オールシーズンタイヤこそ舗装路性能が重要
1本のタイヤで夏の暑い日も、梅雨の雨降りも、そしてほとんどの銘柄が冬のチェーン規制もOK。そんな便利なタイヤがオールシーズンタイヤだ。ネクセンタイヤでは「Nblue 4Season(エヌブルー4シーズン)」というオールシーズンタイヤをリリース。もちろん、チェーン規制下においても走行可能。そんなオールマイティに使えるオールシーズンタイヤだが、その多くを走行するであろう舗装路の性能はどうなのだろうか? トヨタ・ノアに装着してテストしてみた。
欧州ではオールシーズンタイヤに注目が集まっている。とくにドイツでは、法律で冬季は冬用タイヤを履くことを義務づけたため、冬用タイヤの性能を備えながらサマータイヤとしても使えるオールシーズンタイヤが脚光を浴びている。
ネクセンタイヤは、日本国内でこそ知名度はそれほど高くないが、欧州ではポルシェをはじめ多くの欧州の自動車メーカーが純正タイヤに採用するなど高い評価を得ている。
そんなネクセンタイヤが欧州のニーズに応えて開発したオールシーズンタイヤがNblue 4Season(エヌブルー4シーズン)だ。
トレッドデザインは、Vタイプグルーブのディレクショナルパターン(方向性指定)を基本に、センターリブ(中央の縦のブロック列)と、それを挟むように配置されたやや角度のついた縦溝で構成されている。
このトレッドデザインは、オールシーズンタイヤの定番ともいえるものだが、タイヤセンター部に3Dサイプを集め、タイヤのショルダー部(両サイド)にサマーサイプを配置しているところがネクセンタイヤのアイデア。3Dサイプは雪道のようなグリップの低い路面では柔軟性を発揮してグリップ性能を作り出し、ドライおよびウエット路面などタイヤにストレスがかかる路面では、互いのブロックを支え合い、高いブロック剛性を発揮する。
一方、ショルダー部にはサイプの量を少なくしたサマーサイプを施すことで、グリップのいい路面(主にカーブ)で、負担のかかるショルダー部の剛性を高くし、優れた操縦性を実現している。
今回はトヨタのミニバン「ノア」には純正サイズである195/65R15のNblue 4Seasonを組み合わせ試乗してみることにした。テスト車両にミニバン選んだのは、ファミリーカーとして季節や天候で日常生活に影響しないようにするため、オールシーズンタイヤが適したジャンルだと判断したからだ。また、重心が高いため、タイヤにとっては厳しいクルマでもあることを付け加えておこう。
第一印象として、乗った感じはサマータイヤに限りなく近い手応え。スタンダードタイヤ(サマータイヤ)くらいの接地感、グリップ感があり、走り出した瞬間から全く違和感なく走ることができた。無暗にゴツゴツ硬かったり、逆にスタッドレスタイヤのようなぐにゃぐにゃしたところがなくて、「ごく普通に使えるな」という感想を持った。
もう少し細かく見ていくと、タイヤのプロファイル≒断面形状が凸型をしていて、タイヤが転動していく時にまずタイヤの中央から路面に接地する。その結果、ペタンとタイヤが路面に接触するのではなく、ヒタッと接地するようなしなやかな感触がある。
それでいて、カーブでグニャつくことなく、しっかりとタイヤがグリップして路面をとらえてくれる。高速道路も普通に走ることができた。もちろんハイパフォーマンスタイヤのようなビシッとした手応えや乗り味ではないが、ヨレやグニャつきは一般的なサマータイヤとの差は感じられなかった。接地感、グリップ感もしっかり出ており、安心して走ることができた。
ブレーキのフィーリングの良さもこのタイヤの特徴の一つだろう。ここはスタッドレスタイヤと大きく違うところで、ブロックの変形感が気にならないし、普通に強くブレーキが効き、しっかり止まってくれる。ウエット路面にタイヤを踏み入れてみると、ゴムが柔軟に路面をとらえてブレーキが効く。
気になるノイズに関しては、これは特別良いわけではないが、だからといってノイジーなわけでもない。ノイズレベルはスタンダードタイヤと同等かそれ以上。目の粗い舗装ではさすがにノイズが大きくなるが、良好な舗装路ではロードノイズもパターンノイズも比較的小さめで快適だ。
とはいえ、誰にでも、どんなクルマにもお薦めというわけではない。操縦性にこだわったクルマや、快適性を重視したクルマなど、プレミアムな性能を特長にしたクルマは、夏はサマータイヤ、冬はスタッドレスタイヤとの履き分けをお薦めしたい。
筆者としてはオールシーズンタイヤがぴったりハマるのは、ミニバンやコンパクトカーを2台目、3台目に使っている人、街乗りをメインに使っている人だと思う。
そんな人にとって、1年に2度か3度降る雪のためにタイヤ交換をするのは、なかなかしんどい。だからといって、夏にスタッドレスタイヤを装着しっぱなしにするのはリスキーすぎる。さらに、オフシーズンのタイヤを保管する場所も必要だ。
その点、ネクセンタイヤのオールシーズンタイヤ「Nblue 4Season」なら、多少の雪なら問題なく走れてしまう。それでいて夏もそれなりに走行できる。一年中履きっぱなしでいいのだから、前述したように奥さんなどが季節や天候に影響されず安心して行動できるわけだ。これはなかなか魅力的と言えるだろう。
タイヤの構造上は冬用タイヤ扱いで、「スノーフレークマーク」というウインタータイヤであることを示すマークがついている。そのためチェーン規制(全車チェーン規制は除く)でもそのまま乗り入れできる。凍結路はあまり得意ではないので、それなりに注意は必要だが、いざという降雪時の性能としては十分だろう。
なお、Nblue 4Seasonの新品時の溝の深さは実測で7.56mm。
2860km走行後の前輪のトレッドの深さは7.09mm。前輪駆動のミニバンで操舵と駆動を担う前輪で0.47mmの摩耗だった。
もし、熱に弱いスタッドレスタイヤで今年の連日35℃越えをするのような猛暑の道路を同様に走行していたら、間違いなくもっと摩耗していただろう。さらに、ゲリラ豪雨のような大雨のときの排水性、ドライ路面でのグリップ力、ハンドリング性能も含め、スタッドレスタイヤを夏に使用することはオススメできない。そのようなことを考慮するとオールシーズンタイヤ「Nblue 4Season」は、2セットのタイヤを用意しないで済む経済的と安全性の確保を両立できるタイヤでもある。
ネクセンタイヤ
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