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クルマ好きのおじ様感涙! カーマニアの夢と憧れが詰まった昭和パーツカタログを振り返る

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TEXT: 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)  PHOTO: 島崎 七生人

愛車の完成形なる青写真を描く

『FET極東の総合カタログ』。そう聞いて「おぉ!」と反応した方はかなりの“通”か、ベテランのこだわり派カーマニアだ。“総合”と謳っているように、自社の取り扱いブランドを一堂に集めたのが同カタログで、第1号の発行は何と1967年というから、初代カローラやサニーが誕生した翌年にあたる。日本の一般家庭にようやく自家用車が普及し始めた頃、すでにこのようなマニアックなカタログが世に存在していたことになる。

 何がマニアックか? といえば、カーマニアなら泣いて喜ぶような自動車用パーツがズラリだったから。ご存知の向きには説明不要だろうが、FET極東(現・アサヒライズ株式会社)は、古くから自動車用品を扱う商社で、もともと海外の著名ブランドに対するアンテナの張り方には定評があった。なので、いまで言うセレクトショップのカタログのような品揃えの充実度は、クルマ好きから注目されていた。

 手元に数冊のカタログがあり、最も古いものは’78年度版。筆者が運転免許を取った年(’77年)と符合していて、おそらく“愛車”を手に入れ意気揚々としていた当時、「さて、どんな風に自分のクルマを仕立てようか?」と、ヤル気満々で入手したと思う。

 もっとも当時は学生の分際で、カタログに載っている“品物”は輸入品というこもあり高価なモノがほとんど。おいそれと、あれもこれも……という訳にはいかなかったのはいうまでもない。自分の中には“欲しい物リスト”があって、バイト代から捻出できて手に入るモノから少しずつ買い足して自分のクルマを仕上げていく、コツコツとそんなことをしていたのだと記憶している。

 カンパニョーロ、ナルディ、マーシャル、コニ、ウェーバー、VDO、コスミック、スーリー、ビタローニetc……。代表的なところでは、これらがカタログに載っている取り扱いブランドだ(年次により取り扱いブランドの変遷はある)。きっとブランド名を聞いただけで感涙にむせぶ方は多いと思う。

 たとえばスーパーカーブームをリアルタイムで過ごしたファンなら、そこから入って、フェラーリ、ランボルギーニなどのご用達だったアロイホイールの「カンパニョーロ」、ドアミラーの「ビタローニ」やステアリングホイールの名門「ナルディ」など、いずれもイタリアのブランドになるが、名前を聞いただけでモノのカタチが思い浮かぶことだろう。

 憧れのスーパーカーにも採用されたブランドのパーツを自分のクルマにも……、そんな動機が関心をもつようになったキッカケだったという訳だ。

 かくいう筆者も、愛車(初のマイカーはいすゞ117クーペ)のステアリングホイールは真っ先にナルディに交換したし、マーシャルのフォグランプを付けた。今はステアリングはエアバッグ付きで気軽に交換できないが、当時は、パーツ交換のハードルは現在よりも低く、夜な夜な自宅のガレージにこもってはパーツ交換をしたり、取り付けたりすることも楽しみのひとつだった。そういうクルマ好きは大勢いたものである。

 また若かりし頃だったから、ダンパーを「コニ」に変えてコーナリング時のロールが小さくなったことだけに嬉々としたりしたものだ。

 さらに言えば、有名な日本のブランドも数多くあったなかで、海外ブランドのストーリーや粋なデザインに、日本のブランドにはなかった味も感じられたもので、あえてそういう選択をするところに少々のステイタスも感じていたものである。

 大袈裟で青臭い表現かも知れないが、そういうこだわり派カーマニアの夢が詰まっていたカタログでもあった。クルマ好きにとって、いい時代だったな。

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  • 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)
  • 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)
  • 1958年生まれ。大学卒業後、編集制作会社を経てフリーランスに。クルマをメインに、写真、(カー)オーディオなど、趣味と仕事の境目のないスタンスをとりながら今日に。デザイン領域も関心の対象。それと3代目になる柴犬の飼育もライフワーク。AMWでは、幼少の頃から集めて、捨てられずにとっておいたカタログ(=古い家のときに蔵の床が抜けた)をご紹介する「カタログは語る」などを担当。日本ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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