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東京オリンピック2020とキャンピングカー、2つの深い関係が抱える大きな問題とは

インバウンド車中泊難民の危機

 アジア初開催となるラグビーワールドカップ日本大会では、インパウンド(外国人が訪れてくる旅行のこと)客からのレンタルキャンピングカーの予約が殺到したそうです。ワールドカップの試合会場は北海道から九州までの全12都市に点在、開催期間も44日間と長期にわたるもの。会場近くの宿がなかったり、あっても予約が困難だったり、大荷物を持っての移動も大変ですが、レンタルキャンピングカーならその期間中、荷物を載せたままで移動できます。しかも、キャンピングカーの先進国である欧米の人達からすると、それがごく当たり前のことなので、キャンピングカーのレンタルが人気なのも頷けます。

 ところが、その一方で問題となるのは駐車場の周知や確保。なぜならな、欧米に比べてキャンピングカーが安心して車中泊できる場所が、日本では圧倒的に少ないからです。キャンピングカーは”走る家”と言われますが、夜はどこかに駐車しなければいけません。日本RV協会が普及に努めているRVパークも日本ではまだ約130箇所。アメリカでは、RVパークが1万箇所以上、それも、観光地には必ずある事に比べるとまだまだの環境です。事実、インバウンド客からは、「どこに駐車したら良いのか」という相談がたびたび寄せられているそうです。

文化の違いによるトラブル発展の可能性

 日本には道の駅がありますが、ここは基本、仮眠休息の場で、公式には車中泊が認められていないため、 レンタカー会社もハッキリと推奨していません。ここで心配なのは、せっかくキャンピングカーを借りても、安全・安心に車中泊できなかった訪日客の日本に対する評価が落ちること。前述の様に、欧米では、どんな田舎の観光地に行っても、キャンピングカーの標識があって車中泊施設で安心して滞在できます。ごく当たり前なのですが、日本における車中泊の環境にはマイナスな印象を持たれてしまうかもしれません。

 そして、もうひとつの懸念。安心して車中泊ができるところがないと、仕方なく、マナー違反をするインバウンド車中泊難民が発生しまうのではないかということ。道の駅は車中泊ができないと知っていても、止むを得ず利用。トイレや水は使い放題なので長期滞在、車中泊難民キャンプ化する恐れもあります。

 道の駅でなくても、一般の駐車場や空き地など、日本の治安の良さが仇となって、空いていれば勝手に車中泊、地元住民とのトラブルになる恐れも充分にあります。住民にしても、気がついたら裏の空き地にキャンピングカーに乗った外国人が訳の分からない言葉を発して騒いでいたら、もはや一種の恐怖に他なりませんよね。

周辺会場での車中泊エリア開拓の提案

 これはラグビーのワールドカップに限らず、来年に控えた東京オリンピック・パラリンピックにもいえること。オリンピンクの開催地は主に東京周辺ですが、日本に来たのだからとレンタルキャンピングカーで、関東周辺に観光に出かけることも充分に考えられますが、ここでも安心して車中泊できる場所がないことが問題になる恐れがあるわけです。

 ブラジルで開催されたリオのオリンピックでは、ブラジル政府主導で電源・警備付きの車中泊エリアを無償提供。お隣アルゼンチンからや、遠くはオランダからやってきたインバウンド客が利用したという例もあります。日本でも、お台場あたりに空き地があり、東京都が電源付の簡易車中泊エリアを設けても良さそうですが、そこはキャンピングカー文化の歴史が浅い日本ですから、その発想すらない様子。競技の行なわれるスタジアム隣の10ヘクタールの空き地を臨時キャンプ場にしてテントに宿泊なんて計画もあるらしいですが、猛暑の中でテント泊なんて熱中症の可能性も十分に考えられます。

 キャンピングカーなら下手なプレハブ住宅よりも断熱がしっかりしていて、電源がありエアコン装備の車体なら、猛暑でも快適。箱物の施設建設と違って、車中泊エリアは、それほど予算や時間はかからないのですから、今からでも充分、間に合います。

 インバウンド車中泊難民が大発生してからあわてるのではなく、今からその対策を検討すべきだと思うのです。

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