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ハーレーよりも高級で高性能 アメリカ最古の二輪メーカー「インディアン」

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TEXT: Auto Messe Web編集部  PHOTO: インディアン モーターサイクル

ハイウェイの巡航速度が上がる高性能ぶり

「インディアン モーターサイクル」の名を、ご存知だろうか。創業1901年、あのハーレーダビッドソン(以下H-D)より僅か2年ではあるが生まれが早く、アメリカ最古のモーターサイクルメーカーとして、H-Dとともに一時代を築き、高い性能と品質をうたい文句にレースシーンでも活躍。その足跡は、海を越え、現存する世界最古のロードレースと言われるマン島TTのレースリザルトにも刻まれる、世界有数のモーターサイクルブランドのひとつである。

 現代のインディアンモーターサイクルもまた、並み居る日本、そして欧米のメーカーに劣らぬクオリティを持ち、徐々に認知度を上げている。スタイルこそ、旧き良きアメリカントラディショナルに軸足を置いたモデルが多いが、現代的なテクノロジーを惜しまず投入することで、モーターサイクルとして正常進化させているアメリカンクルーザーなのである。

 スタイルこそレトロではあるが、エンジンモード切替やキーレスエントリー(一部車種に採用)、空冷OHVだけではなく高出力な水冷DOHCエンジン搭載モデルの設定、クルーザー系は全車アルミフレームを採用するなど、オールドスタイルとは裏腹に機能、構成いずれも現代的となっている。

 そして、よく走る。その高性能振りを表すエピソードのひとつに、新生インディアンモーターサイクルの登場で、アメリカのフリーウェイに於けるクルーザー系モデルの巡航速度が20km/hほど上がってしまった、というバイカーの話もあるほど。真偽のほどは定かではないが、仮に作り話だとしても、彼の国ではそのくらいのインパクトを与えている存在、ということなのだろう。

 じつはインディアンは1954年に1度倒産している。現ポラリスインダストリーズ社により2011年に再生されたインディアンモーターサイクルだが、その後10年に満たない僅かな期間でユーザーやファンの信用を確立し、着実に存在感を増してきた。そこに新たに加わったラインナップこそ、世界戦略車「FTR1200シリーズ」なのである。

 FTR1200シリーズは、日欧のスポーツモデルに肩を並べることができるアメリカンスポーツとして、その作りとともに大きな注目を集めている。とくに写真の「FTR1200Sレースレプリカ」は、レーシーなカラーリングとラインアップ唯一のアクラポビッチ製サイレンサーを装備するトップグレードで、価格は236万4000円と少々強気な設定。だが、クオリティの高い作りと充実した装備もあり、最も高い人気を持つモデルとのことだ。

 レーシーなカラーリングは、アメリカ伝統のフラットトラック(ダートトラック)レースで活躍する同社のレーシングマシンと同じで、そのスタイルは単にマーケット受けを狙ったものではなく、誕生背景にはリアルなレーシングストーリーがある。

 見せかけだけではない「本物の血筋」を持ち、それがFTR1200シリーズの存在感をひと際太いものにしている。その誕生背景にあるフラットトラックレースに於いても、インディアンモーターサイクルは最短距離でトップへ駆け上り、現在も君臨し続けている。

64年ぶりにレース復活! 3年連続チャンピオン

 レーシングモデルとしてFTR750を新規に開発した後、2017年にワークスチーム「レッキングクルー」を結成し、フラットトラックレースのアメリカ最高峰カテゴリーであるAFT(アメリカン フラット トラック)のプロツインクラスに参戦。伝統あるレースに64年振りの復活を遂げた。H-Dやヤマハ、カワサキ、ドゥカティなどライバルを押しのけ、参戦初年から2019年に至るまで、3年連続でチャンピオンシップを獲得する偉業を達成している。

 レーストラックを走る純レーシングモデルのFTR750とは排気量もフレームも異なるが、そんな輝かしいストーリーを背景に、各部へそのノウハウとエッセンスを盛り込んだFTR1200シリーズだからこそ、いやがうえにも周囲の期待は高まるというものだ。

 FTR1200シリーズのラインナップは、電子制御機能が充実した1200Sと、シンプルな構成の1200の2種類から選べ、カラーバリエーションは、1200Sがレースレプリカ(税込236万4000円)、スチールグレー/インディアンレッド(税込209万9000円)、ブラックパール/チタンメタリック(税込209万9000円)の3色、1200はサンダーブラック(税込189万9000円)の1色のみとなる。

 車体/エンジンともに基本構成はどのモデルも共通だが、このモデルならではの個性は車体各所の数値に表れている。例えば、ホイール径はフロント19/リア18インチと、まるで空冷エンジンを搭載した一時代前の旧車のようなサイズを採用。タイヤサイズもフロント120/リア150と、流行りの極太サイズとは一線を画す。またキャスター角は26.3度と、近代のスポーツモデルの標準値からは随分と寝かせたフォークアングルを持ち、前後のサスペンショントラベル(ストローク)は共に150mmと、この数値もロードモデルとしては異例の足長サイズだ。

 これがどのような乗り味を生むかというと、安定性が高く、でも自在感もあるという絶妙なバランスになる。近しい存在であろう他メーカー製ネイキッド系のどのモデルにも似つかない、とてもユニークなハンドリングである。安定性が強めだが扱いづらさはなく、数値から想像していたどん臭さもない。

 フューエルタンクをシート下に配置する等、マスの集中のために工夫を凝らした車体構成の効果なのだろう。振り回しても簡単には崩れないその安定性からは、ハイスピードでリアをスライドさせながら駆け抜けるために必要なフラットトラックスポーツ譲りのディメンションが持つ効果なのかな、と想像してしまう。 そう考え、改めて見直すと、FTR1200シリーズというのは、フラットトラックスポーツの特性を反映した、他に無い個性を放つストリートスポーツとして、とても魅力的なモーターサイクルなのだと思う。細部に至る丁寧な作りは、他のインディアンモーターサイクル製モデル同様に、作り手のこだわりを感じるレベルの高い仕上がりで、独自の車体構成を含め、眺めているだけでも飽きることがない。

 歴史と伝統に加え、レースの世界でも確かな足跡を残し、アメリカの血を色濃く受け継ぐモデルでありながら、従来のアメリカンカテゴライズを一気に飛び越える、世界を視野に捉えたインディアンモーターサイクル渾身の新作。個性的で新しいアメリカンを体験することができるだろう。

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