ライバルのサニーがいなくても常に平常心
歴代トヨタ・カローラを振りかえる企画もいよいよ終盤を迎えることとなった。時代は2000年代へ移り変わり、多くの人に馴染みのある1台となったモデルもあるだろう。早速、九代目から振り返っていこう。
九代目(2000年-2006年)
キャッチフレーズは、「New Century Value 変われるってドキドキ」
このキャッチフレーズ通り、けっこう大きな変化があった。まず兄弟車のスプリンターが廃止されたと同時に、レビン・トレノも姿を消した。その反面、安全性を高めるためにプラットフォームは新開発。横滑り防止機構やトラクションコントロールなどが、カローラに初めて採用されたモデルでもある。
エクステリアデザインも刷新され、トヨタの欧州デザインスタジオ「EDスクエア」が大きく関わっている。燃費に有利な電動パワーステアリングが採用されたのもこのモデルからで、エンジンは新開発のVVT-i+DOHC16バルブの2NZ-FE(1.3リッター)、1NZ-FE(1.5リッター)、1ZZ-FE(1.8リッター)が用意された。ワゴンモデルは「フィールダー」となり、復活したハッチバックは「ランクス」。スパシオも2代目に進化した。
十代目(2006-2012年)
「新しい尺度。」というキャッチコピーで登場した十代目のセダンはカローラ アクシオ。
約40年続いたサニーVSカローラの構図は、2004年にサニーがティーダにバトンタッチしたことで終焉。ライバルが消えてもコンパクトセダンの頂点として、プリクラッシュセーフティシステム、パーキングアシストシステム、VSC(横滑り防止システム)など、上級車用の安全装備を投入した。
フィールダーとランクスにあったスポーツグレードが廃止になったかわりに、2009年にTRDからターボチューンの「カローラアクシオGT」が投入され、スーパーGTのGT300クラスにも参戦していた。ミッションもスーパーCVT-iが採用され、MT感覚が味わえるスポーツシーケンシャルシフトも1.8リッター車には用意された。HIDヘッドライトも標準化となっている。
十一代目(2012–2019年)
約半世紀のカローラの歴史の中で、はじめてボディをサイズダウンしたモデル。ヴィッツ系のプラットフォームを流用し、コンパクトカーとして原点回帰。主力は1.5リッターエンジンのモデルだったが、VVT-iがついた1.3リッターユニットも復活。フィールダーには1.8リッターも用意されていたことも記憶に新しい。カローラ初のハイブリッドモデルが登場したのもこの十一代目(2013年)。
安全性の向上にも力を入れていて、トヨタの衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense C」装着車も2015年から追加された。
十二代目(2019年9月~)
先月フルモデルチェンジしたばかりの新型カローラ。TNGAプラットフォームの採用により、「走りの基本性能」と「楽しさ」を徹底的に追求と語られている。セダンのカローラと、ワゴンのカローラツーリング、さらにカローラスポーツの改良版も一緒にデビュー。いずれも3ナンバーサイズだが、日本の道路環境に合わせた日本専用ボディとして開発されているので、狭い路地や駐車場での取り回しの良さも考えられている。
パワートレインは1.8リッターのハイブリッド車とガソリンエンジン車。先代より300㏄排気量が増えたことで、加速感に余裕がある。またハイブリッド車にはE-Four(電気式4WD)も設定されている。
トヨタ車で国内初となるディスプレイオーディオが全車に標準装備となり、スマートフォンとの連携が可能に。ヘッドライトはLEDになり、MT車の設定もある。ガソリン車のMTは、カローラスポーツと同じくシフトアップ/ダウン時に自動的にエンジン回転を合わせてくれる「i-MT」となり、6速と多段化された。
カローラのユーザー層は、半世紀でかなり変わってきたかもしれない。だが、国産車の基準となるコンパクトカーとしての存在は依然大きく、カローラほど時代を反映しているクルマはないといえるだろう。