都市部の交通にも問題点あり
公共交通機関が便利な都市部でも、高齢者や障がい者が行きたい場所へ”どこへでも行ける”ようにはなっていない。
エレベーターなどの設備があっても、点検整備などで使えない状況があるし、通行の仕方も、駅によって「右側通行」だ、「左側通行」だと勝手に進路を指示され、健常者でさえ右往左往する始末だ。ユニバーサルデザインになっていないのである。
そんな街では、高齢者や障がい者は余計に移動が難しい。自動運転のクルマがその解決策のひとつになることは、十分に期待できる。
障がい者などの社会進出の足がかりに
現在、スカイラインのプロパイロット2.0などで可能な手放し運転は、高速道路など「特定条件下」で認めらる、自動運転の「レベル2」相当と言われている。ドライバーは常に周囲の安全などについて監視し、いざという時には手動運転に切り替える必要がある。
その先の「レベル3」も、やはり特定条件下で認められるが、自動運転中に安全など周囲の監視は「機械」が行なう。ただし、なにかあればドライバーは即座に運転を行なう必要があるのはレベル2と同様。いずれも、“いつでも運転に対応できる健常者”がドライバーであることが前提だ。
クルマに全ての運転を任せる、いわゆる「完全自動運転」には、レベル4とレベル5がある。クルマの走行は自動であっても、通行区分など特定の制約の中で運用されるのがレベル4。どこへでも自由に移動できる究極がレベル5である。自動運転は、これらのレベルになってこそ、初めて高齢者や障がい者に移動の自由を与えることができるだろう。
レベル5の実現までにはどれだけの歳月が掛かるかわからない。レベル4でさえ、そのゴールは見えない。しかし、公共交通機関の十分に整備されていない地域など含め、ある特定の条件の中で少しでも早く自動運転が実用化されれば、実績が積み重ねられ次へつながると思う。
日本は、世界最先端の少子高齢化社会を迎える。また、障がいを持つ人たちの雇用に義務化が実施され、それ以上の社会進出も望まれている。
しかしその場所へ行けなければ、活躍のしようもない。健常者や、都会の目線だけでなく、言葉通り万人の移動を自由にするための自動運転の実現に多くの人が期待を寄せてくれることを願う。