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「メルセデス・ベンツ」はなぜ高級なのか? 安全性や品質にこだわった“車造り”を紐解く

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TEXT: 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)  PHOTO: MBJ、ヤナセ、妻谷裕二、Auto Messe Web編集部

素材からテストまで厳格な本革

 インテリアで使われる本革は、独特の香り、見た目の質感、触った時の感触が室内に高級感を与える。このため、メルセデスにはこれについても「厳格な基準」が適用されている。

 同社で高品質規準を満たす「最高級の本革」になるとされるのが、2歳の南ドイツ産の雄牛。厳選された飼料だけを与え、管理の行き届いた牛舎で注意深く育てられる。何故なら、虫刺されや有刺鉄線の傷跡等は高級レザーには不適格。生皮になめし加工をした後、シワや細かな傷等を厳しく検査し、栽断後は個々の部位を互いに手で縫い合わせ立体的に仕立てられるという。

 自動車に使用される本革は過酷な使用に耐えなければならず、特にハンドルやシート等に上質のナッパレザーが使用されるのは温度や湿度の変化にも耐える高い耐久性があるため。

 さらにダッシュボードまわりは、温度が100℃にも達することがある。永年に亘り、温度や湿度の変化にも耐える高い耐久性が要求される。しかも人の乗り降りを想定し、機械で約3kgの力をかけて8000回こする。他の機械では人間が数年間シートの端に座ったのを想定して、10万回の圧力をかけるテストを実施(パワーシートは1万5000回)。そのうち3分の2はホコリを混入させて行なわれるという。

 

ウッドフェイシアも安全スマートに適合

 1950~1960年代にわたる全盛期にダッシュボードを華やかに飾ったウッドフェイシア(木製パネル類)は大木から削り出された生(ムク)だった。ところが、今日では衝撃吸収能力という安全面からするとこれでは通用しなくなった。理由は独自の事故調査で割れ目が「ささくれて」乗員に危害を与えるケースが明らかになったからだ。

 しかし、メルセデスには一時期姿を消していたウッドフェイシアを新たに採用。改良されたウッドフェイシアはスペシャリスト達が長年研究を重ね、裏表の高級木目版に「アルミ」を中に挟みサンドイッチの多層構造にし、衝撃を受けた時にはアルミ板が柔軟に変形するという安全対策を施したのである。

 

 これを「メルセデス・アルミサンド」と称し、木目模様が持ち合わせている本来の美しさを生かしウッドフェシアの安全もスマートに適合。もちろん、仕上げの精度やわずかな濃淡の調整は全て手作業。安全なアルミ・サンドウッドフェシアの特許を取得して30年以上が経つ。そして、今や世界中のメーカーがこの安全なウッドフェシア構造を採用しているわけだ。

 ところで、リアウインドウ左下端に貼られている濃紺の「ゴットリーブ・ダイムラーのサインステッカー」の深い意味はご存じだろうか(最近は黒色)。モットーである『最善か無か』はゴットリーブ・ダイムラーで造られたメルセデス・ベンツの正規輸入・販売のシンボルであり、「高品質の証し」なのである。

 

※参考文献:メルセデス・ベンツ ミュージアム&マガジン、ダイムラー・ベンツ社カタログ、ヤナセ・カタログ

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  • 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)
  • 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)
  • 1949年生まれで幼少の頃から車に興味を持ち、40年間に亘りヤナセで販売促進・営業管理・教育訓練に従事。特にメルセデス・ベンツ輸入販売促進企画やセールスの経験を生かし、メーカーに基づいた日本版のカタログや販売教育資料等を制作。またメルセデス・ベンツの安全性を解説する独自の講演会も実施。趣味はクラシックカー、プラモデル、ドイツ語翻訳。現在は大阪日独協会会員。
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