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ハーレーダビッドソン、大型電動バイクの生産開始! 新たな価値観を創造する

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TEXT: Auto Messe Web編集部  PHOTO: ハーレーダビッドソン

100年超の歴史をもつVツインエンジンを捨てたのか

 草原でリズミカルに闊歩するサラブレッドのギャロップのように、独特な鼓動を刻むVツインエンジンを股に挟んで、歯切れのよい排気音を奏でながら風の中に身を委ねる。そんな味わいあるエンジンを堪能する心地よさは、多くの人が想像する「ハーレーダビッドソン(以下H-D)」のイメージではないだろうか。

 その気になれば数えられるのではないかというくらいに、急くことなく、ひとつひとつ刻まれるエンジンの爆発からは、他に類を見ない力強さ、厚いトルクを生み、決して軽くはない大柄な車体をグイグイと前に押し出してくれる。

 創業1903年。今に受け継がれる空冷OHV45度Vツインを生み落したのは、1936年のことだ。以来、変わることなく歴史を紡いできた、アメリカントラディショナルの代表的ブランドが、ガソリンを使わず、鼓動を刻まないEV(電動)モーターサイクル「ライブワイヤー(Live Wire)」を発表したのは、つい最近のことである。

 H-D初のEVモーターサイクルであるライブワイヤー(Live Wire)の市販情報発表は、2018年1月末のステークホルダー向けの業績発表時に行なわれた。狙いとしては、将来に向けた新規顧客獲得とH-Dブランドの再構築にある。その背景には、トランプ政権の通商政策により中国やEUから課せられた追加関税によるコスト増の影響、また若者のモーターサイクル離れという直接的な要因による米国市場を中心とした業績の落ち込みがあった。企業価値存続のためにも新規商品、それも従来にないインパクトを与えるモデルによる将来への展望を見せる必要があった、と考えられる。

 EVモーターサイクルに挑む「プロジェクトライブワイヤ―」は2014年6月に発表され、上記発表までに4年の開発期間をかけていた。技術的なノウハウ吸収は、電動モーターサイクル及びドライブトレインの開発メーカーとして知られる、米国アルタモータース(Alta Motors)の協力を得ており、未知の世界ながら短期間のうちに課題を克服し、市販時期を明言するまでにまとめあげた、原動力となっている。

 余談ながら、ベンチャービジネスに対し手厚く育てる環境を整える米国では、現在少しずつEVモデル拡大を図るゼロモーターサイクル(ZERO MOTORCYCLE)や、事業停止となってしまったが早々に市販EVモデルを出しパイクスピークやマン島のでも活躍したヴィクトリーモーターサイクルズ(VICTORY MOTORCYCLES)等、EVモーターサイクルの市販モデルはいくつも登場。だが、ご存知の通りマーケット内ではEVモーターサイクルが独自のポジションを確立するまでには、いまだ至っていない。H-Dはそのカテゴリーに積極的に挑む、新たな開拓者である。

新ジャンル・EVバイクに賭けるH-Dの意気込み

 市販化に向け歩を進めるライブワイヤ―は、今年の7月にオレゴン州ポートランドにてメディア向け試乗会を開催し、各国からジャーナリストを集め、次世代のH-Dへの試乗機会を提供した。詳細については、すでに様々なメディアで紹介されているために割愛するが、最大の特徴はやはりモーターならではの加速感に尽きる。

 トランスミッションはなく、操作はスロットルとブレーキのみで、開け始めから強大なトルクを発揮しシームレスに加速していくフィーリングは電気自動車と同じ、いや車重の関係から加速についてはかなり強烈だろう。

 クルマでもお馴染みになりつつあるコネクティビティ機能も搭載し、スマホとの連動を含め拡張機能も充実。新世代モビリティとしての付加価値を高めることで、これまでのH-Dハードコアユーザーだけではなく、新規ユーザーの獲得を狙っていることは明らかだ。

 ところが、いよいよデリバリーまで秒読み段階という10月14日、生産に関する不具合について突如発表。H-D社によれば「先ごろ実施した最終品質検査において基準に満たない状態を発見し、生産・出荷を停止するとともに、追加の検査を開始した」とのことで、生産及び出荷を一時停止。しかし、10月18日には再開のアナウンスがされ、問題とされていた部分についての明確な説明はないものの、「1台の車両で特定された問題がそれ単体の特殊ケースで、厳密な分析の結果、他車に影響はなく、生産を再開」と述べている。

 マイナートラブルで済んだ今回の生産停止問題だが、まったくのブランニューモデル、しかも社運をかけて送り出すEVモーターサイクルだけに、H-D社側もかなり神経質に品質管理を行っているようだ。同時に進めているであろう充電設備を含めたインフラ整備等、新世代のモーターサイクルだけに、どのようにマーケットへ浸透させていくのか、興味は尽きない。

 そして、H-D社が見せている、これまでブランドの幹として拠り所としていた100年を超える歴史に頼らない、新たな価値の創造に挑むその姿勢は、モーターサイクルファンに限らずとも応援したいもの。プロジェクト・ライブワイヤ―については、今後もぜひ注目していきたい。

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