2度の製造中止から生き返った創意工夫のバイク
実際に走らせてみれば、ビッグシングルらしく、タタタタッと歯切れのよい、乾いた排気音を奏でながら軽やかに路面を蹴飛ばして行く。だが、回転フィーリングはとてもスムーズで、排気量の大きいシングルエンジン特有のガサツさはない。このあたりは今どきのインジェクション仕様らしい、とても上質なフィーリングだ。
低回転からスロットルを急に開けるような意地悪をしても、ギクシャクすることなく、タンタンタンと丁寧に回転を積み重ねながらスムーズにパワーが上昇。その様は、噴射量をち密にコントロールできるインジェクションならではだ。吸入負圧に頼るキャブモデルでは難しい場面も、難なくこなしてしまう。
トルク感も十分にあり、アクセルを開けた分だけしっかりエンジンが反応するため、乗っていてストレスを感じることがなく楽に走れてしまう。軽やかで歯切れのよい排気音を聞きながら、日常使用域で気持ちいい走りができるのは、これまで通りの美点だが、インジェクションモデルは燃焼感覚とトルクのバランスがより緻密になり、誰もが乗りやすいと思える仕上がりになっている。
過去に生産中止となること2回。しかし、その都度メーカー側の努力により復活を遂げてきたSR400だが、1980年代に多く見られた空冷モデルのほとんどは、排ガス規制が強化される中で生産中止となり、そのまま姿を消してしまった。
そのことを考えれば、作り手の継続の苦労も伺えるというもの。昨秋2度目の復活を遂げたが、そこには「ユーザーに育てられたモデルを、未来に紡ぎたい」というヤマハの想いが込められている。
「基本設計を40年間変えず、無理に新しくも懐古調にもせず、時を超えた深みを込めている。日本のモノづくりの在るべき姿を示している」、これが今回、SR400 40th Anniversary Editionがグッドデザイン賞を受賞した理由である。