550馬力を意のままに操れる高いコントロール性
さて、試乗車だが、もしかしたら今もっとも乗り易くかつアグレッシブに走りを楽しめるR35型GT-Rは、このクルマかもしれない。そう思えるほど速く、かつ走りやすかった。
なにしろサスペンションと前後デフのセッティングが絶妙。コーナーのターンインは非常にスムーズでノーズの重さを全く意識する必要がない。この時、コーナー入り口でアクセルオフや長めにブレーキを残すことで、リヤタイヤに軽い横滑りが作り出せる。リヤタイヤが滑り出したクルマの動きをカウンターステアで消さずにコーナー半ば過ぎまで我慢してアクセルを踏み込んでいくと、フロントタイヤがクルマをぐいぐい引っ張りながら、リヤは軽いテールアウト状態を持続させたまま、コーナーを立ち上がっていくことができる。
アクセルオフの加減やブレーキの残し方でリヤの滑り量をコントロールしてやれば、コーナー出口の姿勢も自由にコントロール可能。ゼロカウンターから派手なカウンターステアまで自在なのだ。しかも、スライドの仕方が素晴らしい。クルマが上下に揺れないからヒタッとタイヤが路面に密着しており、穏やかに滑り出す。もちろん多少の慣れは必要だが、不必要な緊張感をドライバーに与えないのだ。
オーバーホール+S1チューニングで550馬力/632Nmの強烈なパワー&トルクを発生しているが、それを自在にコントロールできる醍醐味を味わえる。それほどに一級品の完成度といえるだろう。
エンジンのピックアップもいいし、低中回転域のトルクに厚みがあるから、コーナーでギヤを「2速か3速か」と迷ったら躊躇なく3速でOKというくらいフレキシブル。乗り心地もいいし、さすがにふわふわな快適さは望めないが、不思議なくらい細かな凹凸を吸収してくれるので、試乗した工場出荷状態でも街乗りも快適にこなせてしまう。もちろん、調整機能を使ってさらに踏み込んだセッティングも可能だ。
年式が古くなって走行距離が延び性能が劣ったことで、一線から離れてしまうわけではなく、リフレッシュチューン+CRSを行うことで、現行型並みの性能を取り戻すことができる。それどころか、この乗り易さなら、自由自在にコントロールできる。ドリフトのおまけ(?)までついてくる。
R35型GT-Rオーナーにとってはうれしいチューニングメニューだと思う。