「レベル3」車両が高速道路を走行するために
自動運転を可能とした新型車を各自動車メーカーが開発してますが、アーノルド・シュワルツェネッガーが出演したSF映画「トータル・リコール」に登場する自動運転タクシーのシーンのようなことが、近い将来に現実化されそうです。
アウディは2018年内に新型の「A8」に自動運転を搭載して市販すると発表していましたが、各国の法整備が追い付いていない現状があり、初のレベル3の自動運転車の発売は見送った経緯がありますが、2019年の現在、もっとも自動運転に近いテクノロジーを搭載したクルマが他にもデビューしています。
詳しい機能は省きますが、メルセデスベンツ・Cクラス、スバル・フォレスター、レクサス・LSなどに自動運転を想定した機能が搭載されています。こうなると肝心なのは、各国の法整備。国連の自動車基準調和世界フォーラム(6月24~28日、ジュネーブ)では、自動運転車の国際的なガイドライン、基準策定スケジュールを含む自動運転のフレームワークドキュメントが合意されたと、国土交通省が発表しました。
その基準策定スケジュールとしては、2020年3月までに高速道路における自動車線維持走行「レベル3」の基準案を作成。日本においては国土交通省が、自動運転の車両が優先して走行できる車線を高速道路や一般道に設けていく方針を固めて、早ければ2020年の通常国会に道路法の改正案など関連法案を提出することになっています。
ちなみに自動運転はレベルは6段階に分けられていて、「レベル0=運転自動化なし」「レベル1=運転支援」「レベル2=部分運転自動化」「レベル3=条件付き自動運転」「レベル4=高度自動運転」「レベル5=完全自動運転」の基準があります。現在、日本における自動運転車の主流はレベル1~2という程度。レベル1にあたる自動ブレーキシステムなどはすでに多くの車両に装備されており、今後は段階的にレベルの進化は進むと思われます。
そんななかでも実現できそうなレベルで現実的なのは、高速道路における自動車線維持走行「レベル3」。第一弾として新東名高速道路の静岡県内の一部区間が候補に上がっており、一般車両との車線を分けることで事故防止や円滑な走行を目的としたもので、2020年度内の実用化を目指しています。
現在、新東名では最大3台のトラックが一定の車間を保ち自動運転の隊列走行の実証実験を実施。ただ、最も左側の走行車線を走るためインターチェンジからの合流がスムーズにできないようで、2020年以降は一部区間で一番右側を自動運転車線とする案も出ています。もちろん、優先レーンでは一般車両の走行は制限。渋滞時の適用など制度の詳細は警察庁などと協議が必要となるそうで、将来的に車線数が多い高速道路から順次採用される予定です。
一方で自動運転に関して搭載されるカメラ、レーダーなどの安全基準を定めた改正道路運送法については、2019年の通常国会で成立済み。そして9月2日、自動運転や蓄電池などの分野で連携するために日本とフランスは自動車産業次世代技術に関する協力の覚書を結んで、日産とルノーが中心的な役割を担う見通しになっています。
では、自動運転に関してドイツやアメリカはどうなっているでしょうか。すでに官民で独自のルール作りを進めており、各国は自国に有利なルールを作りをいち早く進めてイニシアチブを握り自国の自動車メーカーが有利になるように事を運びたい思惑があります。これに関してトヨタとスズキは自動運転分野を含めた新たなフィールドでの協力を進めるため、資本提携することで合意したと発表しました。
今夏、BMW日本法人は渋滞した高速道路で手放し運転ができる運転支援システムの搭載を3シリーズ、8シリーズに標準装備化。日産も高速道路で手放し運転が可能な新型スカイラインを9月から発売します。日本の車両メーカーに有利な自動運転のルールを国際化していくのは、まだまだ綱引き状態にありますが、この取り組みによって将来、どんな自動運転のクルマが登場してくるのか楽しみになってきています。