26年振りに青木三兄弟でサーキット走行
テスト中の事故によって、脊髄損傷によって車いす生活を余儀なくされた青木拓磨選手が再び2輪に乗るという企画、サイドスタンドプロジェクト「Takuma Ride Again」は、今夏、鈴鹿8耐(2019 FIM世界耐久選手権シリーズ “コカ·コーラ” 鈴鹿8時間耐久ロードレース)の会場で実現された。それからわずか2か月半、まさかの第2弾が「ツインリンクもてぎ」で10月18〜20日に開催されるMotoGP日本グランプリの前日、10月17日に行われる。
鈴鹿8時間耐久レース決勝スタート前に行われた青木三兄弟の次男・拓磨の22年ぶりの2輪車(ホンダCBR1000RR-SP2)での走行は、観客からの数多くの拍手が贈られ、また同時に多くの涙を誘った。
鈴鹿8耐の会場では、走行したCBR1000RR SP2が8耐のベースマシンであったが、今回、ツインリンクもてぎで使用するマシンとしてチョイスされたのは、2190万円の値札をつける市販MotoGPマシン、ホンダRC213V-Sだ。CBR同様、半身不随の拓磨選手のためにビンディングのついた特殊なステップが装着されており、シフト操作用のボタン式のシフターといった装備も流用されている。
事前に、千葉県の袖ケ浦フォレストレースウェイで、拓磨選手はRC213V-Sの初乗車を行った。前回乗ったCBRとは似ているようでいて、実はポジションが大きく異なっており、上半身だけで車両を操作する拓磨選手にとってはなかなかハードな車両となっていた。
上半身だけで操ることの難しさは完全に解消はできないものの、ステップ位置を変更し、タンクパッドを急造。さらにフロントフォークの突き出しを減らしてフロントを上げてポジションを少し後ろ寄りに持っていこうというセッティング調整も行い、車両のセッティングを進めていった。
ちょっと驚いてしまうが、拓磨選手はライダー現役時代にツインリンクもてぎを走ったことがない。じつはツインリンクもてぎがオープンしたのは1997年で、WGP(現MotoGP)初開催は1999年。拓磨選手がケガをしたのが1998年で、2輪で一度も走行をする機会がなかった(実はオープン前に一部ホンダ系ライダーには走行の機会が設けられたのだが、拓磨選手は当時怪我のため欠席していた)。
そのため、袖ケ浦のセットアップだけでなく、実際にもてぎのコースをテスト走行。しかし、走行序盤から、ビンディングで固定していたブーツが外れるというトラブルが発生した。これは袖ケ浦のテストでも発生しており、RC213V-Sの加速力によって膝が開いてしまって、ブーツもつま先側が開いてしまってビンディングが外れてしまうのだろうと推測。乗車した拓磨の両大腿部をベルトで固定することで、そのトラブルは解消した。
そして周囲が心配していたダウンヒルストレートも問題なく走り切った。ヘアピンからの立ち上がりや最終コーナーの立ち上がりではフロントタイヤを浮かせながらの走行を披露。連続して9周を走行して、タイムアップとなった。
現在、拓磨選手が乗るRC213V-Sは、現役当時と同じレプソルカラーに塗り替え作業を進めており、写真とは異なるカラーで走ることとなっている。
そして、もう一つのトピックが、かつて日本のバイクレース界を圧巻した、兄・青木宣篤、弟・青木治親も一緒に走行することが決まった。実に26年ぶり(1993年イベントレースが最後)に青木三兄弟が走行という記念すべきイベントとなる。残念ながらMotoGP日本GPのレースウィーク・スケジュールが過密のため、拓磨選手が走行するのはレースウィークに入る10月17日(木)。
しかし、MotoGPの現場では拓磨選手によるトークショーが開催される。19日(土)の12時45分~(拓磨、治親の2名)、20日(日)は13時40分~(3兄弟そろって登場)、イベント広場のミシュランブースで開催となる予定だ。