自動運転とACCは深い関わりがある
ところで、日本の高速道路で最もACCの装備・機能がうれしく感じるのは、クルージング中はもちろんとして、むしろ渋滞時だ。しかし、ACCの中には作動速度域が約30km/h以上でしか作動しない、渋滞追従しないACCもある。ACCとしては中途半端と言える。
軽自動車で始めてACCを採用したのは、ホンダセンシングを搭載するホンダN-BOX。しかし、2019年の春にデビューした日産デイズは、軽自動車として初のプロパイロットの搭載と同時に、ACCの機能を渋滞追従型としている(画期的である)。日産の思い切った軽自動車への渋滞追従型ACCの採用が、その後の軽自動車やコンパクトカーのACCの機能拡大に、大きな影響を与えたことは想像に難くない。ただし、渋滞追従機能を持つACCとはいえ万能ではない。自動運転とはほど遠いのだ。
例えば高速道路で80km/hにセットして走っていたとして、首都高などのきついカーブなどに差しかかっても、速度は落としてくれない。80km/hで進入したら危ないようなカーブも、そのまま80km/hのままで突っ込んでしまうのである。当然、ブレーキを踏むことになり、ACCは解除される。そこが、自動運転との違いだ。
また、さまざまなACCをテストしていて、気になるのが再加速性能。先行車の減速や、料金所を減速しつつくぐったあとの再加速性能がもっさりしすぎていると、歯がゆく、思わずアクセルペダルを踏んでしまいがちだし、追突されそうにもなる。その点、トヨタの最新のACC、スバルのアイサイトは再加速性能にも不満なし。BMWのACCに至っては、かなりの勢いで轟然と再加速するから、かえって血の気がひいたりする。
自動運転とACCは深い関わりがあり、自動運転にはACCとレーンキープ機能の役割が大きい。日産スカイラインが高速道路のナビ連動ルート走行と、同一車線でのハンズオフ機能を同時採用(世界初、2019年7月現在)したプロパイロット2.0を採用しているが、ACCとレーンキープ機能、ミリ波レーダー、3眼カメラ、7つものカメラ、レーダー、12個ものソナーを組み合わせた360度センシングに加え、レーンキープ機能のアクティブ制御、そして高精度3Dマップを組み合わせたことで、約60~90km/hの速度域での(±10km/hの猶予あり)ハンズオフ運転を可能にしているのだ(プロパイロット2.0を利用できない高速道路区間あり。約90km/h以上になると従来のプロパイロット機能になる)。
肝は、現時点では高コストの、ナビゲーション用の高精度3Dマップ。カーブやインターチェンジ、交差点、制限速度、速度標識などの膨大なマップデータも有するため、例えば、カーブを認識し、その手前ではしっかりと減速してくれるのである。
ちなみに、スカイラインのプロパイロット2.0で、制限速度80km/hの高速道路本線から、制限速度が40km/hまで落ちるIC出口に進んだとすると、標識の速度制限に従うため、けっこうな勢いで急減速することになる。このあたりはまだ、適切でスムーズな減速といった操作とは異なり、”改良の余地あり”というところではある。
そうそう、ACCと聞いて、まだピンとこない人が多いのは、自動車メーカー各社の呼び方が違うからでもある。アイサイトでおなじみのスバルは「全車速追従機能付クルーズコントロール」、トヨタは「レーダークルーズコントロール」、日産は「インテリジェントクルーズコントロール」、マツダは「レーダークルーズコントロール」。ここまでならなんとなく機能が分かるものの、メルセデスベンツに至っては「ディストロニックプラス」と、クルーズコントロールから大きくかけ離れた呼び方だからやっかい。
一方、フォルクスワーゲンなどは律義に「アダプティブクルーズコントロール“ACC”(全車速追従機能付き)」と分かりやすい呼び方だったりする。これからは、クルコンなどと乱暴に言わずに”ACC”と呼んでいただきたい。
いずれにしても、渋滞追従機能を持つACCは今後、自動運転を見据えた先進機能として、いや、日本の高速道路の渋滞がつきものの走行環境からして、軽自動車やコンパクトカーなどの比較的廉価なクルマにも、電子パーキングブレーキ(渋滞追従の停止時に必要)とともに搭載されていくことになるはずだ。
事実、大衆車であるはずの新型カローラ(一部グレード除く)や、軽自動車のN WGNを見れば、それが分かる。