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【SUPER GT Rd.6 オートポリス300km】DENSO KOBELCO SARD LC500のコバライネン/中山雄一組が今季初優勝

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 成瀬陽介、遠藤樹弥

レース戦略、時には幾つもの正解が生まれる

 荒れた天候に翻弄されることが少なくなかったオートポリスのSUPER GTレースですが、今回もドライコンディションからウェットになり、雨量が多くなったり少なくなったりを繰り返しながら、最後はハーフウエット、というタフなコンディションに終始。セーフティカー(SC)も3度導入された波乱の展開でした。

 公式サイトやモータースポーツ専門サイトで報じられているように、GT500クラスは「No.39 DENSO KOBELCO SARD LC500」のヘイキ・コバライネン/中山雄一組が今季初優勝。

 GT300では「No.60 SYNTIUM LMcorsa RC F GT3」の吉本大樹/宮田莉朋組がチームにとっても久々の、そしてLEXUS RC F GT3での嬉しい初優勝を飾りました。

 

目まぐるしく変わる路面状況にトラブル続出

 詳しく結果を見てみると、GT500は2位に入った「No.17 KEIHIN NSX-GT」の塚越広大/ベルトラン・バゲット組を挟んで、「No.37 KeePer TOM’S LC500」の平川亮/ニック・キャシディ組、「No.38 ZENT CERUMO LC500の立川祐路/石浦宏明組」が3~4位に入賞。LEXUS LC500勢は出走した6台すべてがポイントを稼いでいます。

 Honda NSX勢も17号車に加えて「No.8 ARTA NSX-GT」の野尻智紀/伊沢拓也組が5位、「No.64 Modulo Epson NSX-GT」のナレイン・カーティケヤン/牧野任祐組が7位と健闘。これに対してNISSAN GT-R勢は「No.24 リアライズコーポレーション ADVAN  GT-R」の高星明誠/ヤン・マーデンボロー組が9位入賞したものの、残る3台は完走扱いというタフなコンディションに翻弄された格好となってしまいました。

 ただし、今回のレースで最も不運だったのは「No.1 RAYBRIG NSX-GT」の山本尚貴/ジェンソン・バトン組。他のNSXとの同士討ちを避けようとしてクラッシュしてしまい、オープニングラップを走り終えることなく戦列を去っていったのです。

 

GT300は伊スーパーカー軍団を猛チャージ逆転

 一方のGT300クラスはハーフウエットとなったレース終盤は、スリックタイヤで猛チャージを見せた60号車の逆転劇に観客が沸きたちましたが、それまでスポットライトを浴びていたのは「No.720 McLaren 720S」の荒 聖治/アレックス・パロウ組と「No.88 マネパ ランボルギーニ GT3」の小暮卓史/元嶋佑弥組によるトップ争い。

 少しずつ乾いていくコンディションの中、ウェットタイヤでのパロウと小暮とのバトルは、結果的には2と3位に終わったものの、2人のキャラクターと相まって、今後に語り継がれていくであろう名勝負となりました。

 今回のレースはタフなコンディションに翻弄される格好となり、GT500ではベストなタイミングでルーティンピットを行ない、ドライタイヤからウェットタイヤに交換した39号車が勝ちましたが、GT300の60号車は前半のスティント(スタートからピットインまでの期間)を長めにとり、終盤近くにルーティンのピットイン。ドライタイヤからドライタイヤに交換して終盤の逆転劇を生むことになったのです。

 

逃げるより追いかける作戦が無念のGT5002位

 つまり正解は一つではなかったのです。

 GT500で2位に入った17号車はルーティンピットでドライタイヤからドライタイヤに交換したものの、ウェットコンディションが酷くなったことからもう一度ピットインしてレインタイヤに交換。ピットインを1回余計に行なうと、それだけで勝負権を失うのですが、今回の彼らには充分な速さがあり、また荒れたレース展開にも助けられ、一時は再逆転の展開も見えたほどだったのです。

 結果的には3度目のSCランからのリスタートでトップ39号車との間にドライタイヤを装着したバックマーカー(周回遅れのクルマ)がいて、サーキットのコースの3セクターの後半からスピードを上げて行った39号車には大きく差をつけられて逆転ならず。もし39号車との間にバックマーカーがいなくて、大きな差をつけられることなくリスタートしていたら、17号車はそこから逆転して今季初優勝の可能性もあったでしょう。

 そうなると、ドライタイヤからルーティンのピットインでドライタイヤに交換し、ウェットコンディションが酷くなった段階でもう1度ピットインしてレインタイヤに交換する作戦が正解となった、という可能性もあったのです。レース、というか勝負の世界は本当に非情なものです。

 もちろん、本来的な速さがなければ勝つことは到底無理な話なのですが、本来の速さを発揮したうえで、運も味方につけなければ優勝は覚束ない。だからレース後に、GT500で2位に入った17号車のバゲットの放った「2位入賞は嬉しいが、本来のパフォーマンスからすれば勝つべきレースだったのでほろ苦さもある」という台詞が心に響きます。

 この日のレースだけでなく、勝負の世界の非情さを教えられた気がします。もちろん、だからこそレース=勝負の世界は、外から見ているだけでも充分に面白い、のかもしれません。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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