授業の一環としてラリーを学ぶ
「こいつはスゲー!」
インパクトのあるトリコロールカラー、低くたたずむボディは、クルマに興味がない人であっても思わずうならせてしまうであろう日産・チェリーX1-R。ほんの数ヶ月前までボロボロの鉄の塊だったという。
この個体はプリンス自動車(1966年に日産と合併するまでに存在していた自動車メーカー)のエンジニアが開発を進め、合併後の日産から1970年に登場した初のFF(前輪駆動)モデルの初代チェリー。
FFのメリットを活かした室内は広く、71年に追加されたクーペは手ごろな価格(58万3000円)で若者に人気を呼んだ。なかでもオーバーフェンダーを備えたX1-Rは、高性能の証であったツインキャブレターを採用し、注目を集めた。一方で、運転にはFFの癖が強いハンドリングに慣れを必要としたため、クルマ好きにはジャジャ馬を操るような楽しさがあると言われた。
今回の銀座RUNに参加していたこのチェリーは、東京大学とホンダテクニカルカレッジ関東の2校の学生が協力して、クラシックカーの修復からプロジェクト運営にかかるスポンサー集めまで生徒で行い,欧州のラリーレースである「Rallye Monte-Carlo Historique(ラリー・モンテカルロ・ヒストリック)」に出場するというプロジェクトの一環として復元されたもの。
2010年よりスタートしているプロジェクトは、これまでもトヨタ・セリカ(TA22)やトヨタ・カローラレビン、ホンダ・シビックなどで参戦。このチェリーは、来年2020年2月のラリー・モンテカルロ・ヒストリックに出るマシンそのものという。
派手なカラーリングは、海外に持ち込んだときに、現地の人に目立つ色、一目でわかる色であるだけでなく、見る人が見ればわかる、ワークスマシンのカラーリングを模していることがわかる。
ではなぜ、学生たちがラリー・モンテカルロ・ヒストリックなのだろうか。この企画に関わり指導しているのは、工学系研究科特任教授の草加浩平氏。
草加教授は、東大工学部に在学中の頃、自動車部でラリー参戦を開始。以後、ラリーの世界に首ったけになり、国内ラリーからWRCを含む国際ラリーまで参戦している生粋のラリーストだ。
ラリーというモータースポーツを授業に落とし込むことで、創意工夫が必要とされるクラシックカーをベースに予期せぬトラブルにも耐えうるラリー的チームワークも学べ、海外ラリーを通して国際化教育にも融合させているのだ。
チェリーX1-Rは本番に向け、11月14日に船に積まれ、一足先にモンテカルロへ向かうという。ドライバーは、元三菱自動車の篠塚建次郎さんで、実は銀座RUNの数週間前にテスト試乗を行っているとのこと。その時の印象では「エンジンの調子が良く走っていて気持ちいいですね。FFだから2月のモンテカルロの雪道でもグイグイ走れると思います。細かいことを言えばクラッチが滑っているなど、調整は必要」と語った。
1911年から行われているラリー・モンテカルロ。100年以上行われている、ラリー界の聖地で新しい歴史の記録を残してほしいものだ。