移動することが楽しい福祉機器の数々
高齢化社会を見据えてさまざまな機器が展示された「国際福祉機器展」で、便利なだけじゃない福祉機器を発見。高齢者や障がいをもった人にとって移動すること自体が楽しくなる「乗りもの系」福祉機器3種類をピックアップしてみた。
アクショントラック
見た人の多くがTVアニメ「機動戦士ガンダム」の登場メカである「ガンタンク」を連想したという電動車イスがこちら。
埼玉県にあるサポートマーケティングサービスが輸入している「アクショントラック スタンダー」という製品で、海辺、不整地、降雪地といった通常の電動車いすやシニアカーでは乗り入れできなかったところにも入っていけるのが特徴(歩道、公道走行は不可)だ。
ごらんのとおりしっかりしたキャタピラを備えていて、搭載モーターも高出力。約178kgある車体に抵抗の大きいキャタピラーという足もとながら速度は6km/hまで出すことができる。1回の充電で走行できる距離は12.8kmと十分な性能なのだが、フレームにステーを増設して、そこにスペアバッテリーや小型の発電機を搭載すれば連続走行距離をさらに伸ばすこともできるという。
また、アクショントラックスタンダーは運転者をベルトでシートバックやレッグサポートに固定したあと、シートが電動で起き上がり運転者を直立させることもできるので、自分で立つことが困難な人でも立ち上がっての動作をすることが可能。なお、このほかのモデルとしてシート稼動機能のない「アクショントラック チェアー」も用意している。
このようにアクショントラックシリーズがあれば、キャンプや川辺での釣りなど、これまで歩行が困難な方には体験しにくかったレジャーの挑戦もできる可能性がある。
価格や詳細は販売元のホームページから調べて頂くとして、実用性が高いのものが多い電動車いすにおいて、所有することで趣味の世界の広がりを感じさせるアクショントラックは特別な存在。使用条件などの制限も多いが欲しい人はぜひ欲しい。そんな乗り物ではないだろうか。
アクセル/ブレーキ手動運転用の脱着式装置
製造現場や研究施設、自動車修理工場などに向けた油圧ジャッキを製造販売する今野製作所が手がけた運転補助の器具。脱着式の手動運転装置「SWORD(ソード)」だ。
ソードは手元にくるグリップ部を引いたり押したりすることで器具のプレートで固定したアクセルとブレーキを操作するというもの。取り付けや取り外しが容易なので、必要に応じてふつうのクルマをハンドドライブ仕様にあつらえることができるのだ。
ソードでのアクセルやブレーキ操作が可能かは、それぞれの身体の状態で異なるが、使えるとなれば健常者の家族が所有するクルマをシェアできるようになる。それに加えて自分のクルマを購入するときも運転補助の器具付きである必要がないので選べる幅が広がるし、クルマの改造が不要なら最近の新車販売で主流になっている残価設定ローンを選択することだって可能だ。
このように障がい者の方に「クルマ選びの楽しみ」を提供してくれるのがソード。福祉機器は障がい者の身体の動きをサポートするものであるが、こういった気持ちの楽しみをサポートするアイテムも大事だ。ソードの存在にもっとスポットが当たることを期待したい。
電動アームで車いすをコンパクト収納
50歳以上の人が持つイメージは”ベンツ=ヤナセ”だろう。接客にいい印象を持つ人が多く「次のベンツもヤナセで買う」と思っている顧客や高齢者は増えているはずだ。
高齢者ユーザーが増えるとこれまでとは違うニーズも出てくる。そう、運転補助の器具付きや車いす利用者でも乗れるクルマが必要とされるのだ。ヤナセは関連会社である「ヤナセオートシステムズ」においてヤナセが扱うベンツ(それ以外も)を福祉車両へ架装するサービスを開始した。
ここで紹介するのはイスラエルの福祉機器企業が製作した「TMN R11ロボット」という車いす収納用の電動ロボットアーム。見てのとおりワゴンのトランクに車いすを収納することが可能だ。
これまで車いすを収納できる機能を持つクルマは全高が高くなることが多く、駐車スペースを選んだり、走行性がスポイルされたりしたが「TMN R11ロボット」ではそれもない。ベンツの走りが好きで乗り続けている人にも妥協やガマンをさせないものである。
なお「TMN R11ロボット」の取り付けは横浜の港北にあるヤナセオートシステムズで行なうので、架装を希望するユーザーはいつも世話をしてくれる営業マンに依頼すればいい、とシンプル。また、駐車環境に合わせてアームの可動域を調整する必要があるものの、その際の現地調査もヤナセオートシステムズの担当者がやってくれるので、架装すべてが「いつものヤナセ」で済む。この取り組みに関しても顧客に対して大きな安心感を与えることになるだろう。