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究極の後席VIPのために…… 天皇御料車も存在したメルセデス・ベンツを代表する歴代超高級モデルたち

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TEXT: 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)  PHOTO: MBJ、ヤナセ、妻谷裕二、Auto Messe Web編集部

1929年誕生のマイバッハが60年ぶりの復活へ

 現在はメルセデスの最高級ブランドとして位置づけられているマイバッハSクラスであるが、そのマイバッハの歴史は古い。

 自動車の生みの親であるゴートリーブ・ダイムラーのパートナ-として活躍した技術者がヴィルヘルム・マイバッハである。1900年にゴートリーブ・ダイムラーが他界すると、1907年にヴィルヘルム・マイバッハは息子のパウル・ダイムラーに会社後継者としてダイムラー社を譲り、自らは去った。

 その後、マイバッハはあのツェッペリン飛行船のエンジンを製作する航空エンジン会社を1909年に設立、こちらは息子のカールが経営を担当し、1921年に自動車生産も始めた。マイバッハ社のクルマはロールス・ロイスに匹敵する高品質、大排気量のエンジンを搭載した高性能車だった。

 事実、父親の才能を受け継ぎ天才的なエンジニアに成長したカール・マイバッハは初の市販モデル「W3」を1921年のベルリン・モーターショーで初披露。独創的なペダル操作の2速ギアボックスで運転の省力化を実現し、当時としては贅沢な4輪ブレーキも搭載。マイバッハが最初から高級車を目指していた事は明白だった。その名声を確固たるものにしたのが1929年に発表した「マイバッハ12」である。 その名の通り、飛行船用エンジンをベースにした7リッターV12気筒エンジンを搭載。翌1930年には「ツェッペリン」と改名され、世界最高級車の1台として君臨した。世界の王室、上流階級、セレブ達に愛用されたが、第2次世界大戦が激化。1941年には乗用車の生産をストップし、その生産台数は20年間で1800台ほどに過ぎなかった。

 その後、船舶や鉄道用の大型ディーゼルエンジンに専念するが、1960年に当時のダイムラー・ベンツ社が筆頭株主となる。以来、会社名は数回変わったがメルセデスとの関係は続き、マイバッハが眠りについた1941年から約60年を経た2002年、遂に最高級モデル「マイバッハ」が復活するのである。 ボディは当初2種類あり、全長が5723mmの「マイバッハ57」と全長が6165mmの「マイバッハ62」。エンジンは5.7リッターのV12気筒に左右Vバンクへターボチャジャーを備え、最高出力は550psを発揮した。メルセデス アドバンスド・デザインセンター・ジャパンの代表作としても有名だ。

 その生産方法だが、かってのマイバッハ同様に細部にわたってユーザーの希望に沿って受注生産され、1台1台手作業で造られた。ユニークなのはその販売方法。商談から受注、納車、サポートの全てを「パーソナル・リエゾン・マネージャー」が専任で行なった。

 なお、気になるインテリアは鏡のように磨かれたウッドパネルと最高級グランドナッパレザーの精緻で豪華な室内装飾。当然ながらすべてが熟練した職人達の手造り仕上げである。1台のマイバッハには、実に8種類におよぶ最高級レザーが使用されたという。 特に「マイバッハ62」のルーフには日本の障子をイメージした格子状の液晶調光パノラマミックガラスサンルーフが備えられていた。その他、リアシートには様々な装備が用意された。携帯電話、600ワット出力を備えた専用設計のBOSEサウンドシステムやDVDなどのエンターテイメント。キャビネットのクーラーボックス内には冷えたシャンパン、そして、銀製のシャンパングラスとコップが用意された。

 しかし、この最高級車である「マイバッハ57」と「マイバッハ62」がラインドロップし、現在のメルセデスマイバッハSクラスに至った経緯は承知の通りだ。

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  • 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)
  • 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)
  • 1949年生まれで幼少の頃から車に興味を持ち、40年間に亘りヤナセで販売促進・営業管理・教育訓練に従事。特にメルセデス・ベンツ輸入販売促進企画やセールスの経験を生かし、メーカーに基づいた日本版のカタログや販売教育資料等を制作。またメルセデス・ベンツの安全性を解説する独自の講演会も実施。趣味はクラシックカー、プラモデル、ドイツ語翻訳。現在は大阪日独協会会員。
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