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日本メーカー唯一、WRCに参戦するトヨタの目的や戦略は? 「ヤリス」導入で日本のシェア拡大なるか

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TEXT: 廣本 泉(HIROMOTO Izumi)  PHOTO: トヨタ自動車

WRCはどんなレースで、トヨタの目的は?

 トヨタのワークスチーム「トヨタGAZOOレーシングWRT」の活躍で、日本でも注目を集めるWRC。2017年に参戦復帰したトヨタは、コンパクトカーの「ヤリス(日本名:ヴィッツ)」をベースとしたラリーカーを投入。2018年にはマニュファクチャラーズ部門でタイトルを獲得した。

 さらに2019年は、最終戦を待たずして実質的なエースであるオット・タナク選手がドライバーズ部門でタイトルを獲得。2020年には、シリーズ第14戦として日本ラウンド「ラリージャパン」が10年振りに開催される(2020年11月19~22日)など、日本でも“ラリー熱”が高まりつつあるが、そもそもWRCとはどのようなレースなのだろうか。日本でも、市販車の新型モデルをヴィッツから「ヤリス」と名称を海外仕様と同一にした思惑などをレポートする。 

 

市販車ベースで競われる公道レース

 まず、「WRC=世界ラリー選手権」とは文字どおり、FIA(国際自動車連盟・世界の主要モータースポーツを統括する団体)が主管する世界最高峰のラリーシリーズで、1973年にスタートした。近年は全14戦で開催されており、ヨーロッパをはじめ、北米・南米、さらにオセアニアなど開催エリアは広範囲に渡る。トヨタは、日本メーカーで唯一、WRCに参戦しているメーカーだ。

 ラリー競技はサーキットで争われるF1などのレース競技と違って、封鎖した公道を舞台にタイムアタックが行なわれるほか、マシンも市販車をベースに開発されていることから、一般ユーザーにより身近なレースといえるだろう。そのため、参戦メーカーにとっては、市販車販売などのマーケティングやプロモーションに最適なカテゴリーだと言われている。

 そのため、古くから数多くの自動車メーカーがWRCに参入。2019年はトヨタのほか、シトロエン、ヒュンダイ、フォードのサテライトチームである”Mスポーツ”の参戦など、世界各国の自動車メーカーあるいはその直系チームを見ることができる。

ヨーロッパの新車セールスにも貢献

 事実、2017年よりWRCに復帰したトヨタも、このレース活動がヨーロッパ市場における新車販売のマーケティングに大きく貢献しているという。事実、トヨタGAZOOレーシングのモータースポーツ推進室で業務にあたる市川正明氏は語る。

「もともとWRCへの参戦は社長の豊田章男とトミ・マキネン(90年代にWRCで活躍)との出会いがきっかけでしたが、WRCがクルマ作りに最適だったことも参戦の理由です。市販車ベースのマシンで争われ、しかも、グラベル(未舗装路)、ターマック(舗装路)を問わず、ステージは一般道が舞台となっているので、様々な状況下でのテストや開発ができるのです」。

 その言葉どおり、トヨタのWRC参戦の目的はニュルブルクリンク24時間レースと同様に“クルマ作り”にあるが、それと同時にマーケティングやプロモーションでも効果が高いという。市川氏によれば「フィンランドでトヨタがシェアトップになるなど、ヨーロッパでの新車セールスが好調ですが、WRCの効果が大きいと思います」とのこと。

 さらに「WRCの影響でブランド力も向上しています。(WRC参戦車両の)ヤリスはこれまでコストパフォーマンスの高い便利なクルマというイメージでしたが、近年はエキサイティング(なクルマ)とか、スポーツというイメージが定着するようになってきました」と話す。

 実際に、トヨタはヨーロッパの新車販売台数で、参戦を開始した2017年以降シェアを順調に拡大。フォルクスワーゲンやルノー、フォードなど海外の有名メーカーがしのぎを削る激戦市場で、日産やホンダなどほかの日本メーカーが販売台数を落とす中、唯一好調なのも事実だ。

 

「ヤリス」で国内の新規ファン層獲得を狙う

 ちなみに日本でも「ヴィッツ」という名称を廃し、世界共通の「ヤリス」で新型モデルを登場させた。

 「日本でもヤリスの販売がスタートし、2020年はラリージャパンもあるので、日本のファンにWRCの迫力を体験してもらいたいですね」と市川氏。言葉どおり、唯一の国産メーカーとして、日本でもラリージャパンを通じて新たなトヨタファンの獲得が期待できるだろう。

 過去の例を見ても分かるように、スバルにしても、三菱にしても日本のメーカーはWRCでタイトルを獲得することで欧州でのブランドイメージを向上させてきた。そのことは今もなお健在で、現在はトヨタがWRCで活躍することによって、ブランティングを行っているのである。

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