ペダル踏み間違い時にエンジン出力抑制
ペダルの踏み間違いによる事故が相次ぐ中、これを防止できる後付け装置が相次いで登場している。理由は概ね数万円で準備でき、新車を買わなくても踏み間違えを防止できるという期待からだ。大半がエンジン出力を抑制して暴走を防ぐものだが期待の声は大きい。今回は、特に反響の大きい3製品を紹介しよう。
「ペダルの見張り番 II」オートバックスセブン
ペダルの踏み間違えを防止するシステムとして最も多く売れているのがオートバックスで販売されている「ペダルの見張り番 II(データシステム)」だ。
名のとおり、ペダルの動きを常に監視し、急激なアクセルの踏み込みを検知するとエンジン出力を抑えてくれるもの。この時、ブレーキ制御は行なわないが、アイドリング状態でゆっくり動く「クリープ現象」状態になり、同じくらいスローな速度にまで抑えられるのだ。
対応車種も200車種以上と豊富。販売元のオートバックスセブンによれば、アクセル開度をワイヤーで調整するクルマ以外はほとんどの車種に取り付けが可能だという。価格は取り付け費込みで4万円(税別)と、この手のシステムではリーズナブル。これも人気を呼ぶ秘密となっているようだ。
ただ、取り扱いで注意すべき点もある。ドライバーが運転時に急加速を必要とした場合でも、このシステムがONのままであれば急加速できないことになる。そこで、センシング感度を5段階に切り替えられることと、この機能を一時的にOFFにできる機能が備えられる。
高齢者ならアクセルを強く踏むことはないと思われがちだが、急な坂道や右折などで急加速が必要な時は意外にも少なくない。特に右折時などは従来の感覚でアクセルを強く踏んだのに、スピードが出ずに交差点内にトロトロいれば却って危険な状況を招きかねないのだ。つまり、スイッチをON/OFFできるスキルは身につける必要があることは知っておきたい。なお、同様のシステムはイエローハットからも発売されている。
「踏み間違い加速抑制システム」トヨタ自動車
自動車メーカーのトヨタもペダルの踏み間違いによる急発進防止装置を用意している。一部車種のみ対象だが、後付けできるのは嬉しい。
システムの要となっているのは前後パンパー内の計4個の超音波ソナーで、これが障害物を検知するとエンジン出力を一定以下に抑える。たとえば前後に障害物がある状態でドライバーが誤ってアクセルを踏み込むと障害物を検知してブザーとランプで警告。さらに強くアクセルを踏み込んだ場合は、エンジンの出力を抑えて加速を抑制するのだ。
動作条件として掲げられているのは「時速約10km/h以下で壁など障害物が約3m以内でアクセルペダルを強く踏んだ時」とされ、後退時だけは障害物がなくてもアクセルを強く踏むとAT車の5km/h程度にまで抑えて走行。いずれの場合でも自動ブレーキ機能はない。
注意すべきは、速度抑制が動作するのは前方および後方に障害物を検知した時のみということ。たとえば前後に何もない道路上では作動しないし、コイン駐車場に設置されるようなバー程度では障害物として認識しない。つまり、この機能が有効なのはコンビニなどのように建物に添って駐車している場合などに限られるというわけだ。
超音波による検知が基本なので仕組みを知れば当然ではあるが、踏み間違えを防止するシステムは新車の場合でも前後に障害物があることを条件としている。これはオートバックスの「ペダルの見張り番II」のようにアクセル開度だけを監視するのでは、アクセルの踏み込みが必要な右折時や急な坂道などで却って危険な状態になるとの判断があるからだという。
なお、価格は5万1000円(税/取付費別)。適用車種はプリウスやプリウスα、アクア、アリオン、プレミオ、スペイド、ポルテ、WISHの計8車種(9月下旬現在)で、トヨタによると今後も対応車種を増やしていくとしている。
「つくつく防止」ダイハツ
トヨタと同様、前後のバンパー内に組み込んだ超音波センサーが障害物を検知した時のみ作動するペダル踏み間違い防止システムだ。
ソナーが障害物を検知すると、アクセルを踏み込むと一旦は警告でアクセル踏み間違いであることを促し、それでも強く踏んだ場合はエンジンの出力を約8秒間にわたって抑制。こちらもブレーキ制御はなく、作動条件は「車速が約10km/h以下で、障害物となる壁などが約3m以内にある時」となっている。
トヨタのシステムと同じように、システムの作動は前方に障害物があることを前提としているため、駐車場の出口付近など障害物がない場所ではエンジン出力の抑制は行われない。この辺りを認識した上での利用を判断したい。
適用車種はタント(L375S)をはじめ、ムーヴ(L175S/LA100)、ミラ(L275S)、ミラココア(L675S)、ミライース(LA300)、ムーブコンテ(L575S)、タントエクゼ(L455S)の8車種。これを含めると、ダイハツ車の現保有台数(約970万台)のうち、約半数の車両が予防安全機能「スマートアシスト」搭載車、または後付け安全装置の対象車両となるという。