名車・名マシンには名機が与えられた
自動車産業が戦後復興を遂げる一役をになってきた日本。自動車メーカーが最先端技術をつぎ込んできた内燃機関エンジンは、1970年代から名エンジンのオンパレードでもあった。晴れ晴れしい自動車レースの舞台からストリートへと降臨したエンジンは、庶民生活の中にも数々のドラマが誕生したことだろう。そのような世界に誇れる日本の自動車エンジンの中から、レーシングドライバー中谷明彦がとくに素晴らしいと思いおこす名機5つをピックアップした。
三菱R39B型エンジン
三菱自動車が自社開発したフォーミュラマシンで1971年の日本グランプリを制した時に搭載していたパワーユニットがR39B型。
2リッター直4DOHCのこのエンジンは完全なレース仕様として開発され、後には富士スピードウェイで開催されていたグランドチャンピオンシリーズ(通称グラチャン)に参戦するマシンの多くに搭載されていた。当時最強と評されていたBMW社製M12型エンジンと好勝負を繰り返した。
1970年代、ギャランGTOに搭載されて(写真はコンセプトカーのGTO R73-X)、市販化されるという噂が流れ多くのファンを興奮させたが、残念ながら実現しなかった。
日産S20型エンジン
元祖「羊の皮を被った狼」の異名をとった日産スカイラインGT-Rと初代フェアレディZ432に搭載されていたのがS20型だ。2リッターの排気量で直列6気筒4バルブDOHCにキャブレターを3連装していた。
その起源は日産が世界に誇るレーシングカーR380が搭載していたGR8型直6気筒をデチューンしたものと言われ、レースから生まれたエンジンを市販車に搭載するといった手法の先がけともなった。S20型を搭載するスカイラインGT-RやZ432も数々のレースで優勝し、伝説となっている。
ちなみに、フェアレディZ432とは、4バルブのシリンダーヘッドに3キャブレター、ツインカムシャフトのDOHCであることから命名されたとされる。
トヨタ2T-G型エンジン
トヨタ自動車が1970年に初代セリカ1600GTに搭載し国内のみならず世界からも注目を集めたエンジンが2T-G型だ。
1.6リッターの排気量とツインカムでクロスフローのシリンダーヘッドを持つDOHCとなり、ソレックスのキャブレターを2連装したスポーツエンジンとして仕上げられた。
2T-G型は、初代カローラ・レビン/トレノとなったTE27型車両にも搭載されツーリングカーレースや世界ラリー選手権など様々なレースで大活躍を示す。ブラックに結晶塗装されたヘッドカバーが特徴的でボンネットを明けて見せたくなるクルマだった。
トヨタ4A-G型エンジン
2T-G型エンジンは1シリンダー当たり2バルブ方式であったが、より効率性を高めハイパワーを可能にするために4バルブのクロスフローヘッドが必要とされた。そんななか、トヨタ自動車がヤマハ発動機に開発を担わせていた2T-GG型の後継として独自に開発したのが4A-G型だった。
1.6リッターの排気量で気筒あたり4バルブの直4レイアウトにより計16バルブを備える。また電子制御インジェクション(燃料噴射装置)を採用して始動性、全回転域特性を向上させハイパワーなのに扱いやすいエンジンとして仕上げた。最初に4A-G型が搭載されたのがAE86型のカローラ・レビン/トレノで、エンジンともども今でも人気が高く世界中に多くのファンがいる。
トヨタ1G-GEU型エンジン
1982年にトヨタ自動車が登場させた直列6気筒でツインカムのDOHCヘッドを持ち気筒当たり4バルブの計24バルブもの複雑な構成として登場させられたのが1G-GEU型だ。
それまで直列6気筒エンジンといえば滑らかな回転フィールで高級車が搭載するものと思われていたが、ツインカム24を称された1G-GEUがA60型セリカXXなどのスポーティモデルに搭載されるとハイクラススポーティカーとして一躍羨望の的ともなった。
その後トヨタ自動車のイメージリーダーカーとして登場するソアラにも搭載され、後にはツインターボ化やスーパーチャージャーが組み合わされたハイパワーユニットとしても時代をリードしていった。滑らかながらもシャープに吹け上がる回転フィールには最高の評価が寄せられた。