タイヤのグリップ力はホイールの性能が影響
クルマの機能性パーツのひとつアルミホイールは、タイヤとクルマをつなぐ重要保安部品だ。クルマの運動性能にも影響するアルミホイールは、かつて重量の軽さが注目されていたが、現在は剛性を高めることが重視されているという。そこで、富士スピードウェイで9月14日開催の日産GT-Rの祭典・R’s Meeting2019に出展していたアルミホイールメーカー「レイズ」の川崎氏に話しを聞いてみた。
アルミホイールを軽量化すると、いわゆるバネ下荷重が軽減され、サスペンションが動きやすくなる。違うモノで例えれば、鉄製のゲタとスニーカーの違い。軽ければ持ち上げるのも下げるのも力が必要、といえば理解できるだろうか?しかし、軽くするのと強く(高剛性)するのは、相反する要件。肉厚を厚くすれば剛性は高まるが、重たくなる。薄くすると強度や剛性が確保できなくなるのだ。
「スーパーGTやWECなどモータースポーツの世界では、ホイールには軽量化よりまずは剛性の高さが重視するのが常識になっています。それは、ホイールの剛性が低いと、カーブやエンジンのパワーをかけたときに歪みが生じてタイヤが理想的な接地ができなくなるからです」と語るのはレイズの川崎敏靖氏。
カーブでタイヤやホイールに横方向の力が掛かったときに、タイヤ自体のグリップが高いからそれを支えるホイールには大きな力が掛かる。場合によってはスポーク部分とリムが歪んでしまうそうだ。
「かつては、弊社でも軽さに重きを置いたホイールをリリースしてきました。しかし、現在は走行中にタイヤを正確に接地させることが、モータースポーツだけでなく一般のクルマでも重要ということで剛性を重視した設計が主流になっています。とくに、パワーの大きなクルマや車重の重いクルマは、とくにホイールに掛かる負荷が高いので、高い剛性が必要なのです」と川崎氏。
日産R35型GT-Rのようにノーマルでも500馬力以上あり、車重も重いクルマは、ホイールの剛性で運動性能がハッキリと変わるそうだ。しかし、剛性が固めるために重たくなると運動性は低下する。そのバランスが重要なのだ。
「剛性と軽さの両立は非常に難しいところです。そのためにスポーク断面に肉抜き穴を設けつつも剛性は確保する。さらに最近はR35型GT-Rのユーザーさんから21インチホイールの需要も高まっていますいるので、ホイールの大径化にも対応する難しさも加わります」。
ボルクレーシングGT090を装着する展示車のR35型GT-Rは、フロント・リヤともに12J×21サイズという太いホイールを装着している。GT090ホイールは、このように太いリムでも高い剛性を確保できるようにするため、両サイドが立体構造にする設計が施されている。
「トヨタTS050ハイブリッド(ル・マン24時間優勝マシン)へのホイール供給やスーパーGTから得たノウハウや技術力は、もちろん市販のアルミホイールにもフィードバックしています。だからこそ、設計から製造まで徹底した管理によって、メイドインジャパンならではのお客さまに安心・安全をお届けできるように努めています」と川崎氏は語る。
クルマで個性を際立たせるには、アルミホイールの交換はもっとも効果的ではあるが、重要保安部品ゆえデザインのみならず性能という面にも十二分に気を掛けて選んでほしい。