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世界にわずか77台!70年代モータースポーツを席巻したポルシェ935が現代に蘇る

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田了

国産車の宿敵でありながら愛され続けたポルシェ

 好天に恵まれた11月16日(土)~17日(日)、三重県・鈴鹿サーキットは鈴鹿サウンドofエンジン2019(SSOE2019)を開催。モータースポーツに関連したヒストリックカーのイベントで、多くのレースファンやクルマ好きが集まり大きな賑わいを見せていました。

 初開催から今年で5年目を迎えたSSOEは、1976年から77年にかけてF1GPで話題を独占していたティレルの6輪車とともに、イベントの大きな目玉となっていたのが現代に蘇った「935」とも評されるポルシェ935フラットノーズの登場でした。なぜにこれほど注目されるのか。その理由を少しお届けしましょう。

ポルシェの認知度はレースで高まった

 ここ鈴鹿サーキットで1964年に開催された第2回日本グランプリにおいて、スカイライン2000GTと好バトルを展開し、底力を見せつけて快勝したのがポルシェ・カレラGTS、通称“904”でした。国内における認知度が高まったポルシェは、その後も幾度となく国産レーシングマシンの前に立ちはだかる敵役として登場します。スカイライン対ポルシェの伝説バトル、この時のポルシェは水平対向6気筒でしたが、昨年の鈴鹿サウンドofエンジンには水平対向8気筒エンジンを搭載したワークスマシンのカレラGTSがお目見えしてます。

 そして今年は68年の日本グランプリで日産R380とデッドヒートを演じたポルシェ910(水平対向8気筒エンジン)のワークスマシンが現れました。

 日本のレース界においてポルシェはやがて単なる敵役ではなく、愛情を持ってリスペクトされたライバルへと進化して行きました。それに比例するようにポルシェの市販モデルである911シリーズの、スポーツカーとしての人気も確実に高まって行きました。

 そんなポルシェ911をベースとして、スポーツカーの世界選手権、当時は世界メーカー選手権のタイトルが掛けられていた1976年にデビューしたグループ5(シルエット・フォーミュラ)規定に合致したレーシングカーがポルシェ935です。ちなみに、このネーミングは911をベースにグループ3(市販GTカー)からグループ5にコンバートしたことを表していました。

 市販モデルのボディシルエットを出来る限り残す、というのがグループ5のそもそもの精神でしたが、規定ではフェンダーの形状は変更が可能となっていて、ここに埋め込まれていたヘッドライトをフロントのバンパースポイラーに移設。フェンダーを低くフラットにして空力を追求する手法が採られ、結果的にフラットノーズが935の大きな特徴となりました。

 76年にデビューした935は、世界メーカー選手権を手始めに北米を転戦するIMSA-GTシリーズやドイツ国内で開催されていたドイツ・レーシングカー選手権など、様々なシリーズに登場すると連戦連勝。76年から79年まで4年連続で世界メーカー選手権を制しています。

往年のマルティーニカラーを纏った新生935

 この間も、ポルシェは手を弛めることなくマシンを進化させ、78年には事実上の最終モデルとなる935/78をリリースしています。 “モビー・ディック”の愛称で知られる935/78はそれまでの935とは大きく異なる独特のロングテールを採用しています。これは車両規定が改定され、前後のオーバーハング拡大が認められたことによって実現しました。

 さて、今回のSSOEに登場した935フラットノーズですが、911 GT2 RSをベースに、935/78に倣ってフラットノーズとロングテールを採用しています。“モビー・ディック”と同じマルティニ・レーシングのカラーリングもマニアには堪らないポイントです。

 エンジンはベースモデルと同じくツインターボで武装した3.8リッターのフラット6を搭載。最高出力は700馬力とされています。気になる価格は約70万ユーロとされ、日本円に換算すると9300万円ほど、だそうです。

 鈴鹿に登場した個体のオーナーである国江仙嗣さんによると「製作された77台のうち、多くは関連企業向けとされ、一般のユーザーに販売されたのは30台程度、日本に僅か1台のみ、と聞いています」とのこと。911GT3でSUPER GTを戦うGulf Racing Japanを主宰する国江さんだからこそ手に入れることができたのでしょう。ドライブフィールに関しては「私のような“ジェントルマンドライバー”が運転しても安心して走れます。GT2がベースなだけあって、GT3よりも走りのクォリティは高いと感じました」と国江さんは嬉しそうに話してくれました。

 ポルシェは、80年代、90年代グループCマシンでの耐久レースでも活躍。国産車の日産、トヨタ、マツダらのグループCマシンを相手に、レーシングドライバー高橋国光さんらが名勝負を繰り返したポルシェ962Cが、今回はお披露目されました。

 

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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