純正の可変ダンパー機能はそのままにローダウンを実現
車高調は名のとおり、”車高調整式サスペンション”のことで、ショックアブソーバのロワシート位置を上下させたり、ショックアブソーバ自体の長さを伸縮させることでクルマの車高を変えられるパーツだ。路面状況やコースに合わせて車高を変更できるため、新車の開発やモータースポーツに使われていたが、いまやカスタマイズパーツとして幅広い車種ジャンルにさまざまなタイプの車高調がリリースされている。
「RS-R」でおなじみのティエムシーは、日本が誇る老舗の足回りメーカー。”遊ばないコイルスプリング”は長年ユーザーに支持されているローダウン用スプリングで、その優れた耐久性は今日のTi2000へと受け継がれている。また、車高調に関しても車種ごとに快適でしなやかな特性を追求した「ベストi」、減衰力固定タイプの「ベーシックi」、乗り心地と走行性能を追求したハイスペック仕様の「スーパーi」、迫力のローフォルムを描き出す「ブラックi」など、車種やユーザーの要望、走るステージに見合った多くのバリエーションを持つ。
いまや、コストダウンを最優先した激安の海外ブランド品が出回るなか、徹底した部品管理の元、社内工場で組み上げられるという国産品質もRS-Rブランドの魅力。発売以降、シール/Oリング/ベアリング/ゴム類などの構成部品を改良しつつ、細部のマイナーチェンジを行なって品質や耐久性を高めてきた。
そんななか、ここ数年は先進デバイスを持つ純正サスペンションが増加。より複雑化する純正の先進機能を活かせられる車高調の開発は、足回りメーカーにとってさらに難しくなっている。
例えば、トヨタやレクサスに代表される電子制御の可変式ダンパー機能の「AVS(Adaptive Variable Suspension system)」も然り。AVSは、走行中の路面状況や運転状況に合わせて瞬時にダンピング(減衰力)特性を変更。クルマの走行姿勢を安定させる機能で、トップマウントに減衰力を変化するためのアクチュエータを設けたタイプと、ダンパーそのものに制御デバイスを内蔵するタイプが存在する。
ダンパー特性とアクセル開度が連動しており、ノーマルやエコ、スポーツといった複数の走行モードから任意で選択することできる新世代のアクティブサスペンションである。
そんなAVS機能付きの最新ダンパーの内部は、電子制御の反応速度に対応するための新開発ユニット(ソレノイドバルブ)が組み込まれた特殊構造。コンピュータ制御によってダンパーの特性を変化させるのだが、従来のダンパー構造ではAVSに対応させるのは不可能だった。
すなわち、車高を変えるには純正のAVS機能をカットせざるを得なく、警告灯を消すためのキャンセラーが必要。アフターパーツメーカーにとって、複雑化する電子制御機能へ適応するのは非常に困難であり、こういった先進の純正デバイスを無視した製品や、それっぽく対応させた車高調しか選択せざるを得なかったのも事実だ。
3年の月日をかけて開発!
そんなユーザーの悩みを解消すべく、ティエムシーではAVSの誕生とともに研究をスタート。約3年にのぼる開発期間を経て、念願のAVS対応モデル「RS-R ベストi アクティブ」を世に送り出すことに成功したのである。下写真(左がRS-R製品、右は純正品)
「すでに多くの自動車メーカーが電子制御ダンパーを採用しています。そのような車種を購入したユーザーが、純正の持つハイテク機能はそのままに、任意に車高調整できるように開発したのがアクティブ・シリーズです。すでにトップマウント式のAVS対応車高調は展開していますが、レクサスNXや新型クラウンなど、ダンパー内部にソレノイドバルブを持つ最新型”AVS”対応モデルの開発にも成功しました。走行状況を感知するセンサー類や制御システムは純正を流用し、ハーネスは純正カプラーに対応した専用品を開発したので、ボルトオンでの取り付けを可能としてます」とは、ティエムシー広報部広報課の松原サン。
こうして誕生した「RS-R ベストi アクティブ」は、36段の減衰力調整機能や、オイル容量を十分に確保する単筒式ダンパー、ヘタらない超軽量スプリング”Ti2000″、そして充実の保証制度など、ベストi本来のハイスペックを踏襲。AVS機能やモード切り替えといった純正の最新デバイスはそのままに、安全・安心のローダウンが実現できるようになった。
設定車種は、新型クラウンやレクサスNX。気になるプライスだが、前者は28万8000円で、後者は27万8000円(ともに税抜)と、最新構造を持つ唯一無二のハイスペック車高調ながら手の届きやすい価格帯となっているのも注目すべきポイント。なお、レクサスLC、レクサスUX、レクサスRX450hLをはじめ、新型スカイライン400Rといった日産のアクティブダンパー対応モデルも開発予定とのこと。
解析が難しい電子制御化が大幅に進み、カスタマイズ業界にとっては厳しい時代。しかし、車高調キットについてはまだまだ可能性を秘めていることをティエムシーは証明してくれた。
【詳しくはこちら】
ティエムシー
https://www.rs-r.co.jp/