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「3ナンバー」が高級車の証だったのはなぜ? 現在とは異なる昭和の珍ナンバー事情

3ナンバーというだけで自動車税は倍増し

 いまだに乗用車の”5ナンバー”にこだわりを持つユーザーはいます。たしかに車検証での全幅”1695mm”に収まっていることは、取り回しの良さのひとつとして目安になりますが、だからといって1720mmのクルマとどれほど違うのかといえば、おそらくミリ単位でクルマをコントロールできる人は少数派。すなわち、それほど差はないといえます。

 まして、実際の取り回しではミラートゥミラー(車体の最大幅)やオーバーハングの大小、ステアリング切れ角などによって取り回し性は変わってきます。5ナンバーであることは目安であっても、絶対的な価値とはいえません。

 

小型乗用車が5ナンバー、普通乗用車が3ナンバー

 なお、登録車全般を「普通車」と呼ぶことが多いのですが、5ナンバー、3ナンバーの区別でいえば、前者は「小型乗用車」、後者が「普通乗用車」となります。たしかに5ナンバーは小型であることの証のように思い得ます。しかし、小型乗用車と普通乗用車を区別するのはボディサイズだけではありません。

 ボディが小さくても2リッターより排気量の多いエンジンを積んでいれば「3ナンバー」となりますし、1リッター級のエンジンであっても車幅が1.7mを超えていれば「3ナンバー」です。輸入車などではBセグメントのコンパクトカーでも3ナンバー登録となる車種もありますが、それらが3ナンバーのために取り回しづらいということはありません。もはや、ひとつの目安でしかないのです。

 では、なぜ「5ナンバー」であることにこだわる層がいるのでしょうか。それは昭和の時代は5ナンバーと3ナンバーで自動車税が大きく変わっていたからです。

 現在の税制において、自動車税はエンジン総排気量を基準に決められています。ですから3ナンバーのボディサイズであっても排気量999ccのエンジンを積んでいれば年額2万5000円。逆に、5ナンバーサイズのコンパクトカーであっても2.3リッターエンジンを積んでいれば税額4万3500円になります。

 すなわち、現在は維持費の面でいえば5ナンバーにこだわる理由はないのです。

現在の税制に近づいたのは30年前のハナシ

 ちなみに、こうした排気量によって自動車税の額が決まるようになったのは平成元年(1989年)のこと。それ以前、すなわち昭和の時代はどんなに排気量が小さくともボディサイズだけで3 or 5ナンバーになっただけで、ナンバーの違いだけで自動車税額は大きく異なりました。

 たとえば1リッター以下の5ナンバー車の年額は2万9500円でしたが、ボディサイズが3ナンバーサイズになると年額8万1500円になったのです。倍以上の自動車税を収めるわけですから、3ナンバーというのは富裕層を示すステイタスでありました。

 

2.5Lエンジンが人気、火付け役はディアマンテ

 そして平成初期の1990年代には、前述の自動車税改正によって3ナンバーは身近なものとなりました。2.5リッタークラスの3ナンバー車は、昭和の時代には8万1500円の自動車税だったのに、平成になると4万5000円となったのです。それでも、まだ3ナンバーのステイタス性は色濃く残った時代。おのずと3ナンバー車を選ぶユーザーが増え、空前の”高級車”ブームとなったのです。その象徴といえるのが、いちはやく2.5リッターV6エンジンを搭載した三菱のディアマンテでした。

 また、5ナンバーの中で高級感を競ったハイソカーの代表モデルであるトヨタ・マークIIも2.5リッターエンジンを用意することで3ナンバー化。ほかにもマツダ・センティアも2.5リッターエンジンを搭載、日産もRB25、VG25といった2.5リッター6気筒搭載モデルを広く展開して3ナンバーブームに応えました。

 つまり、1990年代の3ナンバーブームは、自動車税改正によって3ナンバー車の維持費が有利になったこと。そして、2.5リッター以下という新しい区分の誕生によって2.5リッターエンジンの旨味が増した、という2つが要因が合わさって起こったのです。

 さらに「3ナンバーへの憧れ」が残っていたこと、バブル景気の勢いが残っていたこともトレンドを後押ししました。すなわち、昭和の価値観が3ナンバーブームにつながったと言えるでしょうね。

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