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車いすの元GPライダー「ウェイン・レイニー」と「青木拓磨」がバイクで走行

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TEXT: 青山義明(AOYAMA Yoshiaki)  PHOTO: 青山義明

下半身不随でもバイクに乗れることを証明

 2019年11月16日(土)・17日(日)、三重県の鈴鹿サーキットで開催された「SUZUKA Sound of ENGINE 2019」。これは、モータースポーツの歴史的価値を絶やすことなく維持し続けるために、自動車・バイクへの興味喚起の機会とモータースポーツへの憧れを抱いてもらえるようにと、鈴鹿サーキットが2015年から開催しているイベントである。今回、注目のコンテンツの一つとして、レース中の事故が原因のケガで車いす生活を送ることになった元GPライダー、ウェイン・レイニーのバイクでの走行がお披露目されたことだ。

 ウェイン・レイニーといえば、1983年および1987年のタイトルを獲得するなどAMAスーパーバイクで活躍後、1988年から世界ロードレース選手権(WGP)500クラスにフル参戦。1990年からヤマハのエースとして500ccクラスで3連覇を達成したレジェンドライダーである。ちなみに1988年~1989年には、ケビン・マギーとペアを組んで、チーム・ラッキーストライク・ロバーツから鈴鹿8耐にも参戦し、1988年は優勝を遂げてもいる。

 ところが4連覇を目指していた1993年のWGP第12戦イタリア・ミサノで、トップを快走中にハイサイド転倒。第六頚椎損傷により下半身不随となり、レーシング・ライダーを引退、車いす生活を余儀なくされている。ライダー引退後は、「マールボロ・ヤマハ・チーム・レイニー」を1994年に結成し、チーム監督に就任したが、その職も1998年に退任している。

 そのようなウェイン・レイニーが鈴鹿サーキットを訪れたのは、1993年の日本GP以来。じつに26年ぶりの鈴鹿サーキットでの走行となるわけだ。

 実はこのイベントには、レイニーと同じくWGPで活躍していて下半身不随となってしまった青木拓磨が展開するSSP(サイドスタンドプロジェクト/元ライダーの方はもちろん、一般の方でも障がい負った方でも、青木拓磨と同じようにオートバイに乗る趣味を一緒に楽しんで行ける取り組み)も関わっている。

 本サイトでは何度か紹介したが青木拓磨は、鈴鹿8耐、そしてMotoGP日本大会で、大勢の観客の前をレーシングバイクでの走行を披露。そのような経緯からSSPには、このイベントの前に「レイニーがバイクに乗って走行できるのか?」という打診を受けたという。「それなら一緒に走りましょう!」という青木拓磨の二つ返事で、この企画がスタートしたわけだ。

 まず、レイニーが実際にバイクに乗れるのかということを検証するため、青木拓磨側から足が不自由でもバイクを操作できるシステムをアメリカに送付(バイクは後輪ブレーキとシフトチェンジは足で行う)。その映像はすでに公開されているが、実際にアメリカ国内でレイニーが走行できたことから、鈴鹿サーキットに集まったファンの前での走行が実現した。

 イベント初日の16日(土)は、「WGP US Legends -Wayne is Back-」と題して、ケニー・ロバーツ、エディ・ローソンとともにレイニーの3台で走行したが、17日(日)には青木拓磨が鈴鹿サーキットに入り、レイニーと合流。USレジェンドとともに4台のバイクで走行を行った。ちなみに レイニーが乗ったのはヤマハYZF-R1。

 これまで青木拓磨が使用してきたシステムと同じものをレイニー側に貸与して装着。ハンドルに取り付けたボタンでシフト操作ができるユニットを取り付け、ステップはビンディング仕様で足を固定している。

 4台は鈴鹿サーキットの東ショートカットを使用したコースを3周した。青木拓磨がWGPに参戦を開始したのは1997年とレイニーが引退した後。つまり、これまでに2人が一緒に走行をしたことはなく、まさに時代を超えた共演が実現したわけだ。また、これまで青木拓磨が元GPライダーの兄弟と一緒に走行をしたことはあったが、このシステムを使用した2台のバイクがコースを同時に走行するというのも初めてのこと。

 この走行によって、事故等により半身不随になりバイクをあきらめていた方々に再び「乗れる」という夢と希望を与えられたら、と思う。

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