってくれました。

 初代ポルシェ935とは、1970~80年代に「フラットノーズ」の愛称で呼ばれた耐久レース常勝のレーシングカー。そんな伝説のマシンを復刻してしまったのです。

 ベースは911GT2 RSだから2WDとなります。エンジンはポルシェ史上最強の700psまでチューニングされていますから、アクセルを床まで踏んだら一体どうなるのか、もう想像だけで十分でしょう。

 カラーリングも、ファンの脳裏に焼き付いている往年のマルティニカラーをアレンジ。新旧並べて見ると違って見えるのに、単体ではどこから見ても935に見えるという天晴れなデザインテクニックです。

 販売台数はわずか77台。価格は9000万円超ですが、それをまったく現実離れした価格だと思わせない、金銭感覚すら麻痺させてしまうのが935という困った奴なのです。

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