すべての障がい者が使える“施設”を表すマーク
青地に白で車イスに乗る人の意匠が描かれた、通称「車いすマーク」。各地の駐車場や施設でよく目にするこのマークの本当の名称や意味をご存知ですか?
ちなみに「車いすマーク」のステッカーを貼ったクルマを駐車禁止区域に停めても免除はされません。
このマークの正式名称は『国際シンボルマーク』。1969年に「国際リハビリテーション協会(RI)」により採択され、日本では「公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会」に使用管理が委ねられています。本来の意味は「障がいのある人々が利用できる建築物や公共輸送機関であることを示す、世界共通のマーク」。つまり、障がいのある方の本人を示すものではなく、「障がい者が使える施設である」ことを示すためのものなのです。
「建築物へのアプローチに支障がないこと」「入口が利用できること」「施設が利用できること」等々の基準を満たした施設や輸送機関が掲示することができます。また、対象となるのは車いすユーザーや肢体不自由者のみというのは誤解で、すべての障害者を対象としています。
「車いすマーク」を貼る義務はあるの?
自家用車にこのマークが貼られている光景をよく見かけますが、実はそれは本来の趣旨とは違う使用法です。前述の通り国際シンボルマークは、施設等で表示するためのもの。自家用車に貼っていけないことはないのですが、「障がい者が乗っていますよ」と周りに知らせる程度の意味となります。
「障がい者」マークとは別
障がいのある運転者がクルマに表示するためのマークとしては、道路交通法に定められたものが別に存在します。
それがチョウを表した意匠の「聴覚障がい者標識」(表示義務あり)と、四葉のクローバーの意匠の「身体障がい者標識」(表示義務はないが努力項目)。
また、これらを表示しているクルマに対しての「側方に幅寄せ」や「割込み」は道路交通法違反になります(危険防止のためやむを得ない場合を除く)。
駐車禁止の免除は誤解
”車いすマーク”をクルマに貼れば、駐車禁止の取り締まりを受けないという誤解が広まっているのも深刻な問題です。冒頭でも書きましたが、車いすマークでは駐車禁止は免除されません。
駐車禁止規制の一部が除外となるのは「駐車禁止等除外標章」です。身体に障がいがあり歩行が困難な方などが、警察署に申請し交付を受けるもので、本人が現に使用中の車両に限り、フロントガラスの見やすい場所に掲示して使うことができます。
車いすマーク駐車場の利用にはモラルが必要
そして、このマークを日常的によく目にするのは、やはり障害者等用駐車場。車いすユーザーをはじめとした障がい者、けが人、要介護者や妊産婦など方々のための駐車スペースです。
この障害者等用駐車場、施設の入り口に近い場所…というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。しかし、実は近さよりも重要なのは「乗降スペースの広さ」。車いすユーザーや、肢体不自由者にとっては、両側にぴったりと他のクルマが並んだ状態での乗り降りは困難を極めます。
そのために、ドアをしっかり開けて乗降できる空間が確保された、幅の広い駐車スペースに”車いすマーク”が使われているのです。
「車いすマークの駐車スペースなら便利」なのではなく、そのスペース以外では乗り降りできない方々がいることを、しっかり意識しておきたいものですね。
また悲しいことですが、健常者であるにも関わらず「近いから」とか、「空いているから」などの理由で障害者等用駐車場を利用する輩がいることも事実です。さらに悪質になると、障がいがないのに車いすマークまで自家用車に貼り、平然と停めているという事例もあるほどです。
これら行為は、現在は実質的に罰則がないことや、障害の有無は他者から判別しにくいことを利用した、卑劣な行為だといえます。
内部障害など見えない困難を抱えた方が、こういう輩のせいで誤解を受けるという事態も出ているとも言います。このような行為は一刻も早く撲滅されるといいと筆者は思います。
自治体や各施設の取り組みも進む
昨今では上記のような不正利用を防止するため「パーキングパーミット」と呼ばれるシステムも多くの自治体で取り入れられています。
これは障害者等用駐車スペースの対象となる人に「利用証」を発行し、スペースを利用できる人を明確にしようという取り組みです。2006年に佐賀県が導入して以来、多くの地域に広がり、各自治体間での相互利用も進んでいます。
各自治体によって「おもいやり駐車場制度」や「ゆずりあい駐車場利用制度」など、様々な名称が採用されています。名称こそ違いますが、全国相互利用も開始されており、旅先などで他の自治体が発行した利用証が利用できる制度も徐々に広がってきています。また、標章を掲示した高齢運転者等が駐車できる「高齢運転者等専用駐車区間」という制度も各地で設けられています。
この区間は官公庁施設や福祉施設、病院など、お年寄りがよく使う施設の周辺道路などに設置されており、施設の駐車場が混んでいるときなどに駐車場を探しながら運転する高齢者をサポートするスペースとなっています。
おなじみではあるものの、意外に誤解が多い国際シンボルマーク。皆がしっかり意味を理解し尊重することで、誰もが安心してクルマを楽しめる社会作りを目指したいものです。