ボディの帯電を放出して整流効果をアップ
現在、トヨタのワークスチューニングメーカー「TRD」ではエアロパーツとボディ補強に力を入れており、パーツ開発を行なっているそうです。エアロパーツは、デザイン的なカッコよさはもちろんのこと前後の空力や車両とのバランス、整流に着目。無闇にダウンフォースを増やすことを目的とせず、車両に適したリフト低減と整流でバランスをとることが大切だと考えています。
なかでも興味深かったのは、アルミテープ。トヨタ86の後期型に貼られたことで注目を集めたアルミテープ(じつは、それ以前に80系ノア/ヴォクシーにも貼られていた)は、オカルトパーツではなく、ちゃんとした理屈があるのです。
「ポイントはボディ周辺にある空気。一般的に空気はプラスに帯電しており、ボディも走行することでプラスに帯電し、磁石と同じようにプラスとプラスで反発するので、空気の流れが乱されるのです」とは、車両実験室 車両実験グループの小林氏。
そこでアルミテープを貼ることでボディのプラス帯電を取り除き、空気の流れをスムーズにすることができるというのです。「TRDでも実際にアルミテープを付けたり貼ったりして、テストドライバーがその効果を確認できたので採用しました」と小林氏は語る。
このアルミテープは貼る場所で効果が異なるそうです。例えばフロントはリップスポイラー部に貼るとダウンフォースを得ることができ、リアはリアバンパーの両サイドに貼ることで、ボディサイド空気の流れを整え直進安定性を高める、といった使い方ができるといいます。
また、ボディの補強面では、ボディを「バネ」に見立てて剛性アップを図るという考え方で実施。それゆえ、ただ硬くするということはしていないそうです。
「硬くすると力を加えていったとき、必ずどこかで大きく変形が起こってしまいます。そこで、車両全体を均一にジワリと変形するように補強を行なうようにしています」と開発本部 内外装技術部の揖斐氏は言う。
「その代表的なパーツがパフォーマンスダンパーです。主に車底フレームの左右をつないで使いますが、むやみにボディを固めるのではなく、フリクションダンパー構造を採用することで、振動を抑え、滑らかな乗り心地を作り出せるように味付けしました」と語る。
スープラに新発想のダンパー「トラス」を装着
試乗車としてTRDが用意したのは2台のスープラ。6気筒モデルのRZには、エアロパーツと19インチアルミホイールのほか、前後のメインフレーム端にパフォーマンスダンパー、アルミテープといった仕様。さらに「トラス」と名付けられた注目の試作サスペンション(ダンパー)キットを組んでいます。
もう1台は4気筒モデルのSZ-Rは、エアロパーツと19インチのアルミホイールを装着していました。
エアロパーツのコンセプトはスムージング。ボディ各所にある、空力的な妨げになるダミーのエアインテークをカーボンパネルでカバーしています。高速域では体感できそうですが、残念ながら今回の試乗では確認できませんでした。
注目は、やはりシャシー系チューニングを施したRZ。まず、パフォーマンスダンパーが効いているのか、非常に滑らかで、微振動がよく抑えられ、より上質な乗り味になっているのが印象的でした。スープラを手に入れることができたら、パフォーマンスダンパーの装着だけでも効果は高いといえるでしょう。
そして「トラス」と名付けられたダンパーには驚かされました。というもの、一般的なダンパーは長くロッドが飛び出しているのですが、ピストンロッドが引っ込んでおりまったく逆なのです。
「ダンパーのピストン表面(ピストンロッド側)より裏面の面積のほうが狭くなっているので、圧直比が逆転してピストンロッドが引き込まれるようになります。つまりダンパーは装着状態で、いつも縮もうとする力が働いているので、サスペンションの沈み込みがとてもスムーズに起こるのです」と、開発に携わったヤマハ発動機 AM事業部の大澤氏。
試乗してみると、その効果は絶大。路面の突起を乗り越えたときには、突っ張るような衝撃は一切なく、スーッとサスペンションが縮んで滑らかに動いてくれる。カーブではハンドルを切り出した時に、フロント外側のサスペンションが縮み、滑らかな荷重移動とともにクルマがクイッと曲がり出してくれます。クルマの内側が浮き上がるようにロールするのではなく、外側がピタッと縮み込んでロールするので、不思議なくらい安定感もあります。
まだ試作ということもあって、ダンパーの伸縮バランスや、バネレート設定が決まっていないようでしたが、そのポテンシャルはかなり高いと断言。まさに目からウロコのダンパーユニットと言えるでしょう。スープラの日本デリバリーまでにはもうちょっと時間がかかるようですが、王道ともいえるTRDのチューニングパーツは着々と準備が進められていました。
このほかRAV4・Adventureグレードにルーフラックや前後ガーニッシュを装着したフィールドモンスターも展示。
オーバーフェンダーやワイルドなデザインのホイールは、アウトドアフィールドで映えるルックスになっていました。もちろん、こちらにもパフォーマンスダンパーが装着され、上質な乗り味を実現。ちなみにサイドタフブレード(ステップ)はモデリスタが間もなく販売予定の試作品でした。