VWの主力モデルの座を狙う戦略車
フォルクスワーゲン(VW)は現地時間の9月9日、フランクフルトモーターショー(IAA)の前夜祭で電気自動車(EV)「ID.3」を発表。VWにとって初の量産型EV専用車「ID.」ファミリー初のモデルで、発売を記念した特別限定モデル「ID.3 1st」も披露された。あわせてVWの新しいブランドデザインとロゴも発表された。
「ID.3」はVWの次世代を担う”MEB(モジュラー・エレクトリック・ツールキット)プラットフォーム”を使って開発された最初のモデル。ボディサイズは全長4261×全幅1809×全高1552mmで、ホイールベースは2765mm。日本でも販売中の「e-ゴルフ」より4mm短く、9mm広く、72mm高く、ホイールベースは130mm長い。すなわちゴルフ同様にCセグメントに分類され、いずれはゴルフと同様にVWの主力モデルの座を狙う戦略車だ。
MEBプラットフォームの特徴は、動力の源であるバッテリーを中心に最適化されたパッケージングだろう。駆動システムはパワーエレクトロニクス、ギヤボックスを含む永久磁石同期モーターから構成され、リヤアクスルに一体化されている。
つまり、「ID.」ファミリーは後輪駆動がベースであり、高電圧バッテリーはスペースを節約するためにフロア下に効率的に配置。そしてフロントセクションにはエアコン用コンプレッサーやステアリングラックなどの補助ユニットが収められている。
「ID.3」はゴルフなどと同じ2ボックスのシルエットだが、より四隅に近く配置されたタイヤや18〜20インチという大径のホイールをはじめ、ゼロエミッションのEVならではの特徴が目につく。冷却用のインテークを必要としないフロントでは、マトリックスLEDが大きな存在感を発揮している。
このLEDは駐車中にドライバーが車外から近づくと、なんと「ウインク」する人間臭い新機能も備えるという。またサイドビューでは、Cピラーに設置されたダイヤモンド形状の「ID.ハニカム」フォイルが個性を主張している。
そして、室内に目を向けると、ロングホイールベースでセンタートンネルのないEVのメリットが活かされ、“オープンスペース”とVWが呼ぶ空間はひとつ上のセグメントにも匹敵する広さ。
コクピットも、ドライバーがすべての操作を直感的に理解できる優れもの。電動調整式マルチファンクション・ステアリングホイールを含むすべての操作系はタッチボタン式で、物理的なスイッチを使用しているのはハザードランプとパワーウインドウのみだ。日常会話に対応した賢いボイスコントロール機能も備え、運転支援やセーフティのデバイスにも抜かりはない。