クルマが特別な存在だった時代
最近はあまりクルマに愛称は付けられないが、以前はけっこう付けられていたし、それが広く使われたりもしました。それだけクルマが特別な存在だった時代ともいえるのですが、今回は懐かしの愛称たちを紹介しましょう。
てんとう虫
これはお馴染み、スバル360の愛称。富士重工業(現SUBARU)が1958年から12年間にわたって販売したクルマで、当時の軽自動車規格をいち早く採用したこともあり大ヒットしました。丸みを帯びた、スタイルゆえに的を射た愛称は、憧れも含めて意味が込められていました。
Nコロ
ホンダのN360はデザイン性の高さもあって、Nコロと呼ばれました。ちなみにリヤまわりのデザインは本田宗一郎自らが行なったのも有名なハナシ。ローバー・ミニを参考にFF方式のシンプル構造を採用しつつ、価格も手頃だったため大ヒット。輸出仕様のN600E、ホットモデルのN360Tなど、バリエも増えていった。
ハコスカなど
日産のスカイラインといえば愛称の宝庫。四角いからハコスカと単純明快だが、じつは新車当時はスカGのほうがよく使われていた。その後、ケンメリ、ジャパン、鉄仮面、ニューマン、7th(セブンス)など、広告のキャッチフレーズ由来のものも含めて数多くの愛称が誕生。ヨンメリ、つまり4枚ドアのケンメリといったマニアックな呼び方もあった。
510ブルなど
同じ日産のブルーバードもサメブル、ゴーイチマルブルやキューイチマルなどの愛称で呼ばれたクルマ。サメブルとは、フロントフェンダーのサイドに入ったスリットが、サメのエラに似ていたことから付けられたもの。410型については、映画『ルパン三世 カリオストロの城』に、銭形警部の愛車として登場したことから、ゼニブルの愛称もある。
くじら
トヨタの4代目クラウンは失敗作と言われたが、現在ではそのデザイン性の高さから人気が高まっている。スピンドルシェイプと呼ばれる丸みを帯びたスタイルと丸目のライト、当時としては珍しい2段になったボンネット(ポジションライトが付いていた)が、クジラの背中のようだったことが所以だ。
ダルマ
日本初のスペシャリティカーとして登場した初代セリカ。アメ車を意識したこともあって、丸みを帯びた流麗なラインが特徴なのだが、それゆえに塊感のあるフォルムがダルマみたいに見えていたのでこの愛称が付けられた。後に追加されたリフトバック(LB)のボンネットは前方に長く、フロントマスクの印象が異なっていたが、後期型ではLBの長いほうに統一された。
ブタ目
後継のマークXが消滅してしまうことで、マークIIの系譜が途絶えてしまうが、3代目のコロナ・マークIIはシンプルな丸目2灯ながら、中央にスモールランプ、四角いグリルも相まって、ブタ目と呼ばれた。当時に流行ったアメリカンなスタイルで、4ドアセダン、2ドアハードトップ、バン、ワゴンなど、ボディのバリエーションが多かったのも特徴だ。
ブタケツ
マークIIが目なら、日産ローレルはお尻。ブタケツと呼ばれたのは2代目のローレル。C110型(ケンメリ)スカイラインの兄弟車なのだが、バンパーにテールランプを埋め込んだ当時としては斬新なデザインで、塊感ありすぎのツルリとしたリヤまわりゆえ、こう呼ばれた。
ABC
同じジャンルに競い合っていたクルマにまとめて愛称が付けられたこともあった。軽スポーツのAZ-1(マツダ)、ビート(ホンダ)、カプチーノ(スズキ)たち。それぞれの頭文字をとってABC戦争などと呼ばれて盛り上がった。ちなみにAZ-1のエンジンはスズキ製で、スズキにはOE供給したキャラ(CARA)もあり、ABCのCには、カプチーノとキャラの2台を指す。
タコツー
こちらはライバルというよりも兄弟たちへの愛称。ターセル、コルサ、カローラIIをまとめてこう呼んだ。トヨタの割りにはバッヂだけでなく、全体のデザインもそれなりに異なっていた。売れまくったため街中では頻繁に見かけたものの、印象に残らないキャラクターだったのも事実。初心者や女性には、いいクルマだったと思う。
型式系
今の時代でも現行車のオーナーなどは型式で呼ぶこともあるが、その昔は愛称的に広く使用されていた時代があった。AE86の型式だったトヨタの”ハチロク”はいい例で、後に登場した「86」は型式が車名になっている。さらに、先にあげたブルーバードの510(ゴーイチマル)などもそう。トヨタ・スターレットのケーピー(KP61)、イーピー(EP)など、コンパクトで手頃な走り系のクルマは型式で呼ばれることが多かった。マツダのサバンナ系は、初代が輸出名のRX-3(アールエックススリー)、RX-7ではセブンと短縮して呼ばれていた(FC/エフシー、FD/エフディーと型式で言うマニアもいた)。