火力発電に代わる水素発電の未来
環境問題の対応策としてEV(電気自動車)への期待が高まっている昨今ですが、現在、日本国内で行なっている発電は石炭、石油、LNGを使った火力発電所がメインで、2018年で全体の77.9%を占めています。ところが、火力発電はC02などの排出量が多いため、今それに代わる発電方法として期待されているのが「水素発電」です。
将来、EVが普及すれば、今以上に莫大な量の電気が必要になるのは明らかですが、“環境を破壊する”と言われる火力発電所を、新規に大量に建設しなければならなくなるのは避けたい事実です。
日本だけでなく、中国やヨーロッパ、北米など各国で普及が推進されているEV。現在、クルマの保有台数は日本だけでも2019年6月末現在で8212万2890台。もし、将来これらがすべてEVに代わるとしたら? そして世界中でEVが普及するとしたら? ワールドワイドな電力不足が予想されます。
日本では、2017年12月に世界で初めて、府省庁を横断する国家戦略である「水素基本戦略」が策定され、再生可能エネルギーと並ぶ新たなエネルギーの選択肢として、「水素社会」を実現するための取り組みを、供給・利用の両面で経済産業省・資源エネルギー庁が進めています。そして、その戦略の一つが、CO2など温室効果ガスを発生しないため、火力発電よりも環境に優しい「水素発電」の活用です。
FCV普及はコストがかかり過ぎる
トヨタ自動車のミライやホンダのクラリティFCVなど、水素を燃料として走る電気自動車(FCV)の促進も検討されています。ですが、問題は水素ステーションなどのインフラ整備に費用や時間がかかることや、水素を車両内で電力に変えるシステムが必要なFCVは、コストが高くなり車体価格が高騰してしまうことです。
それならば、水素発電所をたくさん作り、水素自動車の代わりに電気自動車(EV)を普及させて、そのバッテリーに水素発電所で起こした電気を充電する方がまだ現実的ではないかという話のようです。
水素を自動車の燃料として供給せずに郊外で水素発電所を作って、そこで安全管理や電力供給を行う。こうすれば、水素タンクを載せるため高額になるFCVを普及させたり、土地代が高い市街地に、建設費が高額になる水素ステーションを数多く作る必要はありません。
もちろん、水素発電は一般的な生活にも使用可能です。そして、何より現在の火力発電所、原子力発電所を稼働させるよりも環境には優しいとされています。
水素は危険?
問題は、水素は「爆発する」ため、「危険」で「地震や火災の時が怖い」が大丈夫かという危惧です。発電所が作られる地域の住民にとっては、東日本大震災で起きたような悲劇が水素発電所でもう一度起きてほしくないのは当然のことです。
たしかに、水素は密閉で閉じこめられて4%以上の濃度になると爆発の可能性が生じることもあります。密閉空間で大量の水素と酸素が混在し、500度以上の熱エネルギーが加わると爆発の危険性はさらに大きくなるとされています。
そのため、日本では「高圧ガス保安法」により、水素の製造から貯蔵・輸送・利用までの全プロセスが規制を受けます。また、水素の製造設備、貯蔵設備には消防法や建築基準法の規制、輸送車両には重量制限などの規定があって、それらを厳守する必要があります。
これは、水素発電所でも同様に適用される方向性で、安全規制のもと、水素の性質をふまえた適切な管理をして、着火や爆発のリスクを回避する措置が必須とされています。
神戸で水素発電プラントが実用化
実用化では世界初となりましたが、すでに兵庫県神戸市に本格的な水素発電プラントが完成。場所は神戸空港と三宮駅の間にある埋め立て地「ポートアイランド」で、もともとゴミ焼却場があった場所です。これは、システムを作った川崎重工業のホームページでも紹介されています。
新しく作られた水素発電所の電気は、ポートアイランドの病院などの近隣4施設に供給し、地域コミュニティ内での エネルギー最適制御システムの運用をしています。いずれは発電量を上げていく事になるでしょうから、供給先もより広がっていく事になると思われます。
今後、火力発電所や原子力発電所の代わりに、全国で水素発電所が建設されていくようになると、水素で作られた電気の力を使ってクルマを走らせたり、生活や暮らしに使ったりする事になるのかもしれません。
*写真は全てイメージです