クルマ運転でアドレナリンの分泌が活発化
連日メディアをにぎわせている「煽り運転」「危険運転」。ロードレイジ(自動車運転に起因する暴力行為)はもはや社会問題になっています。ではロードレイジは、そもそもなぜ起きてしまうのでしょうか。
クルマの運転は、ベテランでも緊張を伴うため交感神経が働きアドレナリンが増加、心拍数や血圧も上昇している状態にあります。豊田中央研究所R&Dレビューによると低周波振動が長時間続くことで疲労が蓄積し、尿中アドレナリンの急激な上昇をもたらすということです。
そのメカニズムを知ることで、交通トラブルを抑制する方法を考えましょう。じつはクルマの運転中は「拡張自我」状態にあります。拡張自我をもう少し説明すると自分を代弁するモノのことで、男性なら高級腕時計や高級車やスポーツカーなどが、それに当たります。
つまり、ドライバーはパワードスーツに自我を同期して、要するにエンジンパワーと鉄板で武装した状態にあるということです。その肥大化した自我の攻撃性は下位へと向けられると言います。ちなみに岡山トヨペットのアンケート調査では、煽り運転の被害をもっとも受けるのは軽自動車に乗る女性でした。
この高アドレナリン状態で攻撃衝動のトリガー(銃の引き金)となる刺激を受けると、脳内にノルアドレナリンがどっと分泌され激高が発動してしまいます。主なトリガーは 後続車に煽られる、入れてやったのにサンキューハザードがない、クラクションを鳴らされる、ぶつかりそうになり睨みつけられるなどなど、人によっても異なりますが、感情を刺激するさまざまなものです。
怒りは6秒間我慢すると制御回路が起動する
日本アンガーマネジメント協会では「6秒我慢すると怒りが収まる」ので、深呼吸して6秒間待つことを提唱しています。もともと怒りの感情は生命の生存に不可欠な原始的本能なのですが、社会化した人類には脅威ともなるため前頭葉に抑制するブレーキが備わりました。この前頭葉のブレーキが起動するのに6秒かかるのです。
脳内の報酬系には、怒りをぶつけるとスッキリする回路もあります。そのため自分に正義があり他者に落ち度があると認識すると、リミッターを解除して報復しようとします。
そこで「報復の引き換えに何を失うのか」ということを考えてください。クルマを接触すれば事故処理、人身事故になれば救命救急、反則金や免停などの行政処分。殴ってしまえば暴行傷害の刑事処分、懲役。さらに損害補償も発生します。また実名報道され社会的制裁も受けることになります。ロードレイジの代償は決して安くはありません。
運転中の怒りは、もともとアドレナリンが脳内で暴れていますが、自分の怒りの感情を客観視してやり過ごすワザを持っていたいものです。
美しい景色と泣ける音楽が気持ちを穏やかにする
速いスピードや急ハンドルといった運転は緊張を高めアドレナリンがドッと出てしまいます。この緊張状態が日常的に続くと血管に負荷が加わり、心疾患などを引き起こすとも言われています。また、激しい音楽も興奮状態を作り出します。そこでおススメしたいのが、アドレナリンを出さない環境を用意することです。
アドレナリンが分泌する高ストレス状態から抜け出すのに有効なのが、別名「愛のホルモン」と呼ばれるオキシトシンを分泌させることです。このオキシトシンは、美しい風景やおいしい食べ物、泣ける音楽を聴くことで分泌することがわかっています。
美しい風景に出会い、各地地元の美食をたしなみ、ストレスも無くしてゆくツーリングドライブができるいいクルマ。しかし、景色や食べ物は常に用意することはできません。そこで普段から車内で泣ける音楽を聴ける環境を作っておくのも、クルマ生活には欠かせない重要なことだと思われます。 読者のみなさんには異論もあるかもしれませんが、運転中にイラっとしたらぜひ聴いてほしい、筆者がオススメする6曲を紹介しましょう。愛のホルモン、オキシトシン分泌間違いなしです。
【アイノカタチfeat.HIDE(GReeeeN)】MISIA
TBSのドラマ「義母と娘のブルース」の主題歌。作詞作曲はGReeeeNによる提供。第60回日本レコード大賞最優秀歌唱賞受賞曲。
【地球の空の下で】ユ・ヘジュン – チグエソ
ユ・ヘジュン氏は「冬のソナタ」テーマ曲の作曲者。2006年にNHKの歌番組「みんなのうた」で放送されました。地上に生れた命への讃歌。
【アイネクライネ】米津玄師
米津玄師がプロデューサーを起用した初の曲で、東京メトロ2014年広告キャンペーンに採用されました。YouTubeでは再生回数2億回を超えています。
【奏(かなで)】スキマスイッチ
2004年リリースの2ndシングル。映画『ラフ ROUGH』、東京海上日動CMなどに起用されました。YouTube再生回数は1億回を突破。ピュアな青春の歌が泣けます。
【粉雪】レミオロメン
2005年のフジテレビ系ドラマ『1リットルの涙』に起用された曲。病によって亡くなってしまう恋人との惜別を歌った切ない楽曲です。
【another dawn】Chouchou
東日本大震災復興支援曲として発表され、被災者に祈りを捧げた作品。ChouChouサイトから無料で楽曲・MVをダウンロードできますが東日本大震災復興への寄付を呼びかけています。
あなたが優しい運転をすれば、それは輪のように伝わり、世の中を少しずつ優しく変えていくはずです。逆に怒りの運転をすればそれは野火のように社会と人の心を荒廃させていくでしょう。心に愛を。そして積極的にサンキューの合図を心がけてみませんか。