小さい車体でも積載能力が十分で車中泊もこなす
アウトドアで活躍するクルマと言えば、中・大型SUVを想像しがちだが、コンパクトカーにもアウトドアライフにぴったりなクルマが存在する。
荒野の道なき道を行くような場面では、さすがにタフネスを売りにしているクロスカントリーモデルに軍配が上がるものの、日本のアウトドアシーンでは、道も整備され、最低地上高や4WD性能にそこまでこだわらなくてもいい。その分、価格も安く、日常でも使いやすいコンパクトカーが十分選択肢の候補に挙がるのだ。
では、キャンプなどのアウトドアを想定すると、どんな要件がクルマに求められる要件だろう。それは、やはり「大自然の中で似合うスタイル」、「荷物がたくさん積める(キャンプ道具やBBQ道具などを想定)」、そして「爽やかな環境で仮眠ができるような車中泊性能」の3つだと思う。
ついでに、車内外で家電品が使えるAC100V/1500Wコンセントを備えていれば完璧。コーヒーメーカーやホットプレートなどが使え、温かい飲み物や料理で、心身ともにおいしく暖まることだってできるのである。
トヨタ・シエンタ FUNBASE
そんな要件を満たす“最強のコンパクトカー”が、トヨタの「シエンタ FUNBASE(ファンベース)」だ。2019年8月、9月に日本でもっとも売れた、コンパクトミニバンのシエンタから3列目席を取り払った、大容量ラゲッジを持つコンパクトワゴンとも呼べるモデルだ。
ラインナップには、アウトドアでより映える外装などを装備した特別仕様車の G“GLAMPER(グランパー)”も用意。トヨタが、シエンタ ファンベースをいかにアウトドア向けとしてアピールしているかがよく分かる。
具体的に、シエンタ ファンベースがどれだけアウトドア向け装備を持っているか解説しよう。
まず、ラゲッジルーム床面のボードは、ローデッキとハイデッキに切り替えることで、荷室の高さを変更することが可能だ。ラゲッジの開口部の荷室フロア高は、ハイデッキでは610mmだが、ローデッキにすると530mmまで下げることが可能。自転車やアウトドア用品など、重い荷物の出し入れもラクラクできる低さとなるのだ(開口部に段差がないことも重要)。
フロアは、2列目の後席使用時でも幅1060mm、奥行き935mm、最低天井高930~1100mmと十分なスペース。オプションのユーティリティフックやシステムバーと組み合せることが可能なユーティリティホールも9箇所に用意され、荷物の固定や、純正アクセサリーによるアウトドア仕様へのアレンジも自由自在だ。
また、ラゲッジスペースの床下に大容量の収納ボックスを設定している点も使いやすく、アウトドアライフでどうしても出てくる、濡れたものや汚れた荷物などの収納に役立つ。
さらにハイデッキ状態で、後席をチルトダウン格納すれば、約1620mmもの長さになるフラットフロアが出現。ヘッドレストを逆付けすることで、約170cmのベッドスペースになるのだから、仮眠程度の車中泊なら十分に可能だ。
そのあたりまでなら、このあと紹介するホンダ・フリード+と大きく変わらないのだが、シエンタ ファンベースのHVなら、フリード+HVにないAC100V/1500WコンセントがファンベースHVのGグレードにのみとはいえ、4万4000円でオプション装備できるのがポイント。アクセサリーカタログにある、アウトドアや車中泊用のアイテムの豊富さにも注目である。
ホンダ・フリード+
次に紹介するのが、マイナーチェンジを行ったばかりの「ホンダ・フリード+(プラス)」。シエンタ ファンベース同様に、なにもかもが“ちょうどいい”3列シートのコンパクトミニバンであるフリードの2列シート版も、大容量コンパクトワゴンであり、「クロスター」というクロスオーバーテイストを強めたモデルも新設定された(最低地上高はノーマルグレード同じ)。
こちらのラゲッジは荷物の固定などができるユーティリティナットを20個も備え、開口部地上高は335mmとじつに低く、重い荷物の積載もラクラク可能だ。
また、ラゲッジスペースを上下2段に分けられるユーティリティボードも装備。上段に固定して後席を格納すれば、車中泊も可能な広大なリビング&ベッドスペースが出現する。その状態で、ラゲッジスペース下段に荷物が収納できるから超便利だ。
フロアは後席使用時でも幅1270mm(上段)、奥行き890mm(上段/下段は1035mm)、天井高はユーティリティボード下段で1360mm、上段で975mmもある。
フリード+の場合、このユーティリティボードによって、ラゲッジスペースが上下2段で使えるのも魅力。上段に固定して後席を格納すれば、車中泊も可能な広大なリビング&ベッドスペースが出現する。その状態で、ラゲッジスペース下段に荷物が収納できるから超便利。
ただし、前述の通り、シエンタ ファンベースHV Gに装備される”AC100V/1500Wコンセント”は用意されない(1モーターのHVゆえ)。
とはいえ、フリード+にはシエンタ ファンベースにはない、アウトドアでの強みがある。それは、FFに加え、全グレードに4WDが用意されていることだ。FFしか設定がないシエンタ ファンベースに比べると、4WD仕様なら、悪路や滑りやすい路面などでの走破性は高いといえるだろう。