公道からサーキットまでストレスフリーで駆け抜ける
10月31日、メガーヌ ルノー・スポールに”トロフィー”というグレードが加わった。これまでのメガーヌにもトロフィーは存在していたが、先代も先々代も限定車としてのラインアップ。だが、今回はカタログモデルとして加わることになったところがポイントだ。
日本はルノー・スポールの販売でフランス、ドイツに次ぐ世界3位を記録する市場。今年に入ってからすでにメガーヌを556台も販売している実績を持つ。この数値は先代モデルが最も売れた時の1.5倍の数字だといい、だからこそ特別なトロフィーをカタログモデルにしても良いとなったのだろう。
新たに投入されることになったトロフィーの中身はかなりのヤンチャぶり。搭載エンジンはルノー・スポールとして初の300馬力を達成(ベースモデル+21馬力)し、最大トルクは2ペダルのEDCモデルで420N・mを発生する(MTモデルは400N・m)。
それに対応するかのように、シャシーカップを備えているところもトロフィーのポイントのひとつ。内容はベース車に対してフロントスプリング23%(バンプストッパーの長さは10mmアップ)、アンチロールバー7%、リアスプリング35%、ダンパー25%、リアアクスル11%、いずれもアップされている。
加えてトルセンLSDも装備。トルクバイアスレシオは先代トロフィーの2.3:1から2.6:1へと引き上げられているという。また、ブレーキは鋳鉄製のベンチレーテッドディスクにアルミ製のハブを組み合わせることにより、1個あたり1.8kgの軽量化も達成。ディスクにはスリットも与えられた。
軽量化という点ではインテリアに与えられるトロフィーならではの装備ともいえるレカロ製のバケットシートもまた、先代トロフィーよりも3kg軽量となり1脚あたり23.5kgを達成。さらに小型バッテリーとスーパーキャパシタを組み合わせてカプセル化したDESS(Dual Energy Storage System)を与えることで、フロント周りを軽量化。これもわずか8.4kgに収めているそうだ。
こうして仕上げられたメガーヌ ルノー・スポール トロフィーの2ペダルEDCモデルを筑波サーキット・コース2000で試乗。走行モードを選択することが可能なので、やはりサーキットにマッチする”Raceモード”を選んでコースインすることにした。
ロードゴーイングカーとしての究極の世界にいる
走り出しからかなり野太いエキゾーストノートが車室内を襲ってくる。エキゾーストに備えられたアクティブバルブ付きスポーツエキゾーストが解放されるからだろう。これは相当に走りそうな予感。ピットアウトと共にフルスロットルを与えると、ベースモデルとは違ってかなり力強くなっていることが感じられる。
エンジンは基本的に1.8リッターターボと変わらないが、セラミックボールベアリングターボが与えられたことでピックアップはかなり良好。その後、高回転へ向けて鋭く吹け上がることで、力不足を感じるようなことは無くなった。
シャシーはかなり引き締められたイメージとなり、とにかくフラットに走る。無駄なロールもピッチングも見せずにコーナーへと飛び込めるのだ。そこから先のクリッピングポイントまでの動きは、1.5トン近いクルマとは思えない応答性で旋回。
走行モードを「Neutral」や「Comfort」に変更し、試してみたが、足回りのセットが緩くなり、出力特性が穏やかになり、シャシーはスタビリティコントロールの介入が始まるが、その状態でも違和感なく素直に走るところも好感触。縁石などもあえて乗ってみたが、突き上げがひどく起きるようなところもない。これならストリートでも不快感を得るようなことはないだろう。
今後はより尖った”トロフィーR”の導入も予定されているようだが、そちらはタイムアタッカーとしての成り立ちが際立つことは濃厚。軽量化がより進み、4コントロールも排除される。そこまで見えている状況でトロフィーを見ると、ロードゴーイングカーとしての究極の世界にいることは明らか。
ストリートも快適にこなしつつ、たまのサーキットもストレスフリーで駆け抜けることを可能にすることを考えれば、これは丁度いい落としどころのような気がする。このトロフィーは、かなりトータルバランスに優れた一台といえる。メガーヌの販売台数がさらに増えることは間違いないだろう。