人に寄り添う未来のテクノロジーたち
ステアリングやペダルの操作があらゆる場所・条件下で不要になる「レベル5自動運転」。このような完全自動運転が実現すると、シートアレンジやデザインの自由度が格段に向上し、移動中の車内での過ごし方も大きく変わることが予想されている。
では実際に、どのようにクルマのインテリアは、そして車内での過ごし方は変わるのだろうか。第46回東京モーターショー2019で、部品メーカー各社が出品していたコンセプトモデルから、その方向性を探っていきたい。
用途にあわせてフレキシブルに使える
これにより、0〜7シーターまで全8種類ものシートアレンジを実現。自転車やサーフボードなどの長尺物を積み込んだり、7人がラウンジのように座ってリラックスした状態で会話しながら移動することもできる、まさに貨客両用の万能ミニバンといえるだろう。
パナソニックが考える”走るリビングルーム”
具体的に言えば、各シートにはエアコンを内蔵しており、乗員がもたれかかるとサーモセンサーが検知した各部の体温に応じて自動的に風量や暖かさ・冷たさを調節。また、サンルーフを含めた各ウィンドウには有機ELの調光ディスプレイが採用され、フリック操作に応じてサンシェードとして使用できるようになっている。
さらに、車載AI「ソフィア」を介したオンラインショッピングや、可動型ディスプレイを用いた会議を行なうことも可能。そして、有機ELディスプレイと22個のスピーカーによる、コンサートホールさながらのクラシックコンサート演奏を堪能できるのも「SPACe_L」ならではの楽しみ方と言えるだろう。
シーンに応じたモード切替えが可能に
スマートフォンで目的地を設定すると乗車前にエアコンをオンにし、温度を調節しつつ空気を清浄し、クルマに近付くとプライバシーを保護していた調光ガラスが透明になるとともにドアが開き、フロントシートが乗りやすい位置に移動・回転。運転席に座るとドライバーポジションに移動して、簡単にシートベルトが締められるようベルトとバックルが前にせり出す。
マニュアル運転中は乗員のバイタルサインを読み取って、音、ベンチレーション、振動、照明などで感覚を刺激して快適な状態を保つほか、ドライバーが眠くなりそうな時はその年代に合わせて懐かしい音楽を流すことで集中力の維持を促す。そして自動運転モードにすると各シートが自動でアレンジされ、特に3人乗車時は顔を見合わせて会話できる広い空間が生み出されるようになっている。
そのほか、アイシングループは車体左側を自動運転オーナーカー、右側を自動運転リムジンカーとして、高い予防安全性能と乗降性、リラックスできる車内空間を兼ね備えた「i-Mobility TYPE-T」、デンソーはオフィス環境を車内に持ち込みテレビ会議も行なえる「URBAN MOVES」、TS-TECHは体格補正機能や腰痛防止マッサージ機能を備えた「INNOVAGE」(イノヴェージ)を出品。それぞれ自動運転時の車内での快適な過ごし方を提案していた。
完全自動運転が実現されれば、ドライバーがステアリングやペダルの操作、そして周囲の注視から解放されることで、現在バスや電車に乗客として乗っている時以上にリラックスして過ごすのはもちろん、正反対により集中して仕事に取り組むことも可能になる。そしてステアリングやペダル類を格納することで、これまで以上に室内空間を最大限活用した多彩なシートアレンジが可能になり、小さなボディサイズでもより多くの人や荷物を載せられるようになる。そして、マニュアル運転モードに設定すれば、意のままにクルマを操ることも可能だ。
クルマが元来持つ、他のモビリティにはない最大の魅力である「自由」。それは、完全自動運転の実現によって損なわれるものでは決してなく、むしろより一層増していく。今回各社が出品した車内空間コンセプトモデルはどれも、そんな未来を予感させてくれた。